シルバー・シャーク

 シルバーシャークです。アクアリストの間では一般種ですが、世間での認知度はかなり低いようです。私も熱帯魚を始めるまでは知らなかった魚です。一般種とはいえ、どこの店にもいるということではないようです。ネオンテトラやヘテロモルファほど需要が多くないのでしょうか。大きくなることと、シャークという少し凶暴なイメージの名前が超人気種にはなれない理由なのかもしれません。ちなみに、海外では”BalaShark”とも呼ばれているようですね。
 とにかく、銀鱗が輝くシャープな体つきと機敏な泳ぎ、ピンと張った各ヒレの美しさと対照的なボーっとした顔が魅力的なお魚です。とにかく丈夫で、病気知らず、その上、性格が穏和(大きくなるとちょっときつめ)で、混泳もそんなに問題は起こさず、餌も何でも食べるため、広い場所を用意してあげられるなら、飼いやすい魚ではないでしょうか。

【通称】 SilverShark(シルバー・シャーク)
【学名】

Balantiocheilus melanopterus

【分布】 タイ、インドネシア、マレーシア
【体長】 30cm(飼育下では水槽に応じて(15〜20cm))
【水温】 22〜28度
【水質】 中性から弱酸性


■シルバーシャークについて
 名前の由来ですが、見た目通りです。銀色のサメ。まさにその名にふさわしい形をしています。が、顔だけは、コイそのものといった感じで、のぼーんとしているので、シャークとは思えません。別名のbalaという名前ですが、これに関してはよくわかりません。英語の辞書には載っていませんし。調べが付いたら追記します。
 学名のBalantiocheilus(バランティオケイルス?)というのはシルバーシャークの属(バランティオケイルス属)を示しています。同じ属の魚を探すことは出来ませんでした。もしかして、1属、1種なのかな?なんて思っていますが、詳細は不明です。
 東南アジアに広く分布しているという話もありますが、メインはタイ、インドネシア、マレーシアのようです。とはいえ、輸入されてくるほとんどが養殖個体とのことですので、実際には故郷を知らないシルバーシャークも多いようです。
 水温、水質共に多数の淡水熱帯魚の飼育環境と一致しますので、水質面では混泳に問題はないでしょう。水質に関してはかなり適応能力があるようで、多少の変動でも調子を落とさずに居ることが多いようです。
 性格はおしなべて穏和ですが、個体差があったり、大きくなると変わってきたりするので、その辺りは気を付けて飼育する必要があります。
 餌は生き餌から人工餌(フレークはもとより、コリタブでも食べます)まで問題なく餌付くと思いますので、飼いやすいでしょう。


■シルバーシャークについて、もう少し詳しく

 シルバーシャークはコイ目、コイ科、コイ亜科、バランティオケイルス属の魚です。コイ目はコイの仲間です。顔を見るとコイそのものですので、違和感はないですが、体つきが日本のコイっぽくないですね。コイ科でコイ亜科なので、まっとうなコイです(笑)。コイ亜科にはコイ属、フナ属などのおなじみの魚が属しております。コイの仲間は主にアジア中心に分布していまして、日本人にもなじみ深い魚ではないでしょうか。お堀のコイもこの仲間、川や池のフナもこの仲間ですから、身近な存在ですね。日本にコイ料理があるように、原産地では大きくなったシルバーシャークを食用にしているようです。


■シルバーシャークの魅力
 まずは見た目の格好良さです。流線型の美しいフォルムに、すっと伸びたヒレ。ヒレの先に黒いストライプが入って、さらに鋭敏さを引き立てています。銀色に光り輝く鱗はとても美しく、光の加減で色が変わって見えます。シャークという名が付くだけのことはある堂々として、シャープな姿です。ですが、その中にあって顔だけはコイそのもの。大きくくりくりとした目に、あまり鋭くない口、おっとりした顔つきで、体とのギャップか楽しいですね。たまに口を前に伸ばしてあくびをするところなどは見ていて笑えます。あとは、泳ぎ方にも特徴があります。まずはその強力な尾ヒレでの高速移動です。かなりの遊泳力があり、水槽を所狭しと泳ぎ回ります。とおもうと、一カ所にとどまって、胸ヒレで水を掻きながらホバリングしたり、頭をぶるぶると振ったりと、ユーモラスな仕草も見せてくれます。
 稚魚が500円程度と、そんなに高価ではありませんし、活発なので存在感があり、水槽に1匹だけで入れても見栄えがします。私の水槽では一番目立つので、その格好の良いフォルムがとてもうれしいです。混泳水槽の主役として充分に見応えのある魚ではないかと思います。

