ボルネオプレコの分類

 日本でボルネオプレコと呼ばれて販売されている魚について、かなりのバリエーションがあり、その詳しいお話を伺いました。少し複雑なお話なので、飼育方法などを紹介したボルネオプレコのページとは別ページにしています。学名などを中心にしたお話で、難しく感じるかもしれませんが、”ボルネオプレコ”とされている魚にもいろいろと居ることがわかりますので、今までの認識が変わるお話だと思います。
 また、例のごとく猫丸が勝手に名前を決めちゃっています(^^; もともと、全部”ボルネオプレコ”として売られていますので、区別するために名前を付けておいたほうが分かりやすく説明できるのではないかと思ったからです。もちろん、この名前は、このサイト内だけで通用するものですので、他ではきっと通じません。お気をつけくださいませ。

 写真、情報を提供してくださったおでっせいさん、ありがとうございます。またこのページ内の写真は全ておでっせいさんのご提供です。

■まず、大きく3つに分けます。

 日本に入って来ているボルネオプレコと呼ばれる吸い付きドジョウの仲間を、見た目の違いから、まずは以下のように大きく3種類に分けてみます(この3つは以前からボルネオプレコのページに掲載していたものです)。

(1)スポットボルネオプレコ
(2)ナローバンドボルネオプレコ
(3)ブロードバンドボルネオプレコ

 この3種類の違いを分かりやすくしたものが以下の3枚の写真です。


表(背中)側の写真
左から順番に (1)スポットボルネオプレコ (2)ナローバンドボルネオプレコ (3)ブロードバンドボルネオプレコ


裏(腹)側の写真
左から順番に (1)スポットボルネオプレコ (2)ナローバンドボルネオプレコ (3)ブロードバンドボルネオプレコ



側面の写真
上の左側が(1)スポットボルネオプレコ、右側が(3)ブロードバンドボルネオプレコ、下が(2)ナローバンドボルネオプレコ

(1)スポットボルネオプレコ
 表側から見ると、全身に大き目の白から黄色っぽい水玉模様の斑点が入ります。裏側から見たとき、一番分かりやすい特徴はひげです。上記の写真ではピンクの矢印で書いてありますが、ひげが長く裏側から見てもきちんと見えます。他の二種と比べると、その違いがよりはっきり分かると思います。
 このボルネオプレコが一番流通量が多く、”ボルネオプレコ”と言われて普通にイメージされるのもこの種類だと思います。

(2)ナローバンドボルネオプレコ
 表側から見ると、主に背中の部分に細い帯が入っている(もしくは、丸くない不規則な細い線のように見える斑点がある)のが特徴です。この細い帯から、ナローバンドと呼ぶことにしました。若い頃は細かな点列があり、それが成長につれて繋がって細縞になり、やがてそれも薄れて灰色で扁平な体形となるようです。裏側から見たときの特徴としては、左右の腹ビレの間(白い矢印のところです)に隙間があって黒っぽくなっている部分があることが一番分かりやすいかと思います。また、側面から見ると、鰓ぶた(水色の矢印のところです)にも特徴があります。他の2種は、長く開いていますが、この種だけは小さい穴になっています。それと、口の端(赤い丸で囲んだところです)に切れ込みがあり、笑っているように見えるのも特徴的です。
 性格としては、(1)スポットボルネオプレコに比べて、少し臆病で、いつもガラスか陶器表面など硬いものに張り付いていて、アヌビアスナナの葉などの不安定なところにはあまり移ったりしないそうです。カメラなどを向けても逃げることが多いようです。また、低水温に最も弱いようで、22℃位に水温低下させると、このタイプのみ白点病が発症しましたことがあるとのことでした。流通量としては、時々見かける程度のようです。

