猫でもわかる水槽撮影のお話 〜「撮ローチ!」奇麗にローチの写真を撮ろう!〜

 熱帯魚飼育、始めると面白いですし、何よりも魚たちが可愛らしく思えてきます。それが親バカの始まりです(笑)
 そうなると自分の水槽を誰かに見せたくなるものですね。ちょうど、誰かに自分の子供のビデオを見せたくなるのと同じです。私も自分の水槽自慢を始めたら、今までに撮りためた写真を見せつつ、きっと嫌がられるほど長く話をしてしまうと思います(^^;
 ということで、今回はそんな嫌がらせ(笑)にも使える、「水槽の写真の撮り方」のお話です。

 誰かに水槽の魅力を話すにしても、写真があれば分かりやすいですし、どうせ写真を撮るなら、やっぱり奇麗に撮りたいものです。でも、魚の写真って意外と難しいんですね。私もサイトをはじめた4年位前に、水槽写真を撮り始めたときは、今思うと、ちょっと恥ずかしい写真が多かったです。未だに、このサイト内でも、使っていたりします。例えば、この写真。



 これは、あまりにもピンぼけ&手ブレが酷いので、画像処理ソフトでボケの修正などを施した上に、思いっきり縮小して、作った写真です。ですので、これのおおもとの写真は…(^^; という感じなのですね。でも、これを撮るだけでもその頃、精一杯でした。
 それから、いろいろな方にアドバイスを頂いたり、工夫したりして、今くらいの写真が撮れるようになったというわけです。

 猫丸は、カメラは素人です。そんな私が解説するのですから、あまり期待しないでください。すごい写真の撮り方を解説できるわけではありませんので。目指すレベルとしては、私が最近サイトにアップした写真程度は撮れるように、ということで書いてみたいと思います。
 ですので、ポスターサイズに引き伸ばすとか、ポストカードに印刷するとか、そういうレベルで使うには少し物足りないかもしれません。でも、サイトで公開するとか、パソコンの画面で誰かに見せるとか、メールで送ったり、掲示板にアップして見てもらうとか、そのレベルなら何とか見られる写真を撮るということで、話を進めてみたいと思います。 つまり、今回の目的は「最低限、猫丸と同レベル。またそれより少し上くらいの写真が撮れるように頑張りましょう」という感じで行きます。

 なるべく、一般的な装備、それなりの値段でできるように考えました。ですので、特殊なことに関する説明はあまりありません。また、水槽の様子、光の状態などは、水槽ごとに違いますので、その都度ここから応用していただければということで、なるべく基礎的なことを書きたいと思います。
 それと、いつもの”猫でもわかる”シリーズは、理屈をまず書いて、最後に実践的なことを説明するパターンが多いのですが、今回は逆にします。とりあえず、写真を撮るためのテクニックを優先して、その理屈のお話は、後からくっつけるという感じにしたいと思います。

それから、いつものことですが、以下の方法を使ったとしても、確実に良い写真が撮れるわけではないですので、自己責任で試してくださいね。

 今回、このコンテンツを書くにあたって、掲示板やメールでいろいろとご助言を頂きました。それをかなり参考にさせていただいております。越後屋ポン太さん(コンテンツ内のグラフについても一部利用させていただきました)、梓尤稀さん、たま尾さん(お写真を使わせていただきました)、珊瑚さん、おでっせいさん、とらりんさん、RKOさん、ひらめさん、しゃまんさん、ナイトメさん、まこっぴさん、TAOさん、恥ずかしいので名前を出さないでほしいという条件でメールをくださった方がお二人。皆さん、メールでの詳しいご説明や、掲示板で何度も私の質問に答えてくださったりして、本当にありがとうございます。<(_ _)>

■用意するもの
 まずは準備です。この段階から、迷うことがあるんですよね。一番の難題は、カメラ選び。私もかなり頭を悩ませました(^^;

●カメラ
 やっぱり、これが無いと始まりません。でも、何を買ったら良いのか、一番悩むものでもあると思います。ここから話を進めようと思います。

 まず、大前提ですが、デジタルカメラ(デジカメ)にしましょう。というのも、素人の水槽撮影の場合、失敗写真がものすごくたくさん出てきますので、フィルムカメラを使いますと、はっきりいって、お小遣いがなくなります(笑) ですので、素直にデジカメを買いましょう。その後、もっと画質を追及したいとか、「デジタルなドットが俺には見えるんだ!」なんて顕微鏡みたいな視力をお持ちの方などは、フィルムカメラを買ってくださいね。ということで、以下の説明は全てデジタルカメラで撮ることを前提にします。また、携帯電話のカメラも最近は高性能になってきましたが、実は、猫丸の携帯、非常に古いものでして、カメラが付いてないんですよね(^^; ということで、携帯のカメラに関してもちょっと除外して考えています。

 デジカメ選びで一番最初に迷うのは、どんなカメラを購入するか?ということだと思います。私も買う時にはかなり迷いました。そのときにいろいろと考えたり、アドバイスを頂いたこと、買ってみた感想などから書きます。

 まず考えるのが、値段かと思います。基本的に高いカメラはいいカメラです(笑) また、ネットのアクア系ブログなどを拝見していましても、カメラを変えると結構わかりますよね。特に、低価格帯のコンパクトデジカメから、高価格帯の一眼レフデジカメに変えた方の写真をみせていただきますと、変化に驚かされます。やっぱり、良いカメラにすると、写りは良くなることが多いようです。使い勝手の問題などもありますが、許される限りの高いカメラを購入すれば、それだけうまく撮れる可能性が高いと思ってよいかと思います。もちろん、高いだけに高機能であり、それをきちんと使いこなすということが前提ですが。

 とはいえ、いくら大好きな魚のためとはいっても、いきなりカメラに十万円以上もかけられる方はなかなかいらっしゃらないと思います。水槽写真を趣味にするのであれば別ですが、ちょっと誰かに見せたいとか、ブログで紹介したいとか、記念に残しておきたいとか、そういう感じで考えておられる方が大部分だと思います。ですので、とりあえず、猫丸程度の写真が撮れればいいということでしたら、それほど高いカメラは要らないです
 私のデジカメで、300万画素です。今なら、2万円弱くらいで売られているコンパクトデジカメでも、500万画素程度はあると思いますし、その他の性能に関しても、おそらく私のカメラと同等以上だと思います(実際、画素数よりも他の機能のほうが重要な気がするんですが、画素数で分けて売られていることが多いですので、とりあえず)。ですので、500万画素程度の性能のカメラであれば、猫丸以上の写真は撮れると思います。ちなみに、上で紹介した初期の私の写真は、前のカメラでして、30万画素のデジカメで撮りました。さすがに、あれですとHPでも厳しいですね(^^;