■シルバーシャークの体の特徴
 体長は最大で20センチ程度(飼育下)、5センチぐらいの大きさから店頭に並んでいるようです。幼魚のうちは体の長さに比べて、比較的体高は低く顔の割合が大きいですが、成長するに従って、体高も高く顔の割合も小さくなっていきます。多少太ってきても鰭や体の端々が鋭角的なのであまり太っているという印象は受けません。体幅もそれなりにありますが、日本のコイほど幅が広いわけではありません。全身を銀色の鱗が覆っています。鰭は背中側に背鰭、腹側に胸鰭1対、腹鰭1対、尻鰭がつき、尾鰭が付いています。背鰭と腹鰭、尻鰭、尾鰭は綺麗な三角形で、縁を黒色のストライプが走っています。胸鰭は透明で細長いです。

■シルバーシャークの性別
 シルバーシャークの性別は成熟した個体同士を比較した場合、メスの方が一般に太っていて、さらに繁殖期にお腹が出てくるという事で判断できますが、成熟しない状態、もしくは繁殖期にならないと雌雄の判別は難しいようです。それと、オスの方が鱗の色が鮮やかになるという情報もありますが、それがどういう状態なのかはわかりません。

■シルバーシャークの繁殖
 シルバーシャークは卵生の魚です。海外のサイトで100ガロン以上の大きな水槽で繁殖に成功した例があるようですが、養殖場などではホルモン剤による繁殖誘引を行っているようで、水槽内で自然繁殖させるのはかなり難しいようです。ネット上でも、本でも、アマチュアの繁殖の事例を見つけることは出来ませんでした。成熟するまで大きな水槽で飼ってやる必要があるとなると、繁殖時期まで飼っている飼育者は少なくなるように思います。とても残念なことです。
 さて、ないない尽くしでもおもしろくないので、産卵した事例(水族館のお話)を一つ紹介します。メス1匹(20センチ)に対してオス2匹(18センチと15センチ)の比率で水槽に投入し、水質はほぼ中性、27度前後の水温を維持した状態でしばらく飼います。そうすると、卵を水槽の底にばらまくように産みます。数日で孵化し、水槽の中を稚魚が泳ぎ始めました。ということだそうです。
 とりあえず、個人レベルでの水槽設備で繁殖を狙うのはかなり難しいようです。

■シルバーシャークの寿命
 コイ科の仲間は長生きなのが多いのですが、大型になるとさらに長生きでして、シルバーシャークで10年は大丈夫みたいです。自然界では20年に近い個体もかなり居るようです。水槽では環境や餌などで変わってくるとは思いますが、かなりの長寿魚なので、上手く飼えば末永いおつき合いが出来そうです。

■シルバーシャークの飼い方
 シルバーシャークを飼育するのに特別な配慮は必要ありません。中性から弱酸性(弱酸性が良いようです)の水質で他の熱帯魚を飼育する場合と同じようにすれば問題ありません。遊泳力があり、体が大きくなるので、幼魚の頃は60センチ水槽で問題ないと思いますが、さすがに15センチを越えたら、90センチ以上の水槽にしてあげた方がよいと思います。性格が比較的穏和で他魚を攻撃することはあまりありませんから、多くの熱帯魚との混泳が可能だと思います。ただ、なるべくなら、シルバーシャークの2/3以上の大きさの魚との混泳のほうが望ましいと思います。
 さて、シルバーシャークを飼う上で気を付けたいことがあります。それは、このシャープなフォルムを保つことです。シルバーシャークは幼魚の頃、とても痩せた状態で売られているのをよく見かけます。腹が背中側に湾曲しているような超痩魚もしばしばです。それはとても貧相で、見ていて痛々しくなります。ですので、そういう場合は餌を多めに、アカムシなどの嗜好性の高いえさも与えて少し太らせましょう。シルバーシャークは基本的に大食いの魚なので、太らせるのは比較的楽なのですが、今度は太りすぎることがあります。多少であれば、ヒレが三角ですのでばれないのですが、それでも限度があります。太りすぎたシルバーシャークにシャークという名の面影はありません。ただの、フナになってしまいます(決してフナをバカにしているわけではないですよ)。ですので、痩せ過ぎない程度に餌を加減すると良いと思います。やはり、この格好の良いフォルムが魅力なのですから、それを維持したいものです。