(3)ブロードバンドボルネオプレコ
 表側から見ると、(2)ナローバンドボルネオプレコよりも、背中の帯の幅が広いのが分かると思います。これが特徴ですので、ブロードバンドと呼ぶことにしました。その他に、頭周辺の斑点も大き目だったり、尾ひれが赤く色づいたりする場合もあることからも見分けられます。また、裏側から見たときには、(1)スポットボルネオプレコのようなヒゲの出っ張りもなく、(2)ナローバンドボルネオプレコのような腹ビレの間の隙間もありません。
 性格は、(1)スポットボルネオプレコより大胆で、不安定なアヌビアスナナの葉渡りも平気でこなし、苔舐めをするそうです。カメラの接近も特に気にした様子はないとのことです。
 おでっせいさんの飼育環境では、(1)スポットボルネオプレコや(2)ナローバンドボルネオプレコは3年以上生きているそうですが、(3)ブロードバンドボルネオプレコは、今のところ、1年未満の実績しかないとのことです。また、他の2種に比べて、高水温にも弱いそうで、26℃を越えると食欲が落ちてしまい、上部濾過からの落としこみ水流部に留まったままになってしまうとのことです。長期飼育するためには25℃以下の水温にする必要がありそうだとのことでした。流通量はかなり少ないようで、日本では珍しい種類とのことです。

以上が、大きく3種類に分けたときのボルネオプレコの違いです。以下にそれぞれの写真を紹介します。

(1)スポットボルネオプレコ




(2)ナローバンドボルネオプレコ




(3)ブロードバンドボルネオプレコ




■それぞれを細かく分けます
 大きく3つに分けたところで、さらにそれぞれを分けてみようと思います。上記の3つについて、少なくとも2種づつ日本に入って来ているようです(ただ、ブロードバンドボルネオプレコが2種類かどうかは、現在は微妙なのだそうです)。

※ここから先のお話は、ボルネオプレコの専門書 「The Borneo Suckers:2006年発刊」に掲載されている内容を参考にしたものです。

●(1)スポットボルネオプレコについて
 スポットボルネオプレコの2種類についてですが、わかりやすい違いは2点で、背ビレの模様と、全身のスポットの大きさ(と数)です。背ビレの地の色が黒っぽく不透明で不規則な青白い斑紋が全域に分布していて、体のスポットが小さく数が多いタイプ(A)と、背ビレの地の色が透明で白と黒の点列が串骨上に等間隔に配列されていて、体のスポットが大きく数が少ないタイプ(B)です。
 (A)をリトルスポットボルネオプレコ、(B)をラージスポットボルネオプレコと、勝手に呼ぶことにしてみました。それぞれの写真が以下です。
(1−A)リトルスポットボルネオプレコ

(1−B)ラージスポットボルネオプレコ

(1−A)リトルスポットボルネオプレコは、学名がGastromyzon ctenocephalusです。ctenocephalusというのは、”とさか頭”という意味で、背鰭の模様からきているのではないかなぁとのことです。

(1−B)ラージスポットボルネオプレコは、学名がGastromyzon scitulusです。scitulusというのは、”美しい”という意味で、これも、背鰭の模様が規則的に並んでいるから?かもしれません。こちらは新種だそうですが、新しく見つかったのではなく、今までに見つかっていた種類を新たに分けたということのようです。

●(2)ナローバンドボルネオプレコについて
 2種類のナローバンドボルネオプレコは両方共に、角度によって透明な尾ビレ中央が薄青白く見え、緑色っぽい体色をしていますが、細い線の模様の出かたが違っています。規則的な縞になって、細いゼブラ模様が現れるタイプ(A)と、全身に丸くない不規則な形の斑点が現れるタイプ(B)です。
 (A)をゼブラナローバンドボルネオプレコ、(B)をスターダストナローバンドボルネオプレコと、勝手に呼ぶことにしてみました。それぞれの写真が以下です。
(2−A)ゼブラナローバンドボルネオプレコ

