猫でもわかる信頼性のお話

 今回は全く読んでもらえないような気がするんです。数学のお話だからです。これだけで、拒絶反応を起された方もおられるような気がしますが…。でも、小学生の方も来られるサイトですので、それでもわかっていただけるように説明しようと思っています。もしも興味がありましたら読んでみてください。
 内容としては、水槽の設備などを決めるときに一つの手がかりとなるようなお話です。水槽の設備はいろいろとあるわけでして、それをどのように組み合わせるかとか、何を買ってくるのかとか、結構悩む部分ですから、それを解消するときの一つの判断基準としての、”信頼性”ということに関するお話です。

 ちなみに、以下のお話は分野で言うと、数学の確率のことになります。その道のプロの方にはかないませんのでお手柔らかにお願いしますね(^^;。もちろん、そういう方からの詳しいご意見も他のご意見と同様に寄せていただけると嬉しいです。

※今回は水槽設備の選び方について、信頼性という観点から話を進めました。ですので、それ以外の見方(例えば利便性とか、費用とか、スペースの問題とか…)については基本的に考慮していませんので、この話の内容だけで全て決まるというわけでないことは、わかってくださいね。


■何の話をしましょうか?

 上の説明を読んだだけではちんぷんかんぷんだと思いますので、もう少し具体的に何をするのか書きます。
 例えば、水槽にヒーターを入れます。ヒーターが壊れて水温が下がってしまう事故はよくあるので、二つ入れることにしました。そうしたら、水温が下がってしまう事故は減らせますね。でも、今度はサーモが壊れて水温が上がってしまう事故がおきやすくなります。さて、じゃあヒーターは何本入れるのが一番安全でしょうか?というようなお話です。
 なんとなく、イメージ湧きましたか? こういうお話はもともと、壊れてもらっては困るようなものを作るときによく話題に上ります。身近なものでしたら、銀行や郵便局にあるATM、皆さん使いますよね。あのお金を管理しているコンピュータなんかはそうです。じゃないと、銀行って信用できなくなっちゃいますね。いつのまにか自分の貯金が増えていたらラッキーですが、減っていたらかなり辛いものがあります。ですので、そういうことのないようにとにかく絶対に壊れないこと、壊れてもお客さんに影響が出ないことを優先して作ってあります(のはず…)。
 それと同じように、水槽での最優先は、魚たちが死なないことです。でも、水槽器具は残念ながら結構壊れるんですよね。ですので、壊れても魚への影響が少ないことを目指してみたいと思います。そのための事故に強い器具選びと組み合わせをどのようにすると良いのかを、具体的に考えてみることにします。


■ヒーターをいくつつけたら一番安全?

 器具が壊れることによる水槽全滅の一番の原因は、ヒーターが温まらなくなったり、逆に温度が上がりすぎてもヒーターが止まらなかったりすることだと思います。濾過器やエアレーションが壊れても数日なら生きていることは多いですが、ヒーターやサーモが壊れて数日間生き長らえるのはなかなか難しいものがあります。ですのでこのあたりをまずは考えてみることにします(このお話は、浅知恵袋のもっと安全にヒーターをで、以前紹介したものを単純に書き直したものですので、わかる方はそちらもどうぞ)。

