猫でもわかる濾過器のお話

 熱帯魚飼育をはじめると、いろいろな濾過器の話が出てきます。本来は、水槽だけあれば魚が飼えるというのが理想的だとは思うのですが、水槽だけで飼育するには、かなりの技術がいるように思います。ですので、普通の人は飼育の助けとしていろいろな濾過器を使うわけですし、それを前提にして現在の飼育理論ができているようにも思います。
 我々の飼育を助けてくれるありがたい濾過器ですが、その選びかたで迷うことがあるような気がします。掲示板でのご相談もそういうことが結構多いですので、今回は初心者の方のための濾過器選びということで、書いてみようかと思います。いくつかの濾過器について、その解説と、選ぶときの考え方について、取り上げてみようと思います。

 とりあえず、どこかの掲示板などで濾過器の話題が出ても、話についていける程度に理解していただけるよう書きたいと思います。ですので、特殊なお話(例えば、自作の濾過器や、特殊な濾過を行う濾過器など)は省きました。また、基本的な事のみですので、それ以上のことは申し訳ないですが、お調べください。
 取り扱う濾過器についてですが、初心者の方への説明ということと、普及率の高さから、投げ込み式、水中式、スポンジ、上部式、外部式、外掛け式、底面式の濾過器のお話に限定します。オーバーフローや、ドライタワーなんかのお話は出てきませんのであしからず。
 また、アクアリウムで使われている濾過器について、アクアリウムで言われている理屈に基づいて書いてありますので、これを一般の上下水道の濾過とか、そういうものと比較するのは無理があります。あくまでも、アクアに関する、初心者向けのお話として読んでみて下さい。
 それと、濾過器とろ材は、本来セットで考えるべきものなのですが、両方とも説明すると、かなり長くなりますので、とりあえず今回は濾過器の説明とし、ろ材については濾過器の説明中に軽く触れる程度にしています。そのうち、ろ材についても改めて書いてみたいと思います(いつになることやらですが…(^^;)。

■濾過器ってなんでしょう?
 濾過をするための機械です(笑)。なんて書いたら怒られそうですが、そういうものなので、それはそれとして覚えておいて下さいね。とりあえず、濾過って何?という方は、”猫でもわかる濾過話”の方をまずは読んでから戻ってきてください。ということで、濾過の基本については、知っているという前提で書いていきます。
 具体的にどんなものか?というのは、後述するとしまして、大まかな役割としては、ろ材の中に水を通して、その水に含まれている有害物質を取り去ったり、ゴミを濾したりするためのものです。
 でも、それなら濾過器なんて面倒なものをつけなくても、水槽の中にろ材を入れて、水を当てておけばいいんじゃないの?という疑問があるかと思いますが、それでも良さそうな気もします(ってそんなこと書いたら、話が続かないですね…(^^;)。とりあえず、それは置いておきまして、ろ材って、綿みたいなものだったり、マカロニみたいな形だったりして、水槽に直接入れておくと、なんだかちょっぴりレイアウトとして違和感があるんですね。それと、水槽に入れておくと、どうしても魚が引っかかったり、ちょっと口の大きい魚ですと食べちゃったりすることもあるので、魚たちと一緒にはしたくないという理由もあるような気がします。やっぱり、魚を飼育する場所と、濾過する場所は、きっちり分けたほうがスマートでしょうということなのかなと、個人的には思っております。
 と、なんだか脱線しましたが、濾過器があると、水槽の中で発生するゴミを濾し取ったり、有害物質をある程度無害化するための助けになるんですね。本当にありがたい存在です。
 
※もちろん、濾過器の助けなしで、水槽を維持することもできますが、現在主流の熱帯魚の飼育方法では、濾過器を使うことを前提としています。ですので、初心者向け、スタンダードなお話という趣旨のコンテンツなので、濾過器は使う方針で書いていきます。

■濾過器の役割は?
 上で、濾過器は、ゴミを濾し取ったり、有害物質を取り去ったりするためのものと書きました。ですが、濾過器も使われ始めてからかなりの時間がたちまして、それ以外にもいくつかの役割があるということが認識されるようになってきました。その辺りのことを含め、濾過器の持つ役割を考えてみたいと思います。

濾過をすること
 これが濾過器に求められる一番の仕事です。なにせ、”濾過”する”器具”ですからね(笑)。濾過しないことには話しになりません。ということで、ゴミを濾し取ったり、有害物質を取り去ったりといった役割です。
 濾過といっても、大きく分けて、物理濾過生物濾過吸着濾過という3つの種類があることは、”猫でもわかる濾過話”で書きましたが、濾過器に入れるろ材を変えることで、それぞれの濾過を実行します。

●水槽に水流を作ること
 濾過器は水槽の水を絶えずかき混ぜるため、水槽内には水流ができます。それによって、以下のような効果があると考えられます。
 ◆よどみを解消する効果です。川や水路などで、水の流れが悪く、ゴミがたまってちょっと臭くなっているようなところを見かけたことはないでしょうか?このように、水が止まってしまって流れが極端に悪くなると、その部分だけ環境が悪化してしまうことがあります。世に言う、水がよどんでいるとか、腐っている状態です。水槽には、魚もいますし、何もしなくても、水が常に動いているようにも見えますが、レイアウトや水草の関係で、水の流れが悪いところができることがあります。そういった場所は、ゴミもたまりやすく、水が腐ってしまうことがありますので、なるべく水槽全体で水が均一に循環することが理想的です。ですので、濾過器で強制的に水を動かすことによって、水槽内に満遍なく水を回し、腐る場所を作らないための役割も果たしていると思われます。
 ◆水槽内の温度を一定に保つ効果もあります。熱帯魚の水槽には、水温を保つためにヒーターが設置してありますが、ヒーターの周りの水は温かくなりやすく、ヒーターから離れたところの水はなかなか温まらないんです。さらに、水の性質として、温かい水は上に昇り、冷たい水は下に降りてきてしまいます。これらのことが重なって、水槽内に温度が違う場合が出てきてしまいます。特にヒーターが良く通電する寒い時期などはその傾向が強くなります。そんな状態ですと温度変化に敏感な魚たちにはあまりよくないですので、なるべく水槽内の温度は一定に保ちたいところなんですね。濾過器を動かすことで水流ができ、水が満遍なく水槽内を回ると、温度が早く均等になる効果が期待できます。
 ◆水槽内に酸素を取り入れるということもやっています。魚や水草を飼育する場合には、水中に酸素が必要です。ですので、エアポンプとエアストーン(通称ブクブク)を使って、酸素の供給をすることがありますが、濾過器自体がその能力を発揮することもあります。エアポンプで動いている濾過器なんかは分かりやすいですね。言うまでも無く、濾過器を動かすついでに酸素の供給を行うことができます。また、エアポンプを使わないタイプですと分かりづらいことかもしれませんが、濾過器が水を動かすことで水面が波打ったりすると、そこから酸素を取り込むことができます(エアレーションも同じ原理なんですが、その説明はとりあえず割愛します)。そのため、意図的に濾過器の水の出口を水面に近づけたり、水上に出したりして、酸素を取り入れやすくするような使い方をしている場合もあります。
 ◆水面を波打たせることで、油膜の発生を防いだりする効果も期待できます。水面に油膜ができると、見た目もあまりよくないばかりではなく、水面からの酸素の供給を妨げたりしますので、水槽にとってはあまりよくありません。油膜は水面が常に動いている状態では、でき難いですので、油膜防止にも濾過器は貢献していると言えると思います。