 それから、カメラを選ぶときのポイントですが、まず、シャッター速度優先モードというか、スポーツモード?というのか、動きのあるものを撮るためのモードがあると便利らしいです(私のには付いていませんので使用感はわからないのですが…)。とにかく魚は動き回りますので、それをブレないように撮るには、便利だというお話を伺いました。
 それと、もう一つ。マクロモードです。接写と書いてあることもあります。これは、写したいものになるべく寄れる機能のことです。水槽の中の魚の写真をとる場合、基本的に水槽にほぼべったりとくっついて撮ることが多いです。魚まで数センチという感じですので、なるべく魚に寄ることのできるカメラのほうがいいわけです。
 ただ、マクロモードにすると撮影が少し難しくなるのですが、必要なときもあると思いますので付いていると便利だと思います(最近のデジカメは大抵、10センチ以下で接写できるものがほとんどです)。
 他にも、カメラのいろいろな値(F値、シャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランス、画像サイズ、etc :後で説明します)を自分で設定できる方が何かと有利ですが、素人(私)の場合、こういう設定は、カメラにお任せするのが一番良かったりしますので、私がカメラを購入したときには、このあたりが自分で設定できるかどうかはそれほど考えていませんでした。今、私がカメラを使っていて、たまに変えるのが、ISO感度と、ホワイトバランスです。とりあえず、私が次に買うとしたら、この2つが自分で変えられることは確認すると思います(カタログ見ましたが、最近の大抵のデジカメは変えられるようです)。
 ということで、カメラ選びに関して書き始めると、それだけですごい分量になりそうなので、このくらいにします。

 まとめますが、猫丸程度の写真を撮るということでしたら、300万画素クラス以上なら大丈夫です。またポストカードにするとか、印刷を考えても、300〜400万画素で十分(あとはプリンタの性能などにも依存しますので)だと言われています。現行のコンパクトデジカメでは、主流が500万画素以上ですので、それであれば、ほぼ大丈夫と考えてよさそうです。あとは上で説明した各種の設定を、できるだけ自分で決められることや、設定できる範囲が広く、細かいと嬉しいところです。そして、値段と相談しつつ、水槽以外の用途も考えつつ、という観点で選べば良いのではないかと思います。

●ライト
 水槽にライトがついている場合が多いかと思いますが、ライトがないとまずまともに写りませんので、ライトを載せていない場合には用意してください。後できちんと理由は説明しますが、水槽撮影の場合、とにかく水槽内を明るくすることがとても重要ですので、ライトは多いほうがいいです。水槽用のライトだけではなく、家にある電気スタンドでも、スポットライトでも、水槽内を上から照らせるライトでしたら、持ってきて使いましょう。

●三脚
 カメラを固定するものです。私もそうだったのですが、写真をとりはじめると、手ぶれするんですよね(^^; ただでさえ、動き回る魚を追うのですから、カメラまでブレてしまったら、厳しいですので、慣れないうちは三脚に固定して、その前を魚が通ったときに写すというのが良いかと思います。ただ、やっぱり魚を追いたいですので、そのときには、きちんと手ぶれしないような持ち方を勉強して、頑張りましょう。また、手ぶれ補正機能の付いたデジカメを買うのも良いかもしれません(私のカメラには付いていませんので、どの程度の効果があるものなのかは、知らないです(^^;)。
 ということで、三脚は必須ということではないですが、手ブレに自信のある方は、持っていて損はないと思います。また、きちんとした三脚ではなくても、カメラを固定できる台があればそれを使ってもいいです。

●スポンジ
 水槽の掃除用です。すでにお持ちの方も多いと思いますが、普段使っているもので十分です。
 写真を撮って、パソコンで見ていますと、水槽の汚れって意外と見えてくるものです。ですので、水槽のガラス面は、内側も外側も奇麗にしてから、撮影にのぞみたいものです。最悪の場合には、ガラス面のゴミにピントが合ってしまって、魚がうまく写らないことがありますので、意外と重要です。

●箸(なるべく長い、菜箸などがいいです)
 水草が多い水槽なんかですと、水草が流れてきて、撮りたいところを塞いでしまうことがありますので、それをどけるためのものです。私は長い箸を結構便利に使っています。というのも、手が濡れるとカメラを触れなくなりますので、手をぬらさずに水槽の中を整えることができるものがあるととても便利なんです。

●虫眼鏡
 私は100均の虫眼鏡を使っていますが、その程度で十分です。魚を大きく撮りたいときなどに、重宝しています。使い方は、ちょっと格好悪いのですが、カメラのレンズの前に虫眼鏡を置いて、それごしに撮影します。ただ単に、大きく撮れるだけなので、必須アイテムではないですが、虫眼鏡を通して撮ると、鱗の具合とかも良く見えて、なかなか面白いですよ。また、一眼レフカメラの場合には、虫眼鏡と同じような役割のレンズもあるようですので、予算があれば、それを使うのも面白いかもしれませんね。


■とりあえず、猫丸程度の写真を撮ってみる
 上の準備ができたところで、猫丸が普段やっていることというか、写真の初心者の方でもやりやすいであろう方法をまずは書いてみます。以下にポイントを箇条書きにします。全部はできないかもしれませんが、なるべくできることからやってみると、良い写真になる可能性が高くなると思います。(ちなみに、猫丸が考え出したかのごとくに説明してありますが、大抵は皆さんに教えていただいたことです。偉そうな解説でどうもすみません(^^;)

●水槽を明るくする
 私の水槽は、通常は無点灯ですが、一応蛍光灯1灯(18W)が付いていますので、それを点灯しています。ですが、これですと、写真撮影には、少し光量不足に感じますので、私の場合にはそれに加えて、100W白熱電球の電気スタンドを無理矢理水槽の上に置いてそれで照らしています。よく、学習机とかについているスポットライトっぽい電球です。そういうものが家にあれば、撮影時だけでもそれを使うと良いと思います。また、アクア用品でも、クリップライトのようなものが売っていますので、それを購入されても良いかと思います。普通、上部濾過器ですと、水槽用の蛍光灯は2灯を乗せるのが限界ですので、それを少し横にずらして、その隙間から照射できるスポットライトは結構便利です。
 とにかく、家にある照明器具を総動員して、水槽内をできる限り明るくしましょう(^^)