●単純にヒーターとサーモのお話

 今、仮に水槽にヒーター(A)を入れます。これがある日、5割の確率で壊れるとします。実際に、毎日壊れるかどうか五分五分なんてヒーターがあったらとても使えないですが、とりあえず話を簡単にするためにそうしておきます。またサーモの話はちょっと置いておきます。
 一台しかヒーターが入っていなので、この水槽はヒーター(A)が壊れたら、水温が下がってそれでおしまいです。つまり、5割の確率で魚が死んでしまいます。それを下の表のようにしてみます。
ヒーター(A)正常 ヒーター(A)破損
魚は元気 魚は…
 青(魚が元気)赤(魚が死んでしまう)の面積が半々ですので、当たり前ですが、半分の確率で水槽の温度が下がってしまうことがわかります。
 この状態、かなり辛いのでもう少し何とかしたいんですね。どうするかというと、もう一つ、ヒーター(B)を追加します(これも5割の確率で壊れますが…(^^;)。するとどうなるでしょうか? この場合でも、器具としては両方とも5割の確率で壊れるんですが、魚に影響するのは、両方とも同時に壊れた場合のみです。つまり、片方が壊れても大丈夫なんですね。表にするとこんな感じです。
  ヒーター(A)正常 ヒーター(A)破損
ヒーター(B)正常 魚は元気 魚は元気
ヒーター(B)破損 魚は元気 魚は…
青い面積が全体の4分の3になりました。つまり、魚は7割5分の確率で生き残るわけです。さっきの5割に比べたら、本当に嬉しいことですね。さらにヒーター(C)を導入してみましょう。A、B、Cの全てが壊れたときだけ、水温が下がってしまいます。
  ヒーター(A)正常 ヒーター(A)破損
ヒーター(B)正常 ヒーター(C)正常 魚は元気 魚は元気
ヒーター(B)正常 ヒーター(C)破損 魚は元気 魚は元気
ヒーター(B)破損 ヒーター(C)正常 魚は元気 魚は元気
ヒーター(B)破損 ヒーター(C)破損 魚は元気 魚は…
青い面積が全体の8分の7になりました。つまり、魚は8割7分5厘の確率で生き残ります。先ほどよりも確率は上がりました。こう考えますと、ヒーターを増やせば増やすほど、青い面積は増えますので、ヒーターの破損による温度低下を防ぐにはヒーターの数を増やすのが有効ということになります。こうなると、ヒーターをいっぱいつけたくなるんですね。でも、そうは行かないのが、難しいところです。ここで、先ほど除外したサーモの登場です。
 サーモが壊れるとどうなるか?ということですが、二つの事が起こります。一つはヒーターが壊れたのと同じように、温度が上がらなくなる(ヒーターに通電しなくなる)こと。もう一つは、逆に温度が上がりっぱなしになる(ヒーターに通電しっぱなしになる)ことです。ここでサーモ(A)が壊れる確率も5割にしてみましょう。もう少し話を簡単にして、壊れたら温度が上がりっぱなしになることにしてみます。それを表にしますと、
サーモ(A)正常 サーモ(A)破損
魚は元気 魚は…
という感じで、面積は半々ですので、半分の確率で、サーモ(A)は壊れ、水槽の温度が上がってしまい、煮魚にしてしまいます。さすがにそれは嫌なので、ヒーターのときと同様に、サーモ(B)を増設してみましょう。そうするとどうなるでしょうか?
  サーモ(A)正常 サーモ(A)破損
サーモ(B)正常 魚は元気 魚は…
サーモ(B)破損 魚は… 魚は…
この色合いはかなりまずいですね。2割5分の確率でしか、魚が生き残らなくなりました。同様にサーモを3台にすると、1割2分5厘しか、生き残らなくなります。サーモは1台でも壊れると水槽の温度を上げてしまいますから、数を増やせば増やすほど、逆効果になるんですね。つまりサーモは台数を多くしてはいけないということになります。ただし、今回はサーモが壊れて通電しっぱなしになる場合のみを考えました。ですが、サーモが壊れて通電がストップすることもあると考えられます。その場合には、上記のヒーターのときと同様に考えられますので、サーモも数が多い方がよいということになると思います。
 サーモが壊れる場合、通電しっぱなしになるほうが多いのか、通電がストップする場合が多いのかはわかりませんので、とりあえず、どちらも同程度の確率と考えると、最終的に、サーモの数は多くても少なくても関係ないということになります。

 こうなるとヒーターは台数を増やし、サーモも台数は気にしなくていいということなので、サーモとヒーターのセットをいっぱいつければいいということになりそうですが、そういうわけには行かないのが辛いところです。
 水槽の温度が下がった場合、魚に影響はありますが、部屋が暖かかったり、低温に強い魚だったりすると、影響が少ない場合が多いです。それに比べて、水槽の温度が上がって30度を大きく超えるような場合、魚は生きていられないことが多いです。私の経験上、温度上昇のほうが危険な場合が多いと思います。ですので、壊れたときの被害を考えると、サーモはなるべく減らしたいということになり、サーモとヒーターを1セットにしておくのが最良だな、なんて思うのですが…(ごめんなさい、まだあるんです(^^;)。
 ですが、今回の例では、サーモもヒーターも壊れる確率は同じにして考えていますが、実際に使っていてどちらが良く壊れるかを考えてみると、サーモよりもヒーターが壊れる場合の方が圧倒的に多いように思います。それを考えると、サーモとヒーターで2、3セットというあたりが、水槽ではもっとも信頼性の高い選択と思います。もちろんもっと安全にヒーターをで書いたようなオートヒーターなどを使った複雑な工夫をすればまた別の答えが出てきます。