※一部、追記しました(2006/1/8) たま尾さん、情報ありがとうございます。

●全体として水量を増やすこと
 水槽は、なるべく水が多い方が水質管理が有利になります。
 なぜかと言いますと…。例えば、ペットボトルの水にチューブ1本分の絵の具をたらすとかなり濃くなりますよね。この絵の具がもしも何かの悪い物質だったら、ペットボトルの水も多分、かなり悪そうな気がします。それに対して、プールいっぱいの水に、チューブ1本分の絵の具をたらすとたぶん、ほとんど色の違いには気がつかないのではないでしょうか?もしもそれが毒だったとしても、かなり薄まって、それほど影響がなさそうに思います。
 水槽もこれと同じ理屈でして、魚を飼う(=ゴミや有害な物質が出てくる)のでしたら、水量が大きい方が有利になります。ですので、水槽に濾過器を取り付けることによって、水槽システム全体としての水量が増えますので、同じだけの魚を飼うのなら、多少有利になると考えられます。とはいっても、普通、濾過器の水量は水槽の水量に比べて微々たるものですし、水槽に直接入れる形の濾過器の場合には当てはまりませんので、この役割というのは、それほど大きなものではないのかもしれませんが…。一応書いておきます(^^;

■濾過器の性能はどこで決まる?
 濾過器の役割を踏まえて、濾過器の性能について考えてみようと思います。
 まず最大の役割は濾過をすることです。濾過をするためには、ろ材を濾過器に入れます。濾過器の中の、ろ材を入れる場所を濾過層と言います。また濾過層の大きさを濾過容量とか、ろ材容量といいます。基本的にろ材が多く入るほど、濾過の能力は高くなりますので、ろ材容量の大きな濾過器ほど濾過に関しては高性能と言うことができると思います。また、その分、水量も増えることになりますので有利です。
 水槽内に水を回す能力は、流量(”吐出量”など、他の名称もあります)と、最大揚程というもので決まります。
 濾過器の箱や説明書を見ると、濾過器のポンプの能力として毎分?リットルという記述がある事が多いですが、それが濾過器の流量です。流量が多いほど、たくさんの水が流れますので、水を回す能力が高いといえます。また、最大揚程とは、ポンプが水を持ち上げられる高さのことを指していまして、こちらも大きいほど能力が高いということになります。流量が速度で、最大揚程がパワーだと思っていただければそれほど間違いではないかと思います。大抵の場合、濾過器のろ材容量が大きいほど、流量も、最大揚程も大きくなる傾向にあります。
 濾過器の機械的な性能としては、上記の3つ(ろ材容量、流量、最大揚程)が分かれば大抵の比較はできるかと思います。ただ、全ての濾過器でこれらの性能が表示されていないのが残念なところです。

 他にも数値にしにくい性能があります。動作音スペアパーツの有無です。
 なるべく濾過器は静かな方がよいですので、音の大きな濾過器は避けたいところですが、音に関しては性能表示がないですし、実際に使ってみると同じ製品でも音の大きさが違うことがありますので、音に関しては製品ごとのばらつきや、使用環境によって変わる部分が多いように感じます。一応、大きな濾過器ほど音が大きい傾向はあります。
 スペアパーツですが、これは、もともとのパーツ類の品揃えもありますが、近くの店に入荷するかどうかとか、どの程度頻繁に取り替える必要があるか、値段なども、関係してくる話ですので、一概に比較するのが難しいというところがあります。

■濾過器の種類と解説
 ここからは具体的に濾過器について説明していこうと思います。濾過器は水の循環方法や、セットする位置などで、いくつかの方式に分けられていまして、それぞれにメリットデメリットがありますので、それらも含めて説明していきます。
 ※1:適合水槽は、一般的によく売られている濾過器で、その濾過器一台をつけるとしたときの適合サイズを示しています。他の濾過器の補助など、違う使い方をする場合にはその限りではありません。
 ※2:使用ろ材は、その濾過器で一般的に使われることの多いろ材の種類を記しています。他のろ材を使えないということではありません。

●投げ込み濾過器(投げ込み式濾過器、エアポンプ駆動式濾過器、ブクブク濾過器)
 ◆製品の例:水作エイト、ロカボーイ、ロカパル、スモールフィルター、フィッシュレット(これは少し違いますが…)など
 ◆適合水槽:20〜45センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:ウールろ材、活性炭
 ◆値段:100円〜2000円くらいまで(交換用カートリッジを定期的に交換する場合、数週間に一度、300円前後かかります)
 ◆他に必要な器具:エアポンプ、エアチューブ
 ◆ろ材交換:活性炭は定期的に交換します。
 ◆仕組み:エアポンプからの空気を濾過器の中心の一番下に引き込み、ブクブクと放出します(上の穴から空気が出て行きます)。そのときに、濾過器の中心部分にある水を一緒に上に吸い出すので、濾過器の中心では、水が足りない状態になります。それを補うために、濾過器は、いろいろなところにあいている穴から周囲の水を吸い込んできます。吸い寄せられる水はろ材の間を通り抜けて濾過器の中心に向かいますので、そのときにろ材と接触してろ過が行われるという仕組みです。