●ガラスを念入りに掃除する
 ガラスって結構汚れています。特に内側は本当に細かいコケとかがついていることがありますので、鑑賞面のガラスはしっかりと掃除した方が良いです。また、外側にもホコリとか、水滴が乾いた汚れなどが結構ついていますので、それも奇麗にしておくと良いです。

●他のものが写りこまないようにする
 水槽写真に、カメラを構えている自分の姿が写ってしまうことありますよね。水槽のガラス面が鏡のような役割を果たして、水槽の外側にあるものが写ってしまうんです。そういうことを写りこみと言います。私も結構あるんですよね。せっかくよいショットが撮れても、それで台無しになってしまうことがよくありまして、悔しい思いをします。ですので、それを防ぐ、もしくは軽減する方法を私なりにとっています。
 まず、部屋が明るいと、部屋の照明がガラス面に反射して写真に写り込みますので、それを防げるように部屋の照明の強さなどを工夫したほうが良いと思います。
 また、写り込みを少なくするのに、黒っぽい服を着ている方がいいです。それと、最近のカメラの外観って、やたらとカラフルですが、できる限り、黒いカメラの方が良いと思います。私のカメラ、銀色なんですが、いつもそれがガラス面に奇麗に写ってしまって本当に苦労しますので、黒にしておけばよかったと、今は後悔しています。
 それから、底物を撮影する場合、どうしてもカメラが下向きになりがちです。水槽台にきっちりと同じ寸法で水槽が置いてある場合はいいのですが、水槽台のほうが出っ張っていますと、水槽台の出っ張りが、下向きにカメラを構えたときにガラス面に反射して写りこむことがありますので、そこに黒い布を敷くなどしておくと良いかと思います。もちろんカメラを構える位置を下げてやればそれでいいのですが、魚を追うことに夢中になっていますと、なかなかそれに気がつかないんですよね(^^; ですので、水槽台の色が明るめの場合には、そこに始めから黒い布とか紙とかを置いておくと良いと思います。

●三脚など、カメラを固定できる台を使う(カメラをぶれないようにする)
 最近はやっとカメラをきちんと持てるようになって、シャッターボタンを押しても、手ぶれすることが少なくなりましたので、私はそれほど使わなくなりましたが、はじめのころ、とても重宝しました。どうしてもカメラのシャッターを押した瞬間にカメラが曲がるので、手ぶれ写真が多くて、すごく苦労した覚えがあります。ですので、腕の力が弱い方とか、うまくカメラを保持できない場合には、三脚を購入するか、きちんとした台に乗せて、動かないように固定した上でシャッターボタンを押すのが良いと思います(本当に小さいカメラの場合には別ですが、普通サイズのデジカメには、大抵、三脚を取り付ける穴がついているそうです)。
 ただ、この方法ですと、魚を追いかけて撮ることができませんので、魚の様子を観察して、どの辺りにやってくるのかを予測した上でカメラを設置して、ひたすら待つという感じの撮影になります。

●カメラの設定を決める
 私の場合ですが、マクロモードか、カメラにお任せのモードで撮ることが多いです。伺った話ではスポーツモード(シャッター速度優先)など、速い被写体を撮るためのモードがあるそうですので、そういうモードの付いているカメラの場合にはそれでも良いのだろうと思います。

●望遠はあまり使わない
 カメラを持って水槽に近づくと、魚が逃げますので、少し離れて望遠で撮りたいなぁと思うんですが、それをやりますと、大抵ブレます(^^; 私も試したんですけどね、本当にブレブレでどうにもならないです。ですので、きちんとカメラを固定できるとか、ブレない技量を持っているとか、そういうことが無い限りはあまりお勧めではないです。上手な方は、望遠でも上手に撮れるんですよね。その技量が羨ましいです。
 ちなみに、望遠を使う場合、光学ズームなら良いのですが、デジタルズームは、基本的にカメラが内部で計算して無理矢理画像を引き伸ばしているだけですので、水槽撮影の場合には、あまり意味がないかもしれません。

●ピントを合わせたまま耐える
 デジカメって、普通は、被写体に向けて、シャッターボタンを半分押してピントを合わせ、ボタンをさらに押し込んで撮影するという感じになっていますが、その半分押した状態で、魚を追いかけまして、魚がそのピントのあう範囲に入ってきた瞬間に、ボタンを押し込むという感じで撮ると良いです。また、撮りたい場所(例えば、土管の出口とか)にピントを合わせたまま(ボタンを半分押したまま)待ち伏せしまして、そこに魚が顔を出した瞬間に押すとか、そういう感じで撮影すると、結構うまく行く場合が多いです。

●魚の目を狙う
 魚の写真って、目にピントが合っていると、かなり良く見えます。他のところが多少ボケていても目がくっきりはっきりしていると、意外と格好いい写真に見えますし、失敗写真だというのがバレにくいですので不思議です(笑)。ということで、できる限り目を狙って撮ると良いのではないかと思います。

●とにかくたくさん写す
 水槽撮影の場合、狙った構図で、バッチリの瞬間を狙う!というのは、はじめは諦めた方が良いかと思います。初心者の水槽撮影は、”下手な鉄砲、数打ちゃ当たる”です。とにかく魚がカメラの前に来たらひたすらシャッターボタンをおしまくりましょう。バッテリーが尽きるまで、メモリーカードの容量が一杯になるまで、とにかく撮る、というのが、私の場合の基本的なスタンスです。

●忍耐を持つ
 魚は気まぐれです。カメラの前で止まってくれることなど、あまりありません。水槽の前にカメラを構えただけで、どこかに行ってしまう魚もかなり多いです。ですので、そこでじっとしたまま魚たちが出てくるのを待つ忍耐や、失敗写真がとにかくたくさん出てきますので、それにめげない強い心を養ってくださいね。それさえあれば、そのうち良い写真が撮れると思います。ちなみに、猫丸の場合、HPに(多少画像処理で誤魔化したりして)使える写真は、20枚に1枚程度です(これでも以前に比べるとかなり良くなりました(^^)。また、これはやった!と思える写真は、2〜300枚に1枚くらい撮れれば良い方だと思います。
 良い写真が撮れないからと言って、あまりめげずに、水槽撮影とはそういう趣味なのだと思って、気長に頑張るのが一番かと思います。


■カメラの理屈
 〜もう少し良い写真を撮るために知っておくと便利なこと〜

 いろいろと水槽撮影をするためのコツを書いてきましたが、この辺りでカメラの理屈について考えてみたいと思います。こういう話を知っておくと、カメラを買い換えようなんて考えたときのカメラ選びの参考になると思いますし、その他、撮影のときにいろいろな工夫ができるようになってくると思いますので。