●気温と加温器具(ヒーター&サーモ)のお話
 ヒーターとサーモの話をもう少し別の方向から見てみたいと思います。普通、60センチ水槽には150〜200Wのヒーターを使うことが多いですが、これが大体決まっている理由は、水槽を設置している場所がかなり寒くなっても、常に通電状態になれば、最低でも25度くらいを保つことができるヒーターであるから、ということです。逆にいいますと、50Wのヒーター一つでは、部屋が寒くなったときに60センチ水槽を25度に上げることができなくなるであろうことを指しています。これをもとに、信頼性を考えてみます。
 仮に、部屋の気温が0度とします。水槽にヒーターをつけずに放って置くと水温も0度になってしまいますので大変です。ここに200Wのヒーターとサーモを1セットつけて、ヒーターが半分の時間だけ通電するとその水槽は水温が24度になると仮定しましょう。ヒーター&サーモが故障して、通電しなくなり、水温が下がる(0度)場合と、常に通電して、温度が異常に上がる場合(半分の時間で24度なので、倍でとりあえず48度としてみます)、正常に動く場合の確率がそれぞれ3分の1ずつだとしますと、
正常動作 故障(水温下) 故障(水温上)
24度(魚は元気) 0度(魚は…) 48度(魚は…)
ということで、3分の1の確率で魚を飼えるということになります。でも、これだとやっぱり嫌なので、ちょっと工夫してみます。同じ200Wを2つに分けてみましょう。つまり100Wのヒーター&サーモを2セットということです。それぞれセットAとセットBとしてみます。これも上と同じように、正常動作、故障による温度上昇、故障による温度下降はそれぞれ3分の1ずつです。そうするとどうなるでしょうか。表にしてみます。
  セットA正常(温度正常) セットA故障(温度下) セットA故障(温度上)
セットB正常(温度正常) 24度(魚は元気) 24度(魚は元気) 24度(魚は元気)
セットB故障(温度下) 24度(魚は元気) 0度(魚は…) 24度(魚は元気)
セットB故障(温度上) 24度(魚は元気) 24度(魚は元気) 48度(魚は…)
両方とも正常ならもちろん24度ですし、両方とも故障でヒーターに通電しなくなれば水温は0度、両方とも通電しっぱなしになると水温は48度になります。ここで面白いのが、片方が正常で、片方が故障して通電しない場合です。片方が正常ですと、100Wしかないですがそれでも常に通電すれば24度を保てますので、結果として魚は死なないです。また、このとき正常な方は、常に通電するように壊れている場合と同じ動作をしていますので、実は二つのセットが、両方故障したとしても、通電しないのと、通電しっぱなしになるように壊れた場合には、水温を保てるということになります。こうすると、9分の7の確率で魚を飼うことができるようになります。
 ただし、これは気温が0度の場合です。もしも気温が20度だったらどうなるでしょうか?上の二つの表を書き直してみます。

(1)1セットの場合
正常動作 故障(水温下) 故障(水温上)
24度(魚は元気) 20度(魚は何とか飼える) 68度(魚は…)
3分の2の確率で魚が飼える。

(2)2セットの場合
  セットA正常(温度正常) セットA故障(温度下) セットA故障(温度上)
セットB正常(温度正常) 24度(魚は元気) 24度(魚は元気) 44度(魚は…)
セットB故障(温度下) 24度(魚は元気) 20度(魚は何とか飼える) 44度(魚は…)
セットB故障(温度上) 44度(魚は…) 44度(魚は…) 48度(魚は…)
9分の4の確率で魚が飼える。