 ◆説明:水槽の中に濾過器自体を入れてしまうため、投げ込み式濾過器などといわれることが多い濾過器です。後述する水中濾過器なども水槽の中に設置するので、これも水中濾過器といえなくもないですが、アクアリストの間での認識としては、エアポンプで作動するものを投げ込み式、電気を使い水中モーターで作動するものを水中濾過器という事が多いと思います。
 この濾過器は、小型水槽用、もしくは大型の水槽の補助用の濾過器として使われることが多いです。また、濾過と同時にエアレーションもできるので、小型水槽で飼育できるくらいの小魚を主体にした飼育に適しています。また、吸い込むときの勢いがあまり強くないので、濾過器への吸い込みが心配な稚魚の飼育や、病魚の隔離水槽などでも重宝されています。
 水槽内に本体ごと設置するために、どうしても目立ってしまうことや、底面の一部を占領してしまいますので、レイアウト重視の水槽や、底面を多く取りたい場合にはあまり向いていないと思います。また、エアを止めると濾過も止まるので24時間エアレーションする必要があり、水草水槽などで、二酸化炭素の強制添加をする場合には、不利な条件となります。このことから、水草水槽では、あまり使われません。
 その他、特徴としては、安価で、設置も手軽であること、ろ材の交換用カートリッジが売っているので、それを取り替えていれば、濾過能力を保つことができることから、メンテナンスの仕方がわかりやすいことなどがあげられます。ですが、ろ材の交換の際には濾過器を水槽から出さないといけないので少し面倒くさいです。底砂の上に設置しますので、軽くて細かい砂やソイルなどを使いますと、それを吸い込んでしまい、早く目詰まりすることがありますので、砂の種類によっても使うかどうかを考えた方が良いと思います。
 初心者の方が、はじめに購入することが多いと思われる小型のセット水槽などに含まれているのもよく見かけますので、なじみ深い濾過器ではないでしょうか。たまに濾過能力が低いと言われますが、濾過器にあったサイズの水槽で、適正な魚の数の飼育でしたら、特に問題はないです。他の大きな濾過器に比べると、濾過能力が低いということなので、あまり気にしなくて良いかと思います。

 ◆その他(裏技的なこと):この濾過器を使っていて一番気になるのが、定期的なろ材カートリッジの交換です。ですが、実際に使ってみますと、メーカーが言うほど頻繁に交換しなくても良い場合が多いです。活性炭については、吸着能力が落ちると思われますので、定期交換をお勧めしますが、ウールについては、汚れてきたら洗って使えるような気がします。というか、私は洗って何回も使っています。また、ろ材を専用のカートリッジではなく、アクア用のウールにしたり、生物ろ材を入れて使ったりもできますし、それでも十分な濾過能力を発揮してくれますので、その辺りの工夫をしてみるのも面白いかもしれません。

●スポンジフィルタ(ストレーナーカバー)
 ◆製品の例:テトラブリラントフィルター、ストレーナースポンジ、水作ウェーブなど
 ◆適合水槽:20〜60センチ水槽程度
 ◆使用ろ材:スポンジろ材
 ◆値段:数百円〜2000円くらいまで
 ◆他に必要な器具:エアポンプ、エアチューブ、(場合によっては他の濾過器)
 ◆ろ材交換:メーカーにより交換の推奨時期はありますが、それよりも、スポンジがへたってくるか、目詰まりしやすくなってきたら交換した方が良いかもしれません。
 ◆仕組み:投げ込み式濾過器と基本的に同じです。スポンジフィルタの中央に水が通り抜けられるパイプが通っていまして、その下部から、エアをブクブクと放出します(パイプの上部から空気が出て行きます)。そのときに、スポンジフィルタの中心部分にある水を一緒に上に吸い出すので、スポンジフィルタの中心では、水が足りない状態になります。それを補うために、周囲の水を吸い込みます。吸い込まれる水はスポンジの間を通り抜けて中心に向かいますので、そのときにろ材であるスポンジと接触してろ過が行われるという仕組みです。また、エアによる駆動方法の他に、モーターで水を流す場合もあります。そのときには、パイプの上部にポンプとなるモーターを取り付けて、そこから水を吸い上げることで、スポンジに水を通すような構造になっているものが多いです。

 ◆説明:この濾過器は、小型水槽や、大型水槽の補助濾過器として使われることが多いです。特に、水を吸い込む面がスポンジのみなので、稚魚など、小さな魚を吸い込むこともないため、稚魚育成用の水槽のメインフィルタとして使われているのをよく目にします。
 水槽内に本体ごと設置するために、どうしても目立ってしまうので、レイアウト重視の水槽や、水槽上層の遊泳領域を多く確保したい場合にはあまり向いていないと思います。また、投げ込み濾過器と同様にエアを止めると濾過も止まるのでエアレーションを止めることができないため、二酸化炭素の強制添加をする場合には、不利な条件となります。このことから、エア駆動式のスポンジフィルタは水草水槽ではあまり使われていませんが、モーター駆動式の場合や、他の濾過器の前段(後述します)としては、使われていることもあります。
 その他の特徴としては、設置が手軽で、比較的安価ですので、導入すること自体はそれほど難しくないと思います。メンテナンスは、水の流れが悪くなってきたと感じたときにスポンジを外してもみ洗いするというのが基本です。それだけで維持できますので、ある意味簡単ですが、メンテのたびに水槽の中に手を入れるのが嫌な場合には、面倒かもしれません。
 ホームセンターなどでは、置いていないこともありますので、あまり見かけないかもしれませんが、稚魚の育成などに良く使われるので熱帯魚屋さんに行けば、普通は置いてあると思います。

 ◆その他(裏技的なこと):スポンジフィルタの場合、これ自体で単体の濾過器として使われることもありますが、他の濾過器の吸い込み口に取り付けて、濾過システムの第一段階として、ゴミを濾しとる役割を担うこともあります。その場合には、エアの通るパイプの代わりに後段の濾過器の吸水用パイプを接続して使うことが多いです。そのときには、スポンジフィルタという名称のほかに、ストレーナーカバーなどと呼ばれたりもします。


●水中濾過器(水中式濾過器、モーター式濾過器)
 ◆製品の例:リオフィルター、イーロカ、プライムミオ、ミニボックス、エデニックローター、スペースパワーフィットなど
 ◆適合水槽:最小〜45センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:ウールろ材、または、活性炭やスポンジろ材
 ◆値段:数百円〜3000円くらいまで
 ◆他に必要な器具:特に無し
 ◆ろ材交換:活性炭を使用している場合には定期的な交換が必要ですが、ウールろ材、スポンジろ材の場合には汚れをもみ洗いしてセットすれば、大丈夫な気がします。メーカーは定期交換を推奨していることが多いです。
 ◆仕組み:水中でモーターにより水流を起こし、水を吸い込んで排出します。吸い込む経路の途中に、ろ材を配置し、そのろ材に水を通すことで、濾過を行います。モーターも、ろ材も含め、濾過器のほとんど全ての部分が水中に水没しているので、水中濾過器と呼ばれています。一番シンプルなつくりの濾過器だと思います。