 で、そういうカメラの理屈を説明する前に…。
 
 「どうして、初心者はカメラのことが良くわからないのか?」というのが、私の疑問でした。私もカメラのことが本当に良くわかりませんでしたので…。今でもわかっていないことは多いのですが、考え方をすこしだけ変えることで、理解しやすくなってきたように思います。その辺りからカメラの理屈について、アプローチしていこうと思います。ですので、以下は、普通に紹介されているカメラの説明とは少し違います。

 ※以下の解説は猫丸がカメラを理解しようとしていろいろと考えた結果による解説です。説明の順番をわざと前後させていたりと、カメラに詳しい方にすると、ちょっと首をひねる話かもしれませんし、もう少し良い説明があるのかもしれませんが、とりあえず初心者向けの猫丸流解説ということで、読んで下さい。


 まず、カメラのことを良く知らない人って、「シャッターボタンを押したら、その瞬間にレンズに見えていた画像が、そのまま写真になる」と思っているような気がするんです。私もそうなんですね。記念撮影なんかをしていますと、シャッターボタンを押したら、その情景が写真になりますので。
 でも、水槽や魚の撮影をすることを考慮してカメラを理解しようとする場合、この考え方ですとカメラを理解するが難しいんだなということがわかりました。

 では、どう考えるのか?と言いますと「シャッターボタンを押すとレンズの覆いが開き、その覆いの開いた部分から、ある一定量の光がカメラの中に入った段階で、はじめて写真になる」と考えてみます。
 つまり、カメラって、シャッターボタンを押した瞬間の画像を記録するのではなくて、シャッターボタンを押してから、一定量の光を集めたあとで、その集めた光を写真として残す機械だと考えた方が良いのではないかと思うんです。

 この考え方を元にして、これから、単純な例を出しながら、カメラで使われているいろいろな値に関して解説してみようと思います。

 ”一定量の光”というのが、わかりにくいので、とりあえず、”シャッターボタンを押してレンズの覆いを開けてから、光が100だけカメラの中に入ってきたら、写真になる”と考えることにしますね(つまり、100の光が集まるまで、写真はできないということです)。

●F値ってなに?シャッタースピードってなに?
 いきなり難しい言葉が出てきましたが、F値はカメラではよく使われます。F2.8とか、カメラを覗くと表示されているのを見ることもあるかと思います。また、シャッタースピードも1/50とか、表示が出ますが、大抵の初心者の方は、どちらの数値が出ても無視しますよね(笑) 私もこれまでは気にしないことが多かったです(^^;

 で、このF値というのは、”絞り”を示す値です。絞りといわれてもかなりわかりにくいですね。これも、はじめはよくわかりませんでした。
 簡単に書きますと、カメラのレンズの一部に覆いをかけて、光があまり入らないように制限することのできる機能です。上で書きましたよね、”レンズの覆いを開ける”って。つまり、このF値(絞り)というのは、レンズの覆いの開け具合と考えていいです。F値は、その値が小さくなるほど、開け具合が大きいことを示しています。
 といっても、まだなんとなく、イメージしずらいと思いますので、もうちょっと変な例を出します(笑)
 カメラのレンズを、真っ黒い紙で隠したとします。それではカメラには、光は入りませんよね。そこで、その紙に穴をあけるとします。大きな穴を開けたら、太い光が入りますし、小さい穴なら、細い光しか入りません。そういう、黒い紙と同じ役割を果たすものがカメラの中に入っていて、その穴の大きさを自由に調整できるような仕組みになっていると考えていただければ、わかりやすいかなぁと思います。
 で、当然ですが、絞りを広く開ける(穴が大きい)と、太い光が入るので、一定時間にカメラに入ってくる光の量は増えます。逆に絞りを狭く開ける(穴が小さい)と、細い光しか入らないので、一定時間にカメラに入ってくる光の量は減ります。
 つまり、”絞り”というのは、一定時間にどれだけの光をカメラに受け入れることができるか?ということも同時に示していることになります。絞りの値(F値)が小さいほどレンズを覆っている部分が少なく(穴が大きく)なりますので、一定時間に入ってくる光の量が多くなるということになります。
 また、用語として、F値を小さく(穴を大きく)することを、「絞りを開く」などと言い、F値を大きく(穴を小さく)することを「絞り込む」などと言います。

 今の話を、ものすごく単純化した例で考えてみます。
 仮に、F値が”1”のとき、”1秒で100の光をカメラに入れられる”とします。100の光が入ったら写真になると上で決めましたので、F=1だと、シャッターボタンを押してから1秒後に写真ができます。この、シャッターボタンを押してから写真ができるまでの時間、(例では1秒)をシャッタースピードと言います。
 次に、F=2(F=1のときよりも、光の入る穴を小さくして、光が入りにくいように制限する)だと、100の光を入れるのにさっきよりも当然長くかかるわけです。仮にそれが2秒かかるとしますね。そうすると、シャッターボタンを押してから写真になるまで、2秒ということになります。この時間(2秒)がシャッタースピードです。このように、F値を大きくする(光の通る穴を小さくする)と、基本的に、シャッタースピードは遅くなります。
 ですので、シャッタースピードを早くしたければ、F値を小さく、シャッタースピードを遅くしたければ、F値を大きくしないといけません。F値とシャッタースピードには、このような関係があります。

(この例では、シャッタースピードに関して、ボタンを押してから写真ができるまでの時間と書いてありますが、 厳密に言うと、ちょっと違ってきます。ですが、今は簡単に説明するために、単純化して解説しています)


 この例はキリのいい、わかりやすい数値で書きましたので、実際に写真を撮るときのF値や、シャッタースピードは、今の例での値とはかなり違います。魚など、動きのあるものを撮るときのシャッタースピードは、1秒よりもずっと短いことがほとんどですし、F値も1や2ではなく、もっと大きな値になることが多いです。そういう、実際に出てくるような値の例で、今の話をグラフにすると次のような感じになります。
 


このグラフで、青い線にぶつかったところで、それぞれの値を見ることになります。ですので、シャッタースピードが決まると、F値が決まりますし、逆に、F値が決まりますと、シャッタースピードも決まります。この二つの値は、ちょっと変わった写真になっても良いと思って無理やりに変えたりしない限りは、基本的にこのような関係になっています。また、この関係を崩さないで写真を撮ると、ちょうどよい光の加減の写真になるともいえますし、普通はカメラが自動的にこの関係に近づくように取り計らってくれることがほとんどです。