という感じになります。気温が高いために、ヒーターに通電しないように壊れてもなんとか魚は助かるようになりますが、その代わりに、故障による温度上昇では魚が助からなくなっております。
 以上二つの気温の状態から、気温が低い場合、ヒーターとサーモのセットを増やし、逆に気温が高い場合、セットを減らすのが信頼性を高める方法だということがわかります。暑い地域で夏にヒーターをつけない理由はヒーターを痛めないためだとか言われておりますが、故障による温度上昇をさせないことも大きな理由になると思います。

●水槽の外のヒーターのお話
 オーバーフローの濾過器をお持ちの方はやられている方も多いですし、外部濾過器用で、ホースに接続する形のヒーターも市販されています。そういう、水槽の外のヒーターに関するお話です。これも数値で考えてみます。
 またまたヒーター&サーモが壊れる確率を仮に5割としましょう。今度は濾過器が壊れたり、ゴミが詰まって水流がなくなる確率を全部含めてこれも5割にしてみます。そのとき、この水槽の水温がしっかりと保たれる確率はどのくらいになるでしょうか。水槽の中にヒーターとサーモがある場合と比較してみます。

(1)水槽の外にヒーター&サーモがある場合
  ヒーター&サーモ正常 ヒーター&サーモ破損
濾過器正常 魚は元気 魚は…
濾過器破損 魚は… 魚は…
4分の1の確率で魚が飼える

(2)水槽の中にヒーター&サーモがある場合
ヒーター&サーモ正常 ヒーター&サーモ破損
魚は元気 魚は…
2分の1の確率で魚が飼える

という感じでして、水槽の外にヒーターがある場合、濾過器もヒーター&サーモも、両方とも正常に動作しなければ、魚は飼育できなくなります。どちらか片方が壊れても、ダメということですね。水槽の中にヒーターがある場合、濾過器が動かないと、水流がなくなりますから、温度むらなどはできそうですが、ヒーター&サーモが動いている限り、致命的なことにはならないということがわかります。つまり、故障に対する強さの面から考えた場合には、水槽の中に濾過器を設置する方が、安全ということがいえます。もちろん、水槽の中にヒーターがなければ、魚がやけどすることもないでしょうし、見た目がいいなど、利点はたくさんありますので、これで、一概に、水槽の外にヒーターがあることがよくないわけではありませんので、その点だけは誤解なさらないでくださいね。

●ヒーターのまとめ
(1)ヒーターは数が多いほど安全、サーモは数が少ないほど(実際の飼育環境での被害を考えると)安全といえそうです。
(2)水槽の周りの気温が低いほど、小さいワット数のヒーターとサーモのセットをたくさんつけるほうが安全、気温が高いほど、セットを減らす方が安全といえそうです。
(3)水槽システム全体としての安全性を第一に考えるなら、水槽の外にヒーターをつけるよりも、水槽の中にヒーターをつけるほうが安全といえそうです。


■濾過器はどうつけたらいいんでしょう?

 ヒーターと並んで、水槽の生命維持の大役を担っているのが濾過器です。濾過器なしでも飼育できる方もいらっしゃるので、無しという選択肢もありますが、とりあえずかなりの数の方が濾過器に頼った飼育をしておりますので、そういう観点から考えてみたいと思います。
 まず、濾過器の特徴として、壊れても、ただ単に役割を果たさなくなるというだけの話で、サーモの故障によるヒーターの温度上昇のように、更なる悪さはしないということがあげられます。ですから、ヒーターが壊れる場合と同じように、とにかくたくさんついているほうが良いのは、すぐにわかります。1つよりも2つ、2つよりも3つのほうが、濾過システムの安全性は保たれます。ですが、大金持ちではない猫丸などは、一つの水槽に濾過器を3つも4つもつけていられないというのが現状ですし、それが普通の飼育方法だと思います。例えば、外部濾過器を二つつけるときに、どうやってつけるのがいいのか?とか、底面濾過と外掛けや上部濾過を接続するような使い方はどうなのか?とか、そういうお話です。

●2台の外部濾過器はどうつなぐ?