 ◆説明:この濾過器は小型水槽や大型水槽の補助濾過器として使われることが多いです。また、これ以外にメインの濾過器がある場合には、濾過よりも、水槽内に水流を作るために使用されることもあります。また、ディフューザーによるエアレーションや、シャワーパイプなどを吐出口につけることでの分散した水流の発生、水面を波立たせての油膜除去などに使われることも多く、いろいろな用途に使える濾過器です。水流が結構あるので、速い流れを好む魚や、泳ぎの速い魚の飼育に使われたり、エアレーションの機能などから、酸素量を必要とする魚の飼育にも利用されているのを見かけます。
 ろ材が入るところがあまり大きくないので、大型水槽ではメインの濾過器として使われることは少ないです。また、強い水流を嫌う、ヒレの大きな魚の飼育や、水草が流されるとの理由で水草水槽にもあまり使われないようです。それと、モーター部分が水没しているため、どうしても水槽の温度が上がりがちになりますので、夏場の温度上昇時期には少し不利になります。
 その他の特徴としては、手軽に扱えて、比較的安価ですので、楽に設置できると思います。普通は吸盤で水槽に貼り付けるだけで使えます。大きなものになりますと、水底に置くタイプもあります。ろ材交換は、ワンタッチのものもありますが、基本的には外側のカバーを外して中のろ材を取り出して入れ替えるという形になりますので、水から出して行う必要があります。やり方は難しくないですが、吸盤で付いていますので、外すのに意外と手間がかかります。交換用ろ材も売っていまして、それと交換すれば維持できますので、特に難しく考える必要はありませんが、メーカーが推奨する時期で交換していると、やっぱりちょっとだけ懐に痛いのが難点です。
 うちの近くのホームセンターなどでも良く見かけますので、入手は難しくないと思いますが、好みの水流のものを見つけるのに、私はいくつか買いました(笑)メーカーによって驚くほど水流の強さが違いますので、流量はきちんと確認してから買いましょう。また、実際に動いているのを見て買えればベストかなと思います。

 ◆その他(裏技的なこと):ろ材の交換は各メーカーが交換用カートリッジを発売していますので、それを購入すればいいのですが、活性炭以外の、ウールや、スポンジの場合にはもみ洗いして何度も使っていても特に問題ない場合が多いです。私はそうしています。また、この濾過器は、縦長の構造のものが多いので、ろ材も縦長になっている場合が多いです。そのろ材の長辺方向に水が流れるため、実際にろ材でゴミを受け止めている面積が狭くなるという特徴があります。そのため、他の濾過器に比べると、ゴミが詰まりやすく流量が低下する割合が大きいです。つまり、掃除の回数が増える場合があります。濾過ではなく、水流を作ることを主目的に使う場合には、ろ材を取り除いて使った方が、メンテナンスは楽です。


●外掛け濾過器(外掛け式濾過器、引っ掛け濾過器)
 ◆製品の例:ワンタッチフィルター、簡単ラクラクフィルター、アクアパル、プロフィットフィルタ、イージーフィルター、宇宙物語U-1フィルターなど
 ◆適合水槽:最小〜60センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:ウールろ材、活性炭、(※生物ろ材などに詰め替える改造を施されている例を良く見かけます)
 ◆値段:1000円〜4000円くらいまで(交換用カートリッジを定期的に交換する場合、数週間に一度、300円前後かかります)
 ◆他に必要な器具:必要に応じて、ストレーナースポンジ
 ◆ろ材交換:活性炭とウールが一緒になった交換用カートリッジの場合が多いので、定期的にそれを丸ごと取り替えます。ただ、生物ろ材に詰め替えて使われることもしばしばですので、その場合には、交換しないことも多いです。
 ◆仕組み:左の図に示したように、この濾過器は、水槽の縁に引っ掛ける構造になっています。水を吸い込むパイプの先と、水を水槽に戻すための口が水槽側に出ています。ろ材を入れる濾過層は、引っ掛けたときに水槽の外側になるようについています。モーターも通常は水槽の外側に来るようについていますが、最近は水槽側の水中にくるように付けられているものも発売されています。水槽側に出ているパイプから水を吸い込みます。その水はパイプを伝わって、水槽の外側にある濾過層の一番下に送られ、そこから濾過層を通過して水があがっていき、一番上まで到達して溢れた水が水槽側に出ている口から水槽に戻ります。濾過層を通過する際に、その中に入っているろ材の中を通ることで、濾過を行う仕組みです。
 水槽から、水をくみ出し、一旦外に出して濾過層を通して、また水槽に戻すというのは、後述する外部濾過器などと同じですが、この濾過器は水槽の縁に引っ掛けるという独特の設置方法から、外掛け濾過器、引っ掛け濾過器などと言われています。

 ◆説明:この濾過器は小型〜中型水槽のメイン濾過器、中型以上の水槽の補助濾過器として使われることが多いです。形は奇抜ですが、濾過器としては癖はないので、様々な水槽で使われています。魚中心の飼育はもちろんですが、水槽の水位を上げておけば二酸化炭素を逃がすことも少ないので、水草を育成している小型の水槽などでも利用されています。形がちょっと特異なので、水槽全体の見た目を気にする場合には不向きかもしれませんが、水槽内には、吸水用のパイプくらいしか目立つものがないので、レイアウト水槽などでも利用されているのを見かけます。
 水槽に引っ掛ける構造になっているので、水槽には濾過器の全ての重量がかかることになります。そのため、どうしても重くできませんので、大きな濾過層は持てません。最大でも60センチ水槽の濾過をまかなう程度の濾過層を確保するのがやっとのようです。ですので、この濾過器をメインで使うとなると、小型〜中型水槽に用途が限定されます。また、小型の水槽で使った場合に、水流が強すぎて水槽内が洗濯機の中のように、ものすごい流れになってしまうことがあります。一応、水流調節のつまみがついている濾過器が多いですが、それを最小にしても強い場合がありますので、水流に弱い魚を飼育している場合には、注意が必要です。また、濾過器としては、酸素の供給はしないので、酸素量を必要とする魚を飼育する場合には、別途エアレーションをした方が良いと思います。
 ほとんど多くの機種が、ワンタッチで手を水につけずにろ材を取り替えられるカートリッジを使用していますので、メンテナンスは非常に簡単で分かりやすく、楽です。ですが、これもメーカーの言うとおりにカートリッジを取り替えていると、毎月お小遣いがなくなっていきますので、その点が少しつらいところです。
 この濾過器は、動作音に関するお話をよく聞きます。同じ製品でも、個々に動作音の大きさが違うことが多いです。”アタリ”の濾過器の場合、ほとんど無音に近いものもありますが、”ハズレ”の濾過器の場合、結構うるさいのもありまして、音に関しては、運頼みの部分が大きいです。
 最近は、小型の水槽とセット売りされていることも多く、ホームセンターなどでも良く見かけますので、入手は特に難しくないと思います。水流を弱めたり、ろ材の大きさを少しでも稼ぐために、吸水口につけるストレーナカバーや、排水口につけるオプションパーツなども売られています。