(2−B)スターダストナローバンドボルネオプレコ

(2−A)ゼブラナローバンドボルネオプレコは、学名がGastromyzon zebrinusです。zebrinusというのは、”ゼブラ模様(縞々)”という意味です。

(2−B)スターダストナローバンドボルネオプレコは、学名がGastromyzon stellatusです。stellatusというのは、”星の多い”という意味です。

 両方とも、これまでは、口元の特徴から、笑い顔(ridens)ということで、Gastromyzon ridensグループとして、まとめられていることが多かったそうですが、2006年にzebrinusとstellatusという風に分けて、新種として加えられたそうです。

●(3)ブロードバンドボルネオプレコについて
 2種類のブロードバンドボルネオプレコは、バンドの数や側面からの模様などが主に違います。背中に滲んだ薄黄色の帯状の模様(3本)があり、横から見ると斑点を取り巻く模様が目玉のように見え(るような気がする)、尾ビレが赤みがかった透明になっているタイプ(A)と、背中にくっきりした薄黄色の帯状の模様(4〜5本)があり、体側は点々模様のみのタイプ(B)です。
 (A)をアイスポットブロードバンドボルネオプレコ、(B)をスポッテッドブロードバンドボルネオプレコと、勝手に呼ぶことにしてみました。それぞれの写真が以下です。
(3−A)アイスポットブロードバンドボルネオプレコ

(3−B)スポッテッドブロードバンドボルネオプレコ

(3−A)アイスポットブロードバンドボルネオプレコは、学名がGastromyzon ocellatusです。ocellatusというのは、”目玉模様の”という意味です。2004年に新種として選別されたそうです。

(3−B)スポッテッドブロードバンドボルネオプレコは、学名がGastromyzon farragusです。farragusというのは、”混じった”という意味じゃないかなと思われます。2006年に新種として選別されたそうです。
 上記(3−B)スポッテッドブロードバンドボルネオプレコ(Gastromyzon farragus)としている写真ですが、これに関しては、おでっせいさんが、本当にGastromyzon farragusであるのかどうかは、すこし微妙なところであるとおっしゃっておりましたので、参考までに。


■生息地域などのお話
 ここまでで紹介した6種のボルネオプレコですが、日本では、全部一緒に売られていることがほとんどなのではないかなぁと思います。私も分けて売られているのは、今までに見たことが無いです。
 そのような売り方になるというか、分けられずに入ってくる理由として、生息地がかなり似通っているからではないか?と思われます。
 この6種は、いずれもマレーシア領ボルネオ島のサラワク州の大都市クチンの南方、インドネシアとの国境付近の山岳地帯を流れる渓流に生息しているとのことでした。地図で見ると、このあたり(Google マップ)だそうです。
 全部が同じ川にいるわけではないのかもしれませんので、混じり方などが採取した川によって変わってくるのではないかと思われます。
 そういうことを考えつつ、ボルネオプレコの販売水槽を見てみるのも楽しいものですね。

■最後に
 ということで、ボルネオプレコの分類のお話でした。日本では1種類とされて、何気なく売られている魚でも、細かく観察したり、調べていくと、これだけのバリエーションが見つかって、いろいろな違いを発見することができるのは、とても面白いです。ボルネオ島に行ってみたくなりますね。また、ボルネオプレコに限らず、他の魚でもこういうことはきっとたくさんあるのだと思いますので、調べてみるといろいろな発見がありそうです。
 
 今回は、私が勝手に名前をつけたりしていますが、分類するのに都合が良くなるようにということと、せっかくだから格好いい名前を付けたいという気持ちでつけました。こんな名前で売られていることは無いですので、くれぐれもお店に行って、この名前で注文を出したり、他のサイトで何の前提もなしに、お話し始めちゃったりしないでくださいね。あくまでも、このサイト内用の(しかも暫定的な)名前ですので。

 そして、おでっせいさんにたくさんの情報とお写真の提供を頂いたおかげでこのコンテンツができております。ありがとうございます。

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