●シャッタースピードと魚の撮影
 シャッタースピードというのは、上で説明しましたが、シャッターボタンを押してから、光を100だけ集めて、写真になるまでの時間です。ですので、その間に写そうとするもの(被写体)が動いてしまうと、動いた部分、全ての光景が光としてカメラに入ってくるということになります。ということは、それが写真になったときには、ブレて写っているということになるんですね。悲しいです。
 特に魚のように、素早く動いている事が多い被写体の場合、シャッタースピードが遅いと、ブレた写真になることが多くなります。底モノはまだ良い方ですが、ダニオなど、動きの速い上層魚ですと、1秒間も静止している場面に出会うのはかなり困難かと思うのです。そういう被写体を撮影したい場合には、魚が止まっている時間が短くても大丈夫なくらい速いシャッタースピードで撮りたいわけですね。
 以下の写真を見てください。上の写真、真ん中にストリアータがいますが、ブレちゃっていますね(^^;。ローチの尻尾や背鰭なんかもちょっと厳しい感じです。でも、その下の写真、同じような動きをしているのですが、ストリアータが少しはっきり写っていますし、ローチもまあまあ、いい感じに撮れているように思います(これでもブレてるんですが、私にはこれ以上の写真が撮れなかったので、お許しを(^^;)。という感じで、シャッタースピードは重要なんですね。


(シャッタースピードが遅い場合:1/8秒)


(シャッタースピードが上の写真よりは多少速い場合:1/15秒)

 つまり、魚をブレずに撮るには、シャッタースピードを速くしたいわけです。そうなると、上で説明しましたように、F値を小さくすれば良いという事になります。
 「なぁんだ、簡単なことじゃないか」と思われるかもしれませんが、それで解決するのでしたら、水槽撮影って、そんなに難しくないわけなんですね。つまり、このF値をひたすらに小さくできないのがつらいところなんです。それが次に説明する、被写界深度(ピントの合う範囲)のお話と関係してくるんです。

●被写界深度ってなに?
 被写界深度というのは、写真の中でピントが合っている(ボケていない)部分の範囲のことです。
 以下の写真を見てください。カーニバル・テトラという、カラシンの仲間ですが、体長は、3〜4センチ程度、体幅は数ミリです。でも、その頭の部分は、ピントがあっていますが、尻尾の方はボケていますよね(上の写真は後ろ側がボケ、下の写真は手前側がボケています)。さらに遠くにある、背景の水草などは、どんな形なのかがぼんやりと見える程度です。つまりピントが合っている範囲がとても狭く、カーニバルテトラの頭を中心に、数ミリからせいぜい1センチ程度しかない写真ということになります。こういう状態を被写界深度が浅いと言います。




 次にこの花の写真を見てください。こちらは、花は全て奇麗に見えますし、後ろにある葉っぱも輪郭がわかりますよね。カーニバルテトラの写真よりも、ピントが合っている範囲が広くなっているのが一目瞭然です。こういう写真を、(上の写真に比べて)被写界深度が深いといいます。



 また、同じ花の写真を今度は被写界深度を浅くして(カーニバルテトラを撮ったときのような感じで)撮影すると下の写真のような感じになります。背景は完全にボケてしまっていますし、よく見ると花も後ろの方が、ボケているのがわかります。ピントが合う範囲が狭くなっているのがわかっていただけると思います。



 被写界深度のこと、なんとなく、イメージしていただけましたでしょうか?

 で、この被写界深度(つまり、ピントが合う範囲)は何によって決まるのか?と言いますと、前述のF値によって決まります。F値が小さいほど、被写界深度は浅く(ピントが合う範囲が狭く)なり、F値が大きいほど、被写界深度は深く(ピントが合う範囲が広く)なります。
 ですので、シャッタースピードを稼ぎたいからといって、F値を小さくしすぎますと、今度はまともにピントを合わせて写せる範囲が狭くなりすぎてしまうんですね。ということは、ピントが合う範囲でしっかりと被写体を捉えるのが難しい状態になってしまうということです。特に動き回る魚を撮る場合には、よほどうまくやらないと、その範囲に魚が入らないので、シャッタースピードが速くなってブレが少なくなったとしても、今度はピンぼけ写真が増えることになります。
 シャッタースピードを上げるために、F値を小さくすればいいのかと思いきや、そうも行かない理由がここにあるんです。

 F値を小さくしてシャッタースピードを稼ぎたい。でも、一方でF値を大きくして、被写界深度を深く(ピントの合う範囲を広く)したい、という二つの要求が同時に発生してしまうのが、水槽での魚の撮影を困難にしている要因の一つです。シャッタースピード、被写界深度(ピントの合う範囲)の両方ともに、それなりに良さそうなところになるようなF値がうまく見つかるといいのですが、なかなかそうも行かないんです。
 ちなみに、ピントもなるべく広い範囲であわせたい、ブレも少なくしたいという、相反する要求が発生してしまうのは、動き回るものを奇麗に撮ることを最優先しているからです。つまりは、水槽撮影では起こりやすい要求であり、魚をあまりうまく追えない初心者の方にさらに多く発生するジレンマということになるわけです(^^;

 このあたりの最適な値を決めるのは、カメラに慣れた方なら、感覚的にできるようですが、私含め、初心者にはそういう職人芸はないわけです。でも、最近のデジカメは、基本的にこれらの最適だと思われる設定を自動でやってくれます。本当に便利なものですね。わからない場合には、カメラにお任せするのが一番だというのが私の結論でもあります(笑)
 ですが、それでもたまに色々と変えてみると結構面白い写真が撮れたりして楽しいですので、自分でF値をいじったりして、工夫してみるのも良いと思いますよ。


※1:この説明の中で、”ピントが合う範囲”と書いてありますが、厳密にはピントが合う範囲というものは無く、ピントが合うのはある1点だけです。ですが、ピントが合った1点の周囲は、人の目で見る限り、ピンぼけには見えないわけでして、その”ピントがあっているように見える範囲全体”を”ピントが合っている”と表現して上記では説明しております。また、それを前提に被写界深度も説明しました。初心者向けとして、判りやすく書くための処置ですが、カメラの用語の使い方としては必ずしも正確ではありませんので、そのあたりは誤解なさらないようにしてくださいね。