 ◆その他(裏技的なこと):この濾過器は一番改造されている濾過器のような気がします。上で書きましたとおり、カートリッジを定期的に取り替えるタイプの濾過器であるために、維持費がちょっとかさむので、カートリッジを取り付けずに、ウールろ材やスポンジろ材、生物ろ材などを、濾過層に詰め込むような改造をしている例を良く見かけます。”外掛け濾過器 改造”などで検索すると、具体的な方法がたくさん見つかると思います。私もやったことがありますが、それでも全く問題なく使用できますので、カートリッジを毎回買うのがつらい方は試してみるのも良いかもしれません。


●底面濾過器(底面式濾過器)
 ◆製品の例:バイオフィルター、ハイドロフィルター、アクアベースプラス、清流、底-1フィルターなど
 ◆一般的な適合水槽:30〜90センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:底砂
 ◆値段:数百円〜4000円くらいまで
 ◆他に必要な器具:エアポンプとエアチューブが必要な場合がある
 ◆ろ材交換:底面に敷いた底砂をろ材としていますので、基本的に交換はしません。
 ◆仕組み:左の図のように水槽の底面全体(もしくは一部)に水が通るためのスノコのようなものを敷きまして、その四隅のどこかからパイプが上に出ているという構造になっています。このパイプに取り付けたモーターで水を吸うと、底面に敷いたスノコ全体から水を吸い込むことができる仕組みです。このスノコの上に底砂を載せて使います。そうすると、水は底砂を通過してスノコに吸い込まれ、その後、パイプの上部から排出されます。底砂自体をろ材として考えて、水が底砂の中を通過するときに、濾過を行います。また、モーターを逆に動かして、水槽の上層から水を吸い込み、パイプを通してスノコから水を排出することで、底面から吹き上げるように動かすこともあります。この場合も底砂の間を水が通過するので、そのときに濾過が行われます。
 一般的には底面から吸い込む方法が使われるので、”底面濾過”と一言で言った場合には、前者を指すことがほとんどです。また、それを”底面吸い込み濾過”と言う人も居ます。後者は、”底面吹き上げ濾過”などと言われることが多いです。
 左の図では、モーター駆動式の底面濾過器を書いてありますが、エア駆動式の場合もあります。エア駆動式の場合には、投げ込み式濾過器やスポンジフィルタと同じように、パイプの下部からエアを放出し、パイプ内を上昇するエアの力で水を吸う構造になっています。この場合、底面吹き上げ濾過はできませんので、全て底面吸い込み濾過になります。

 ◆説明:この濾過器は、小型〜中型水槽のメイン濾過器、中型以上の水槽の補助濾過器として使われることが多いです。底砂自体をろ材として使用するために、他にろ材を用意する必要がなく、値段の割には大きな濾過能力を得ることができます。底砂さえしっかりしていれば、ろ材交換の必要もないので、セットしたらずっと使えるということがとても便利です。ショップなどのように、多くの水槽を稼動させている所では、よく使われているのを見かけます。また、水槽の中に濾過器の全てが収納されるうえに、水槽内で見えているのはパイプだけ、水槽周りも水槽内もすっきりしますので、水槽にゴチャゴチャついているのが嫌いな方にはお勧めです。
 ろ材として底砂を使うということで、いくつか問題もあります。底砂を敷かない水槽(ベアタンク)では使えず、スノコの目よりも小さい底砂(田砂やソイル)を敷いている水槽では、工夫しないと使えないということ、底砂にゴミを吸着しますのでうまく掃除しないと、濾過の機能が損なわれたり、低層魚が病気がちになるなどの弊害が発生する場合もあり、メンテナンスの仕方に多少コツの居る濾過器かと思います。
 また、水草の根が濾過器に絡まったりして詰まるというトラブルの話を聞くこともあります。
 これらのことから、濾過能力の必要な魚中心の飼育でよく使われています。特にあまり底の方に来ない上層魚がメインの場合には、重宝されているようです。逆に水草水槽ではあまり使われていないようです。また、私の個人的な意見ですが、底面吸い込み型の底面濾過器を使って低層魚をうまく飼育できたことがあまりないので、私のように掃除の下手な方、底面濾過での維持のコツがつかめない方は、低層魚を飼育するのには使わないほうが良いかと思います。
 古くからある濾過器ですが、普通のホームセンターでは売られていないこともあるかもしれません。鑑賞魚の専門店に行けば、置いていないところはまず無いと思います。

 ◆その他(裏技的なこと):スノコに入ってしまうような、粒の小さい砂を使う場合、スノコの上にウールやスポンジなどを敷いて、その上から底砂を入れるという工夫をしている方も居るようです。
 濾過器としてではなく、水流を確保する意味で使われることもあります。底砂の中に水を通すことで、水の通りが少ない底砂の中がよどんで腐ってしまわないようにという配慮です。その場合には、他の濾過器と併用しつつ、底面吹き上げ方式で使う事が多いようです。


●上部濾過器(上部式濾過器)
 ◆製品の例:ニッソーマスターシリーズ、ビッグボーイ、スーパーターボシリーズ、レイシーRFシリーズ、水作エイトブリッジなど
 ◆適合水槽:30〜120センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:ウールろ材、生物ろ材
 ◆値段:2000円〜30000円くらいまで
 ◆他に必要な器具:必要に応じて、ストレーナースポンジ
 ◆ろ材交換:ウールろ材は、汚れてきたら何度か洗って使いますが、それでもへたってきたら取り替えた方が良いかと思います。生物ろ材は崩れたりするまでは取り替える必要はないと思います。
 ◆仕組み:水槽の上に設置する濾過器です。濾過層になる箱型の容器と、ポンプ、それから水槽に水を落とすためのパイプがついていることもあります。水槽の上に濾過器を置きまして、ポンプで水槽の水を吸い上げます。吸い上げた水を、濾過層に、上から撒くようにして入れます。水は、濾過層の中を下がっていきまして、その間にろ材を通過して、濾過を行う仕組みです。一番下まで来た水は、濾過層の下にあいている穴から水槽に戻ります。
 一旦水槽から水をくみ出して、ろ材の中を通し、水槽に戻すという仕組み自体は、外掛け濾過器や後述の外部濾過器などと同様ですが、水槽の真上に載せて使用するために、上部濾過器と呼ばれています。