 例を出して少し簡単に書きますが、外部濾過器が1台あったとします。この水槽、何となく魚の調子も悪いので、もう一台外部濾過器をつけようかなと、思っているとしましょう。そのときにどうやって水槽に新しい濾過器をつけますか?
 普通に考えると、方法は二つ浮かんできます。
 一つは今までの濾過器とは全く別に設置することです。水槽からは両方の濾過器のホース(合計4本)が出ることになります(並列接続)。もう一つは、今までの濾過器のホースのどちらかに新しい濾過器をつないで、一本にしてしまうという方法です(直列接続)。そうすると水槽から出るホースは2本でよいことになります。
 そして、濾過層の容量も同じ、とりあえず、濾過能力も同じとしておきましょう。その場合どちらの方が信頼性が高いのかということを考えてみます。
 初めからある濾過器を濾過器A、新しく買った濾過器を濾過器Bとします。両方とも、壊れて動かなくなったり、ゴミが詰まって水が流れなくなる確率を5割としましょう。

(1)濾過器を別々に設置した場合(並列接続)
  濾過器A正常 濾過器A停止
濾過器B正常 魚は元気 魚はまあ元気
濾過器B停止 魚はまあ元気 魚は辛い
4分の1の確率で魚が辛い

(2)濾過器を1本につないだ場合(直列接続)
  濾過器A正常 濾過器A停止
濾過器B正常 魚は元気 魚は辛い
濾過器B停止 魚は辛い 魚は辛い
4分の3の確率で魚が辛い

ということで、濾過器を別々に設置すると、片方が止まってしまっても、もう片方が動いていますから、最高とはいえないまでも半分くらいは濾過が働くわけです。濾過器を1本につないでしまうと、片方が詰まった場合、もう片方も水が流れなくなりますから、片方がダメになっただけで、全部の濾過器が機能しなくなる可能性があります。これは外部濾過器用に売られているサブフィルターの場合でも同様です。
 ということで、安全面からいうと、濾過器は接続せずに独立して動かすのがより良いといえると思います。

●底面濾過器と外掛け(上部、外部)直結濾過器って?

 安価にかなり高い濾過能力を得られる方法として、底面濾過器と、(外掛け、上部、外部)濾過器を直結して使用するというお話を聞きます。これに関してですが、上記の外部濾過器の場合と同様に、直列接続ですから、どちらかの濾過器が詰まるとか、壊れたりして、水流が止まった時点で両方とも機能しなくなりますので、安全性の面から言いますと、それぞれを独立して動かした方が良いという結論になります。

●濾過器についてまとめ
 濾過器は信頼性の面から考えると、並列に使うのが良いと思われます。また、増やせば増やすほど効果的ですので、スペースに余裕があり、水流などの問題が発生しなければ、たくさんつけたほうが良いと思います。また濾過能力が同じなら、大きな濾過器1台よりも、小さな濾過器数台のほうが安心して使えることになります。
 ですが、このような結論を書きますと、濾過器を直列につなぐことはあまり勧められないように見えますが、世の水槽では良くやられている手法だと思います。それはなぜかということですが、外部濾過器に関しては、水槽から出すホースが2本でいいので、ホースの取りまわしが楽なこと、サブフィルターならモーターのついた外部濾過器を買うよりも安いこと、二台の濾過器では水流が強すぎる場合があること、などがあげられると思います。底面と外掛けなどの直結の場合ですが、これは安全性よりもコストパフォーマンスを重視している濾過システムだということ、動いているときにはエアリフト型の底面濾過よりもたくさんの水を流せるので、全体としての濾過能力を向上できる(かもしれない)というメリットがあると思います。
 それと、どちらにも言えることですが、定期的にメンテナンスをしたり、濾過器自体が良くできているために、濾過器が詰まるとか、動かなくなるというトラブルはそれほど起こらないという実績があるためと思われます。
 あくまでも信頼性をあげるためには、多くの濾過器を並列してつけるのが良いということです。

※今回のこの記事で、私が外部濾過器の直結とか、底面と外掛けなどの直結という濾過方法を否定しているわけではないということはご理解ください。あくまでも信頼性の面からのみの検証ですので、その他、コスト、濾過能力などを含めた総合的な評価ではありません。


■蛍光灯を買うのに迷ったら?