※2:”被写界深度”をネットで検索したりしますと、”被写体深度”という言葉も出てきます。これは、同じ事柄を指していますが、被写界深度という呼び方が正しいそうです(私もそれを知らずに使っていたので、ちょっと恥ずかしかったです(^^;)。ただ、ネットでは、被写体深度という呼び方もかなり多く見受けられるのが現状です。今回、このコンテンツ内では、全て被写界深度という記述で統一しましたが、他の資料を読む場合には被写体深度という記述もありえますので、そのあたりは少し気をつけてくださいね。

●周りの光との関係
 ここまで、F値(絞り)、シャッタースピード、被写界深度(ピントの合う範囲)の話をしてきましたが、実はこれは十分に光がある状態(周りがとっても明るい状態、日中の屋外など)を前提にしたお話でした。ですが、水槽の場合には、いくらライトで明るくしても、太陽の光のようにはいかないわけです。そうなるとどういうことが起こるのか?という辺りに話を進めようと思います。

 F値の説明のときに、例として、「F=1で、100の光を集めて写真になるのに1秒かかる」としてみましたが、これは、被写体の周りに光が十分にあって、1秒あれば、100以上の光がカメラに取り込める状態だから、こういうことが言えるわけです。ですが周りが真っ暗でしたら、1秒だろうと10秒だろうと、100の光をカメラに入れることなんてできないわけですね。真っ暗とは言わないまでも、周りに光が少ない状態でしたら、F=1でも、100の光を集めるのに、1秒では足りず、5秒かかるかもしれません。写真を撮るには、光が100集まるまで待つわけですから、シャッタースピードは5秒になってしまいます。カメラ側は、光を取り入れる準備がバッチリできているのに、肝心の入ってくる光が少ない。という、なんとも情けない状態になっているわけです。そして、水槽というのは、光が少ない状態になっていることが多いんですね。残念なことに…。
 ですので、撮影のポイントのところでも書きましたように、水槽は少しでも明るくしたいわけです。
 水槽が暗いと、それだけでシャッタースピードが遅くなっていきます。シャッタースピードが遅くなると、速く動くものを撮るほど、ブレることになります。また、シャッタースピードを稼ぎたいためにF値を小さくするので、被写体深度が浅くなり(ピントが合う範囲が狭くなり)、魚のように動き回る被写体を撮った場合には、ピンぼけになりやすいですので、ますます条件が悪くなります。
 その辺りのことをまたグラフにしてみました。このグラフ、似たようなのが最初の方にも出てきましたが、それに足して書いています。青い線のほかに、緑の線と、赤い線が追加されています。



 緑→青→赤というように、右上に行くほど、周りの光が多い状態だと考えてください。
 で、緑の線の場合、シャッタースピードを1/30秒にしたければ、F値は4にしないといけませんが、赤い線の場合、シャッタースピードを1/30秒にする場合、F値は16になります。F値が大きいほど、被写界深度が深く(ピントが合う範囲が広く)なりますので、同じシャッタースピードでも、広い範囲で魚にピントを合わせることができるようになるわけです。つまりピンぼけ写真が減ります。また、緑の線と赤い線で、両方ともF値を8にした場合(ピントが合う範囲を同じにしたとき)には、緑の線ですとシャッタースピードは1/4秒なのに対して、赤い線ですと1/125秒と、ものすごく速くなります。つまり、ブレが少なくなるということです。
 以上のことから、明るければ、明るいほど、魚のような動き回る被写体の撮影はしやすくなるということがわかります。

 水槽は日中の屋外などに比べてかなり暗いことと、魚がチョコチョコと動き回ること、そして、普通のデジカメは、基本的に屋外でスナップ写真を撮ることを主目的に作られています。この辺りのことが、水槽撮影を難しくしている理由だと思われます。

●じゃあ、どうにもならないの?
 上のように書きますと、なんだかどうにもらならないような気分になってきますが、ここでめげてはいけません。
 現行のデジカメを使う場合、水槽に最低限、蛍光灯1灯あれば、魚の写真は写せます。もちろん、その状態ですと、シャッタースピードはそれほど速くできませんので、魚の動きによっては、失敗写真もたくさん出てくると思いますが、その中でもうまく魚が止まっていてくれたりすると、きちんと写ることがありますので、そういう写真を見つけていくということになります。たくさん撮ってよいものを探すというのが、水槽撮影の基本的なアプローチになると思われます。

 ただ、それをある程度何とかする方法が無いわけでもないんです。

(1)フラッシュ(ストロボ、スピードライトとも言う)を使う。
 フラッシュは、カメラから強い光を発射する装置で、ピカッと光るあれのことです。フラッシュを使うことで、たとえ被写体の周りが暗くても、強制的に明るくできます。それによって、シャッタースピードも速くできます。ですので、魚が多少動いてもバッチリと撮れる事が多いです。なんとも嬉しい機能です。
 ですが、やはり光が不自然ですので、ちょっと色のイメージが違っちゃったり、魚の目が真っ赤になったり、真っ白になったりすることもあります。また、フラッシュの光がガラス面で反射してしまったりと、別の問題も出てきます。以下に、例として、写真を載せておきます。


(フラッシュなし)


(フラッシュあり)


(フラッシュあり:ガラス面を真正面から撮った場合)

 一番上と、二番目の写真を見てください。同じ場面を撮っているのですが、フラッシュを使うかどうかで、かなり感じの違う写真になっているのがわかると思います。色合いの違いなどは、個人的な好みもありますのでどちらが良いとはいえませんが、フラッシュを使うと、雰囲気が変わるのはわかっていただけると思います。ただ、二番目の写真では、ゾディアックローチの目の周りが白く光ってちょっと怖いですよね(^^; フラッシュを使うと、こういう感じで写る場合もあります(赤目補正機能を搭載したカメラもあるそうですので、それを使うとまた別なのかもしれません)。
 それと、フラッシュを使って、水槽のガラスに対して真正面から撮りますと、三番目の写真のように、光がそのまま反射してきて、真っ白な部分ができてしまいますので、水槽撮影でフラッシュを使う場合、ガラスに対して少し斜めから撮るようにするとうまくいく場合が多いです。