 ◆説明:この濾過器は小型〜大型濾過器まで、かなり多くの水槽のメイン濾過器として使われています。水槽上部に設置するために、場所を取らず、設置も簡単で、メンテナンスをするときにも、良く見えますのでとてもやりやすいです。濾過層の容量をかなり大きく確保できますので、濾過能力も大きなものが多く、スペースに余裕があるため、いろいろなろ材を使うことができて、ろ材選択の自由度も高いです。また、水が水槽に落ちながら戻るので、そのときに周りの空気を巻き込んでエアレーションと同じような効果を発揮します。そのため、上部濾過器を使っている場合には、エアポンプを用意しなくても良いことがほとんどです。また、水槽の上のほうから吸水しますので、底砂が細かくても吸い込むことは少ないです。このような特徴から、魚中心の水槽では、かなり重宝されています。大きな魚を飼育する場合でも、それに足りるだけの、ろ材を入れる容量を得ることができますし、豊富な酸素供給を濾過器のみで行うことができるのはかなリ嬉しいです。
 濾過器を水槽の上に設置することでの弊害もあります。水槽の上にあまりものを置かないのが好きな方には邪魔に見えるかもしれません。結構大きな箱ですので、ちょっと圧迫感があるような気もします。また、水槽上部の一部分を占領してしまうため、水草を育てるための照明を設置するスペースが小さくなってしまいます(通常、水槽上部の面積の半分を濾過器で使用します)。ですので、高光量を必要とする水草を育てるのには少し不利になります。さらに、エアレーション効果があるために、二酸化炭素を逃がしたくない場合には、ちょっと辛いですので、高光量、二酸化炭素強制添加環境で、本格的な水草水槽をやりたいと思う場合には、はっきり言ってお勧めできない濾過器です。また、ろ材のメンテナンスのときに水槽に手を入れる必要はないですが、それでも水に触れますので、手を汚さずにワンタッチでできる外掛け濾過器のようには行かないです(それ以外の濾過器よりは楽だとは思いますが…)。
 昔からある濾過器ですし、濾過器の中でもいちばん有名なものかもしれません。また、45センチ〜90センチ水槽くらいの水槽セットについてくる濾過器は上部濾過器が多いと思います。それだけ良く売られていますので、購入するのに困ることはあまりないかと思います。

 ◆その他(裏技的なこと):上部濾過器に関しては、はじめから、自分で好きなろ材をいれるという前提で作られているものが多いですので、特に改造や工夫をして使わなくても、運用面、コスト面、性能面で、十分な場合が多いです。逆にそれだけ完成度の高い濾過器なのかなとも思います。


●外部濾過器(外部式濾過器、密閉式濾過器、外部密閉式濾過器、パワーフィルター)
 ◆製品の例:エーハイムシリーズ、エックスパワーフィルター、プライムパワー、パワーボックス、スーパージェットフィルター、エデニックシェルトなど
 ◆適合水槽:45〜180センチ水槽程度まで
 ◆使用ろ材:ウールろ材、生物ろ材
 ◆値段:五千円〜十万円くらいまで
 ◆他に必要な器具:必要に応じて、ストレーナースポンジ
 ◆ろ材交換:ウールろ材は、汚れてきたら何度か洗って使いますが、それでもへたってきたら取り替えた方が良いかと思います。生物ろ材は崩れたりするまでは取り替える必要はないと思います。
 ◆仕組み:水槽に設置した二本のホースと、その間をつなぐ濾過層、モーターで構成されています。水槽内に設置したホースの一方から水を吸い、水槽の外にある濾過層を通してから、またホースで水槽に水を戻します。濾過層にろ材を入れておきますと、水がろ材の間を通りますので、その際に濾過を行うという仕組みです。水槽の外に一旦水を出してから、濾過して戻すという仕組みは、上部濾過器や外掛け濾過器と同じですが、ホースさえつながっていれば、濾過層を水槽からかなり離してしまうこともできます。このように、他の濾過器に比べて設置場所にあまり制限がないため、こういう形式のものを外部濾過器と呼ぶことが多いです。また、外部濾過器と呼ばれる濾過器は、普通は密閉式になっています。つまり、ホースから水が入って、もう一方のホースから出て行くまで、完全に閉じられた状態になっていますので、途中で外からの気体の流入などもありません。これも外部濾過器の大きな特徴です(そのため、密閉式と呼ばれることもあります)。

 ◆説明:この濾過器は中型から、大型水槽のメイン濾過器としてよく使われます。以前は小型のものがなかったために、小型水槽では滅多に使われませんでしたが、最近は小型水槽対応型のものも発売されています。水槽の外部、それもかなり自由な位置に設置できます(ただし、ポンプのパワーによって、設置位置が水槽水面からどのくらいの高さまで、などの制限があります)ので、水槽周りは結構すっきりします。水槽台の中に収納することも可能ですので、インテリア目的の水槽などですと重宝されるのではないかと思います。また、水槽内もホース二本のみですので、あまり器具が目立ちません。上部濾過器と違って水槽上部を完全に空けることができ、照明をたくさん置けることや、濾過器への気体の流入がないので、強制添加した二酸化炭素を逃がすことが少なくなります。これらのことを考えますと、水草水槽にはかなり有利な濾過器といえると思います。実際、水草水槽を本格的に維持されている方は、外部濾過器を使っている方が多いです。
 水槽から離れていることで、熱を逃がしやすいという性質がありますので、設置場所によっては、冬場に、ヒーターの電気代が少しかかるかもしれません。また、完全に密封されているため、メンテナンスをする場合には、きちんとした手順を踏まないと、水が溢れたり、設置後にうまく動かなくなることもありますので、きちんと説明書どおりに作業してください。そういう意味では、はじめ、操作に戸惑うことが一番多い濾過器ではないかと思います。
 適正な容量の水槽に設置してもかなり水流が強い場合がありますので、そのときには吸水、排水のホースに対策をして使う場合も結構あります。また、魚中心の飼育でエアが必要な場合には、濾過器とは別にエアレーションをする必要もあります。
 水槽関連の器具としては高価なほうだと思いますので、購入するのには勇気のいる場合もあるかと思いますが、器具としてはかなり一般的なので、ホームセンターでも売っていることがありますし、熱帯魚の専門店ですと置いていないことはないと思います。