 蛍光灯のお話です。魚中心の方にはあまり興味のないことかもしれませんが、器具選びのお話なので、最後に書きたいと思います。水草水槽をされている方にはおなじみと思いますが、水槽用蛍光灯は60センチ水槽の場合、4種類あります。1灯式〜4灯式までです。普通、1灯式と2灯式の蛍光灯は水槽の上部の半分の場所を取ります。3灯式と4灯式は全体を覆う形になります。ですので、選び方としては必然的に上部濾過器を使った場合には、1灯式か2灯式、使わない場合には1〜4灯式まで置けることになります。この前提で、それぞれどうやって選ぶと、蛍光灯がつかない状態になりにくいのかを考えてみたいと思います。

●上部濾過器がある場合
 この場合には水槽の上部の半分を占有されますので、残りの半分に置くことになります。すると、1灯式か2灯式のライトを選ぶことになりますが、光量が欲しい場合には、迷わず2灯式を買うと思いますし、いらない場合には1灯式ですから、あまり信頼性の面から考えるということは無いと思います。でもあえて考えるなら、こういう考え方ができます。
 蛍光灯は本体と蛍光管からできています。それを別々に考えるとして、壊れる確率を設定します。本体が壊れる確率を5割、蛍光管が切れる確率も5割にしましょう。そうすると、1灯式と2灯式では下のような表になります。

(1)1灯式の場合
  本体正常 本体故障
蛍光管正常 1灯点灯 真っ暗
蛍光管切れ 真っ暗 真っ暗
4分の3の確率で真っ暗

(2)2灯式の場合
    本体正常 本体故障
蛍光管A正常 蛍光管B正常 2灯点灯 真っ暗
蛍光管A切れ 蛍光管B正常 1灯点灯 真っ暗
蛍光管A正常 蛍光管B切れ 1灯点灯 真っ暗
蛍光管A切れ 蛍光管B切れ 真っ暗 真っ暗
8分の5の確率で真っ暗

 とりあえず、1灯でもついていればいいということでしたら、2灯式のほうが確率は高くなります。ですが、蛍光灯を選ぶ場合には、2灯式なら2灯全部がついていることを前提とした水草などを植えていると思われます。2灯式で2灯ともついている確率は、1灯式で1灯がついている確率よりも低くなりますので、そういう意味で、条件を満たしつづけることを考えると、1灯式のほうが良いということになります。ただ、蛍光灯の場合、普通は大は小を兼ねるので、これはあまり比較としては意味があるとは思えません。軽く流してくださいね。蛍光灯の性質として、本体が壊れると、蛍光管が切れていなくても、全てつかなくなるということだけ、覚えて置いてくださればと思います。

●上部濾過器がない場合

 上部濾過器を外部濾過器にして、水槽の上部を全て空けて、蛍光灯を載せるというのは、水草水槽をやられている方の常道のような気がしますが、その場合に4灯にすることを考えてみます。
 そのとき、4灯が一体型になっている4灯式の蛍光灯を買うのか、2灯式を2つ買うのか、どちらがいいのか、考えてみます。また前と同じですが、蛍光灯本体が壊れる確率を5割、蛍光管が個々に切れる確率も5割にして表を作ってみます。でも、この表、あまりにも項目が多すぎてちょっとわかりませんので、下のほうに結果をまとめた表を作りました。面倒に思われる方は、そちらを見ていただいたほうが早いと思います。

(1)4灯式の場合
(四本の蛍光管をA〜Dとした)
蛍光管 本体正常 本体故障
A正常 B正常 C正常 D正常 4灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C正常 D正常 3灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C正常 D正常 3灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C正常 D正常 2灯点灯 真っ暗
A正常 B正常 C切れ D正常 3灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C切れ D正常 2灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C切れ D正常 2灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C切れ D正常 2灯点灯 真っ暗
A正常 B正常 C正常 D切れ 3灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C正常 D切れ 2灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C正常 D切れ 2灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C正常 D切れ 2灯点灯 真っ暗
A正常 B正常 C切れ D切れ 2灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C切れ D切れ 2灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C切れ D切れ 1灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C切れ D切れ 真っ暗 真っ暗
32分の17の確率で真っ暗