(2)ISO感度を上げる。
 ISO感度という新しい言葉が出てきましたが、これは、カメラが光を関知する能力のことです。
 上で使った例をまた出してきて説明します。
 カメラに光が100入ったら写真になると言いましたが、このISO感度という数値を引き上げてやりますと、光が50しか入らなくても、それを無理矢理100にして写真にすることができるようになります。こういう風に書くとなんだか無茶な感じですが、要するにカメラの光を取り入れる部分の感度を上げて、普段は無視していた光も拾うようにするということでして、それによって、より多くの光を集めて写真を作る設定だと思っていただければ良いと思います。
 ISO感度を上げると、周りが多少暗くても、光を一生懸命集めて取り込みますので、結果として、感度が低いときよりも早く、100の光を集めきって、写真にしてしまうことができます。ということで、ISO感度を上げますと、シャッタースピードも上げることができます。また、もしも、シャッタースピードが同じなら、ISO感度が高い方が光が大量に入ってきますので、明るい写真が撮れます。やっぱり、明るい写真のほうが良いことが多いと思いますので、そういう面でも有利なのはうれしいところです(^^)
 と、こういう風に書きますと、ISO感度を上げると、なんだかいいこと尽くめのように思いますね。
 でも、実はちょっと問題があります。
 ISO感度を上げますと、光を集めまくりますので、とにかく何でも拾ってくるんですね。これが、かなり曲者です。余計なものまで拾ってきてしまって、写真にブツブツしたノイズが出るようになります。よく、テレビの動物の生態なんかの特集番組を見ていますと、夜中の動物の動きとかを高感度(暗視)カメラで撮影した映像が出てきますよね。あれを見ていますと、ブツブツしたノイズがかなり多いのがわかります。ISO感度を上げるというのは、それと同じような状態にしてしまうということです。
 私のカメラは、ISO感度を大きく変更できないので、はっきりとわかりやすい例は作れなかったのですが、一応、以下の写真をみてください。この2枚の招き猫の写真は、全く同じ場所、同じ照明を使って、カメラも、ISO感度以外はできる限り同じ設定で撮影しました(自動的に設定が変わってしまっている部分もちょっとあります)。
 上の写真は、ISO感度が50で、下の写真が400です。招き猫全体を見ますと、ノイズとかはあまりわかりませんでしたので、左側に一部分を拡大した写真をつけました。それを見ますと、ISO感度が50の方は、しっかりとバックは灰色に見えていますが、ISO感度が400の方は、なんだかブツブツした灰色以外の色のノイズが見えると思います。ISO感度を大きくすると、こういう違いが出てくるわけですね。
 ISO感度を1600とか、かなり高い値に設定できるカメラもありますので、そういうので撮ると、もっとノイズが出るのかなぁなんて思います。


(ISO感度:50)


(ISO感度:400)

 このように、ISO感度を上げるほど、写真の画質は落ちるわけですので、シャッタースピードを稼ぎたいからといって、ISO感度を上げすぎるのも考え物です。
 あまりにもシャッタースピードが遅くて、常にブレてばかりの場合には仕方がないですが、奇麗な写真を撮りたいのであれば、あまりISO感度は上げたくないところです。こんなふうに、あちらを立てれば、こちらが立たずという感じで、どちらもそれなりに満足できる辺りを探す必要がありますので、カメラって難しいですね。その分、面白いですけれど(^^)
 今のデジカメは、カメラにお任せの設定にしておきますと、ISO感度も適当な値を自動的にカメラの方で決めてくれる場合がほとんどですが、自分で設定することもできる機種が多いようですので、たまには色々と変えてみるのも面白いかもしれませんね。


※このISO感度、光を集めまくるのでブツブツが出ると書きましたが、他にも、感度を調整する部分の機械的な特性から、ISO感度を上げることで画質が落ちるという要因もあるそうです。その説明をしはじめると難しいということと、今回のコンテンツでは、あまり意味のある話ではないので、割愛しましたが興味のある方は調べてみてくださいね。

●ホワイトバランスってなに?
 ここまでの話とは少し違うのですが、ホワイトバランスということで、写真の色のお話も少ししてみたいと思います。
 写真の色って、何も知らない初心者としては、目で見た通りの色で、写真に写ってくれていると思うわけですね。私も前はそのように思っておりました。でも、実際にはそういうわけでもないようなのです。
 個々のカメラの特徴として、入ってきた光の色を、どのように写真として残すか?というのが微妙に違うんですね。ですので、同じ場面を別々のカメラで撮影すると、かなり違う色合いで写真が出来上がることがあります。それは、カメラの中の、色を関知する部分の特性が、メーカーごと、カメラごとに違うからなんです。その違いは、そのカメラの特徴の問題なので、ある意味、仕方がないです。
 「こういう色合いのカメラが欲しい」とか、そんなマニアックな要求がある場合には、そのあたりも含めて、カメラのメーカーや、製品を選ばれると良いと思います。
 でも、水槽写真を、素人レベルで撮影する場合、実際問題としては、それほど細かい色合いに不満を感じることは、まずありません。というか、殆ど気がつかないことが多いと思います。二つの違うカメラで同じ場面を撮った写真を見比べたときに、「こっちのほうが微妙に自然な色合いに写るカメラだなぁ」とか、せいぜい、その程度のことがわかるという感じだと思います。また、それを見るパソコン画面の設定だとか、印刷したプリンタの色合いだとかにもかなり左右されるものでもあります。
 ですので、普通はカメラの色合いと言うのは、カメラに任せておけば、あまり問題にならないことが多いです。

 ですが、どうしても色合いを変えたいときが出てきます。特に私は良くあります。というのも、私は撮影のときに、蛍光灯の他に、白熱電球で光量を増やしていると書きましたよね。うちの白熱電球は、色がかなりオレンジなんです。水槽の中を白熱電球で照らすと、とても明るくなるのですが、色がものすごくオレンジになってしまいます(^^; まあ、それでも、セピアっぽいですし、なんか渋いので個人的には好きな色なのですが、魚の本来の色が出ていないので、図鑑的な意味合いもあるうちのサイトに掲載する写真としては、それはちょっとなぁ…と思うわけですね。

 そこで、出てくるのがホワイトバランスです。
 ホワイトバランスとは、「(人間の目で見た)何色を(カメラの)白として写すのか?」を指定することです。この説明だけですと、ちょっと難しいですよね。またまた例を出します。
 黄色の折り紙を撮影するとします。ホワイトバランスが普通の場合(つまり、人間の目で見て白いものを、カメラでも白く写す設定)ですと、黄色の折り紙は、写真の中でも黄色に写ります。まあ、当然ですね。
 そこで、ホワイトバランスを変えてみます。今度は、人間の目で見て黄色のものを、カメラでは白く写す設定にするんです。その状態で黄色の折り紙を写すとどうなるか?といいますと、黄色の折り紙が真っ白に写った写真になります。そして、折り紙以外の部分の色も、それに応じて色合いが変わってきます。
 このような設定がホワイトバランスです。
 