 ◆その他(裏技的なこと):外部濾過器も自分で好きなろ材を入れて使うことを前提としている場合が多いですので、ろ材選択に関しては、かなり自由度が高いです。ですので、いろいろな組み合わせでろ材を入れて使っているのを良く見かけます。特に改造や工夫をして使わなくても、運用面、コスト面、性能面で、十分な場合が多いです。ただ、水流が強すぎるという話は結構聞きますので、吸水口にストレーナ(スポンジフィルタ)をつけて流入量を抑えるとか、排水用のホースに穴をあけたり、水流の方向をガラス面に向けたりといった工夫をして使っている事例も良く見かけます。

■選ぶときの考え方
 ここまでの濾過器の説明は、飼育本や、指南サイトにもあるわけで、今更という感じかもしれません。それよりは、濾過器をどんな基準で選べば良いのか?自分の思う水槽には、どんな濾過器を用意すれば良いのか?という辺りが実際上、必要なところかなと思いますので、そういうお話を書きたいと思います。
 ただ、それは人によって、判断にある程度ばらつきのある事柄なので、ここから先は私の判断の仕方を基本として書いた個人的な意見として捉えていただければと思います。

 上で紹介した濾過器の中から、メインの濾過器を決める場合に、まず、重要なのは3つだと思います。あなたが飼育する魚の種類、数、水草の維持方針です。
 魚が大きいとか、数が多い場合、上部濾過器と外部濾過器以外の濾過器をメインに使うのは難しいです。具体的に書きますと、60センチ水槽よりも大きな水槽でなければ飼育できないくらいの数や、大きさの魚を飼育する場合には、上部か、外部の濾過器を選ぶと良いと思います。60〜45センチくらいまでで飼育できる場合には底面も、45以下で、外掛け、水中、投げ込み、スポンジといった濾過器も使えるようになると考えると分かりやすいかと思います。
 次に水草の維持方針ですが、特に水草を育てるつもりはなく、とりあえず入っていればいいとか、丈夫な水草が育てばいいとか、そのくらいの方針でしたら、濾過器は何を使っても構わないと思いますので、魚の種類や数に応じて決めてください。逆に、水草をしっかり育てて行きたいということであれば、なるべく外部濾過器にすることをお勧めします。他の濾過器で、水草の育成ができないことはないですが、外部濾過器が有利であることは揺るがないと思います。ただ、値段の関係で手を出せない場合や、小型水槽などではその限りではありません。そのときには、外掛けなどもよいかもしれません。
 ここまでで、基本的な方針は決められると思います。あとは、それぞれの状況に合わせて選択していけばいいと思います。例えば、底砂を敷かないから、底面はつかえないとか、ランニングコストが高いから、カートリッジ式のろ材を使う濾過器は使わないとか、そういうことを加味して考えれば、あなたの水槽にできるだけマッチした濾過器が選べるのではないかと思います。

●外部濾過器と上部濾過器、どっちがいい?
 ある程度安価に買えるほかの濾過器と違って、外部濾過器と上部濾過器は結構高価です。また、60センチ水槽以上の場合、実際上、選択肢はこの二つになることが多いですので、どちらにしようかと迷っている方も結構いらっしゃるのではないかと思います。掲示板などでも、そういうご相談を受けることも多いですので、この二つで迷ったら、どうすれば良いのか、私なりの意見を書いてみます。
 まずは、水草を育てるつもりがあるのかどうか?です。今すぐではなくとも、水草レイアウトを中心とした水槽にしたいのでしたら、外部濾過器を買いましょう。これはあまり迷う必要はないです。ですが、本当に迷っている方って、ここじゃないんですよね。
「魚中心で、水草も少しやってみたい。でも、二酸化炭素添加したりして、本格的にはやるつもりは無いし…。そうなると値段が安いしメンテも楽そうな上部かな?でも、外部は濾過能力が高いって言うし、なによりもちょっと憧れるしね。でも、なんだか難しそうだよなぁ。扱えるのかな?。どうしよう…」
という感じかな?なんて思います。
 濾過器選択で、一番気になる濾過能力に関して、どちらが高いか?というのは、なかなか比べ難いところがあります。外部濾過気が能力が高いという話を良く聞くのですが、実際使ってみて、上部と比べてそんなに違いがあるかどうか、かなり疑問です。元々、濾過の形式が違いますし、濾過層への空気の取り入れ能力や、水槽ごとの条件なども違います。ですのでこれに関して一概に比べるのは難しいと思います。90センチ水槽用と書いてある上部と、同じく90センチ水槽用と書いてある外部なら、濾過能力は同じだと割り切ってしまってもそれほど大きな問題はないと思います。同じような感じで、外部の方が面倒くさいとか、難しいといわれるメンテに関しても、私は慣れてしまえば、手間に思わなかったですし、それを手間だと思う方は、上部濾過器でもたぶん手間だと思われると思います。実際に使ってみると、その程度の違いかなと思うんですよね。
 ですので、魚中心の飼育での、この二つの選択の場合、単純に値段で決めてもいいと思いますし、憧れの外部濾過器に挑戦してみるとか、エアレーションをしなくて良いので上部濾過器にしておくとか、もう少し別の選定理由で選んで良いような気がしています。あくまでも私見ですが。

●外部濾過器、どのメーカー(機種)がいい?
 これもかなり悩む方が多いような気がします。実際、一番最初に買ったときには私もかなり悩みました。やっぱり高価な買い物ですし、より良いものを選びたいのは誰でも同じですから、こういうご質問が多いのも頷けます。そこで、判断をするときにまず何に重点を置くか?ということを考えてみると良いと思います。ありそうなパターンの例をいくつかあげてみますね。

(1)とにかく濾過能力の高いものが欲しい。と言うことであれば、基本的にはろ材容量の大きな濾過器を買えばいいです。メーカーごとに、濾過能力についての工夫はいろいろとあるようですが、はっきり言いまして、同じ濾過容量で、メーカーが違うものを使ったとしても、濾過能力の違いにはあまり気がつかないと思います(私が鈍感という話もありますが…(^^;)。濾過をするのは濾過器の能力よりもろ材ですので。ろ材がたくさん入るものを選びましょう。