■シルバーシャークの病気
 シルバーシャークは他の熱帯魚がかかる病気にはほとんどかかりますので、それらの具体的な病気については特に書きません。治療方法も特別に変わったことはないので、一般的な熱帯魚に施す治療を行えば良いと思います。とても丈夫な種類ですので病気に対する耐性も高く、薬に弱いという話も特に聞きませんので病魚薬の使用も可能です。かなり丈夫な魚なので病気にかかる頻度も他の魚よりも低いように思います。とはいえ、病気にしないことが一番ですので日頃の水質管理、環境整備には気をつけてください。また、たまに鱗が落ちることがありますが、それは自然な事でして、しばらくすると元に戻りますので気にする必要はありません。

■シルバーシャークの欠点
 最大の欠点は大きくなることでしょうか。もちろん、飼っている人間のエゴなのですが。シルバーシャークを飼うなら、最終的に最低90センチ水槽を用意する覚悟が必要です。もしくは、引き取ってくれる先を確保しましょう。ショップによっては、5センチにしかならないとか、そういう説明で売られていることもあるようです。40センチの水槽で飼っても、5センチで成長が止まることはまずあり得ないと思いますので、間違わないでください。その他には欠点らしい欠点は見あたりません。餌、性格、水質、どれも非常に飼育向きで特別な配慮は必要ありません。飼育で特に困ることはないと思います。水槽内に他のメインの魚が居るのに、シルバーシャークがその座を脅かすほどに前に出てくることはありますが、それもご愛敬と思います。長生きなので飽きるとか、そういうことも欠点といえば言えなくもないのですが、せっかく飼ったのですから、飽きたなんて言わずに愛情を持って育ててくださいね。

■シルバーシャークの仲間
 シルバーシャークの仲間を考えたときに、同じ属だと他には見つけられませんでしたし、コイ亜科で考えるとものすごい数の仲間を紹介することになりそうですのでそれはあきらめました。ということで、名前つながりで仲間を集めてみようと思います。シャークと名の付く熱帯魚を紹介します。
レッドテール・ブラックシャーク
Epalzeorhynchus bicolor
黒い体色に赤い尾ヒレが特徴的な熱帯魚。シャークと名が付いてはいますが、コイの仲間です。スタイルはシルバーシャークよりもサメ型に近いです。15センチほどにしか成長しませんが、かなり気が荒く、同種では争うこともありますので単独飼育が望ましいです。
レインボーシャーク
Epalzeorhynchus frenatus var.
体は褐色でヒレがオレンジの綺麗な魚。レッドテールブラックシャークの親戚で同じくコイの仲間です。15センチほどになりますが、こちらも少し気が荒いようです。アルビノ種は体が真っ白でヒレの色がさらに引き立ちとても美しいです。
サウスアメリカンシャーク
Arius jordani
汽水域に生息するナマズの仲間で、これも体型からシャークという名前が付いています。とはいえ、コイ科のシャークほどにサメに似ているとは思えず、ナマズ体型であることは否めません。30センチほどに育つと言われていますが、水槽飼育では20センチくらいが限界のようです。比較的おとなしく、汽水飼育が可能であれば飼うのに支障はないと思われます。
アポロシャーク
Luciosoma setigerum
銀色の体に、黒っぽい線が一本入ったコイの仲間で、20センチほどになります。シルバーシャークよりも多少細身な感じがあります。水面直下を泳ぐことが多いです。この魚も気が荒く、かなり縄張り意識が強いので混泳魚には注意が必要です。
トリカラーシャーク
Labeo variegatus
黄色の地に黒のぶちぶち模様の付いたコイの仲間。大きな背鰭が特徴的ですが、体型のどこがシャークなのか、いまいち理解に苦しみます。コリドラスと同じような低層魚です。非常に性格がきつく、飼育には注意が必要です。20センチほどに成長します。


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