(2)2灯式×2の場合
(本体1の蛍光管をAとB、本体2の蛍光管をCとDとした)
蛍光管 本体1正常 本体1故障 本体1正常 本体1故障
本体2正常 本体2正常 本体2故障 本体2故障
A正常 B正常 C正常 D正常 4灯点灯 2灯点灯 2灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C正常 D正常 3灯点灯 2灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C正常 D正常 3灯点灯 2灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C正常 D正常 2灯点灯 2灯点灯 真っ暗 真っ暗
A正常 B正常 C切れ D正常 3灯点灯 1灯点灯 2灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C切れ D正常 2灯点灯 1灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C切れ D正常 2灯点灯 1灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C切れ D正常 2灯点灯 1灯点灯 真っ暗 真っ暗
A正常 B正常 C正常 D切れ 3灯点灯 1灯点灯 2灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C正常 D切れ 2灯点灯 1灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C正常 D切れ 2灯点灯 1灯点灯 1灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C正常 D切れ 2灯点灯 1灯点灯 真っ暗 真っ暗
A正常 B正常 C切れ D切れ 2灯点灯 真っ暗 2灯点灯 真っ暗
A切れ B正常 C切れ D切れ 2灯点灯 真っ暗 1灯点灯 真っ暗
A正常 B切れ C切れ D切れ 1灯点灯 真っ暗 1灯点灯 真っ暗
A切れ B切れ C切れ D切れ 真っ暗 真っ暗 真っ暗 真っ暗
64分の25の確率で真っ暗

表を作ってみたものの、これではわけがわかりませんので、まとめますと…
(1)4灯式の場合
4灯全部つく確率 0.031
3灯つく確率 0.125
2灯つく確率 0.281
1灯つく確率 0.031
真っ暗な確率 0.531
(2)2灯式×2の場合
4灯全部つく確率 0.016
3灯つく確率 0.063
2灯つく確率 0.266
1灯つく確率 0.266
真っ暗な確率 0.390
こんな感じになりまして、これを見ると、4灯全部つけるには4灯式のほうが2倍ほど安全という事がわかります。ただし逆に全部消えて真っ暗になってしまう確率は、4灯式のほうが高く、2灯式×2のほうが安全です。
 このことから、4灯全部をしっかりつけていたければ、4灯式、とりあえず真っ暗になるのを回避したければ、2灯式×2というのが、良いように思います。
 でも実際には蛍光管も蛍光灯の本体も、そう簡単に切れたり壊れるわけではないですから、4灯つく確率が低いなぁなんて心配することは無いと思います。また、4灯式のほうが信頼性は高いですが、2灯式ですと片方が壊れたら片方だけ買い換えるとか、片方だけ持ち上げて餌をやるとか、利便性は高いと思います。ですので、これだけではなく、総合的な判断が必要だと思います。

●蛍光灯についてまとめ
(1)何灯ついていればよいのかということで考え方は変わりますが、ついていて欲しい数の蛍光灯が全てついている確率を上げるには、蛍光管の数が少ないほうが良いと思われます。ですが、もともと欲しい蛍光灯の数は信頼性から決まるものではないですので、これは参考ということで。
(2)多くの蛍光灯をつける場合には、一体型のほうが全部点灯している可能性は高くなります。また少なくとも1灯だけでもついていればいいということであれば、少ない蛍光管の蛍光灯を複数設置するのが良いです。

※この選び方はあくまでも信頼性という面から見た場合ですので、その他のいろいろな都合を考えて決めるべきものだと思います。


■最後に

 説明の中に難しいお話なども出てきたので、少しわかりにくかったかも知れませんね。なんとか数値を少なくして、表で説明してみましたが、いかがでしょうか?わかっていただければ嬉しいです。また説明の中では、壊れる確率がかなり高く設定されています。こんなに壊れたら、たまったものではないですね(笑) ですので、これを見て、「飼育器具ってこんなに簡単に壊れるんだ…」とか思わないでください。普通に使っていれば、そうそう壊れるものではありませんので。あくまでも仮定に基づいた計算ですので、傾向を読み取っていただければ嬉しいです。
 少しでも皆さんの器具選び、セッティングの参考になれば幸いです。


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