(2)静かな濾過器が欲しいということですと、基本的には小さい濾過器、モーターの能力の低い濾過器を選ぶと、音が小さい傾向があります。ただ、これに関してはメーカーや機種によってかなりの違いがあります。さらにややこしいのが、同じメーカー、同じ機種でも、音の大きさにかなりの差があるということです。音が静かで”アタリ”とか、うるさくて”ハズレ”などと言ったりしますが、製品の品質にばらつきがあるのは否めません。それも含めて、私は、総合的にエーハイムが音が静かな事が多いなぁと感じています。とはいっても、エーハイムのハズレと、他のメーカーのアタリを比べると、エーハイムのハズレの方がうるさいです(^^;。また、音に関しては、寝室の枕元に置く、と言う場合もあれば、普段人が居る事務所に置くなんてこともあると思います。寝室に置くのでしたら、とにかく静かだと言われるメーカーの製品をお勧めしますが、普段人が動いていたり、テレビをつけてみているとか、そういうところで使うのでしたら、どのメーカーのものを使っても、うるさくてどうにもならないということはあまり無いのではないかと思いますし、もしもそういう状態であれば、壊れているとか、設置の方法が悪いという可能性を考える方が自然だと思います。
 とはいっても、あくまでも、どんな濾過器が枕元にあろうと寝られる鈍感な私の感覚での話ですので、音に敏感な方はしっかりと考えてみてくださいね(^^;

(3)壊れない濾過器が欲しいといことですと、とにかく単純な構造の機種を選びましょう。呼び水機能とか、そういうものがついていたりすると、壊れる個所が増えますので、余計な機能は何もついていないシンプルな機種を選んでください。

(4)操作が楽な濾過器が欲しいと言うことですと、(3)とは逆に、機能がいろいろとついた機種を選ぶとよいと思います。外部濾過器を使うときに一番面倒なのは呼び水ですが、それをやってくれるレバーやボタンがついている機種もありますので、そういうものを購入しますと、そのあたりの作業はかなり楽になります。

で、実際問題、呼び水機能などは必要なのか?というあたりも気になるところだと思うのですが、慣れてしまえば無くても問題ないですし、外部濾過器を止める機会というのはそれほど多くありませんから、とりあえず、一番最初に苦労するか?しないか?というものだと考えていただいてよいと思います。また、器用な方なら最初からうまくやれるはずですし、不器用でも、説明書を読んで理解できる大人の方なら、できないことは無いと思います。どうしても、水を飲みたくないとか、とにかくスマートにやりたいと言う場合とか、呼び水機能つきでも値段が安いとか、そういう場合には呼び水機能のついたものを購入するのも手だと思いますし、最近はついている機種の方が多いですから、それほど深く考え無くてもいい?というちょっと乱暴なことも思ったりもします。

(5)オプション(スペア)パーツが多い(手に入りやすい)こととかは、本当に有利なのか?というのも結構面白い話かなと思うんですよね。よく、掲示板などで外部濾過器の選択について、質問すると、エーハイムを勧められる事が多いのですが、そのときの理由の一つに、オプションパーツとか、スペアパーツの事が挙げられているのを見かけます。確かに、すぐ手に入ることに越した事は無いのですが、現状、ネットショッピングもできるわけですし、昔のようにお店にお願いして、時間をかけて取り寄せてもらうということをしなくても、手に入れることは可能だと思います。ですので、これもそれほど気にしなくていいのでは?と思います。
 ただ、パーツの使いまわしができると有利なことは確かです。ですので、外部濾過器を何台も買うのでしたら、全て同じメーカーにしておくと、結構使いまわしができて良いかなとは思いますし、近くにいる友達がすでに使っているのでしたら、同じメーカーにしてみるというのも良いかも知れません。

(6)ワンランク上の濾過器は必要?これもネットで言われていることですが、例えば、60センチ水槽を持っているとして、それに60センチ水槽用の濾過器をつけるのではなく、75〜90センチ水槽用の濾過器(ワンランク上の濾過器)をつける。といった買い方です。これに関しては、飼育している魚とか、目指す水槽の方向性で決まってくるので一概には言えないと思います。ランクが上がると、普通はろ材容量が増えますので、濾過能力が増えます。それはいいことですので、ワンランクでもツーランクでも上げられるものならあげたらいいというのは、私も賛成しますが、普通はランクが上がると、値段も上がりますので、必要ないのにランクの高い濾過器を買うのは、もったいない気もします。また、ランクが上がれば水流も強くなります。ですので、水流が嫌いな魚を飼育しているとか、水草などのレイアウトが壊れる可能性がある場合には、ランクを上げることがデメリットになるんですよね。ですので、そのあたり、飼育している魚や水草のことなどを考えて決めたほうが良いかと思います。また、サブフィルタという、外部濾過器のオプションがあります。これを取り付けると、水流はそのまま(実際には多少減ります)に、ろ材容量のみを増やすことができますので、そういうことを検討すると言うのも手です。
 値段と、魚の種類、水草の様子などを含め、総合的に考えてみてくださいね。ちなみにクラウンローチの場合、お財布が許せばワンランク上の濾過器をつけておくのは、良いような気がします。ですが、常識的な密度で飼育する場合、ランクが上の濾過器じゃないと飼えないということは無いです。

以上のようなことを考えつつ、お財布と相談しつつ、購入されれば、それほど間違った買い物はしなくてすむのではないかと思います。

■最後に
 説明の中に難しい言葉なども出てきたので、少しわかりにくかったかも知れませんが、濾過器について、それから、選ぶ時の方針について、書いてみました。いかがでしたでしょうか?
 濾過器の説明はいいのですが、濾過器の選択については、かなり私の主観が入っていますので、いろいろと異論はあるかな?とも思いますが、なるべく一般的に、そして、初心者の方が買うときに分かりやすいようにと配慮して書いたつもりです。私が、個人的に新しい濾過器を買うとしたら、今まで使ったことのない濾過器を買っちゃうかな?なんて、初めて買う方にはあまり参考にならない感じのことを本当は思っていますので、そういう紛らわしい話を書きたい心を抑えられたのは、我ながら偉いなぁと思ったりしております(笑)
 今回の心残りは、濾過器とセットで語るべき”ろ材”について、何も触れられなかったことですが、一気に書いても分かりずらいですので、そのうち改めて書こうと思います。
 濾過器の選択はかなり迷うところだとは思いますが、このコンテンツが、その一助になれば幸いです。良い器具を選んで楽しいアクアライフを送ってくださいね。

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