 先ほどの、私の水槽撮影のときの話に戻しますが、私の水槽は写真を撮る場合、白熱電球のおかげで、かなりオレンジ色っぽくなっています。シルバーモーリーの真っ白い身体なんかは、オレンジ色に見えます。そのまま写真を撮りますと、オレンジ色のモーリーになっちゃいます(^^; ですが、本来はオレンジではなく、白なんですね。ですので、ここでホワイトバランスを調整して、オレンジ色のものが白く写るように設定するんです。そうしますと、他のものも、オレンジ色の白熱電球をつけていないときの本来の色で写真に写るというわけです。

 下の写真、私の水槽で、白熱電球を光源にして撮りました。竹筒の上から顔を出している、レッドスポットタイガーローチの写真です。上がホワイトバランスを何も設定せずに、白熱電球で、オレンジっぽくなった色のまま撮っている状態です。で、ホワイトバランスを調整して、オレンジっぽい色を、白く写るようにしたのが下の写真です。私が写真撮影以外のとき(白熱電球を使わず)に見ている水槽は、下の写真のような色なんです。
 こんな感じで、私はホワイトバランスを調整して写真を撮っています。


(ホワイトバランスの調整をしない場合)


(ホワイトバランスの調整をした場合)

 水槽の場合、蛍光灯の色で見ることが多く、写真撮影のときに、蛍光灯以外に照明を追加しなければ、通常、ホワイトバランスを変更することはあまり無いかもしれませんし、カメラに任せておけば大丈夫な場合が多いです。ですが、私のように濃い色のついた照明を追加したり、底砂が白くて、その色がきついとか、魚の色によっても、多少ホワイトバランスを変更した方が、普段自分が見ている色に近い色合いの写真が撮れる場合もあります。

 通常のデジカメですと、ホワイトバランスの設定は、”自動”のほかに、”晴天”用、”曇天”用、”室内”用、などのモードに設定できるようになっていることが多いと思いますので、”自動”での色合いに不満があるようでしたら、いくつかモードを変えて、何枚か撮影して写真を見比べてみて、自分の感覚に近い色を出している設定で撮影すればよいかと思います。また、白く写ってほしい被写体にカメラを向けて、それを白として設定するというモードを備えているデジカメもありますので、その場合には、白く写したいものを設定してやれば良いかと思います(私のカメラはこれが付いているので結構重宝しています)。

 ホワイトバランス、うまく使うと、結構面白い写真が撮影できますよ(^^)

●画像サイズ
 デジカメの設定で、画像サイズとか、写真サイズ記録画素数などといって、例えば、2048とか640などの数字(または数字同士の掛け算の形で表現される)を指定することができるようになっている場合が多いですが、それは、出来上がってくる写真の画像の大きさです。通常は、単位はピクセルです。基本的に、数を大きく設定すれば、大きなサイズで写真が撮れます。

 皆さんが、今HPを見ているパソコンの画面、横幅が1024ピクセル、縦幅が768ピクセルで利用されている方が統計的に一番多いそうです。また、次点でも、横幅1280ピクセル、縦幅1024ピクセルで使われている方が多いとのことです。HPで使われている写真で、縦と横の幅が、500ピクセルくらいでも、それをパソコンで見ると、画面の1/4くらいの面積を占めるほどの大きさになりますので、かなり大きな写真に見える場合が多いはずです。
 つまりHPに掲載することを考えた場合、写真の画像サイズはあまり大きくする必要はないという結論が出てきます。そして、画像サイズを小さくしておけば、デジカメのメモリもあまり消費しませんので、たくさんの写真を一気に撮影することができるようになります。ですので、画像サイズは小さくするべし!と考えたいところなんですが…。

 これも、また別の話と関係してきます。次の項目(写真の加工のお話)で説明するのですが、写真は、撮ったままの状態でHPなどに掲載することもありますが、その写真の中から必要な部分だけを切り取ったりと、画像処理ソフトなどを使って写真に何らかの加工を施す場合があります。そのときには、もとの写真のサイズが大きいほど、やりやすくなるんです。また、HPに使うだけではなく、印刷したりする場合にも、大きなサイズで撮影して、それを縮小して印刷する方が格段に奇麗に仕上がります。
 
 このような事情がありますので、(デジカメのメモリのサイズにもよりますが)できるだけ大きな画像サイズで写真を撮っておいた方が、後々、便利な場合が多いと思います。

●構図、遠近感、主題のお話
 水槽写真を撮る場合、まずは、魚の奇麗な写真が撮れればいいということもありますが、それがある程度できてきたら、やっぱり「なんか、格好いい写真が撮りたいなぁ」なんて思うわけですよね。できれば、雑誌に載っているような、迫力ある写真とか、自然感の感じられる写真とかを撮りたいものです。そういうときには、構図遠近感主題なんかをちょっとだけ考えてみると良いかもしれません。
 要するに、何を、どんな風に見せるか?ということです。私は、魚の写真を奇麗に撮るだけで精一杯なもので、あまりこういうことに気を使っていないわけでして、撮り貯めた写真を探しても、良い例が見つからなかったのですが、とりあえず、下の2枚の写真、見比べてみてください。


(全体の水槽の様子を見せたい場合)


(一匹だけを目立たせたい場合)

 どちらが良いというわけではありませんが、同じステルバイを撮影するにしても、写真の中で、どういう配置で撮るのかで、印象が変わってくると思います。例えば、図鑑にステルバイを載せるとして、どう考えても上の写真は載せないですよね。最低限、下の写真のように1匹で写っているものを使いたいと思いますし、本当なら、きちんと横向きで、真ん中に写っている写真がほしいところです。逆に、水槽のにぎやかな雰囲気を伝えたいと思ったら、上の写真を使おうと思うはずです。
 こんな感じで、どんな用途に使うのか?ということから、何を主役にするのか?ということが決まってきます。 そして、それをどんな風に見せたいのか?によって、写真の撮り方を変えると、また違った楽しみが出てくると思います。下の写真、見てください。うちのストリアータです。写真の大きさも、全く同じ寸法で切り出してみました。


(一部分を大きく写す場合)


(全体をきちんと収める場合)

 どちらの写真も、全く同じ魚ですし、同じ時に、同じカメラの設定で撮りました。変えたのは、撮る位置だけです。上は思いっきり近づいて、顔のアップ。下は、身体の全体像が見えるように少し引き気味で撮りました。それだけで、明らかに写真の雰囲気が違いますよね。上の写真は、いかにも親バカな私が撮りましたよ、という感じで、ストリアータの可愛らしさが出ていると勝手に自負しています(笑)。でも、下の写真は、ストリアータの幼魚の身体の特徴が良くわかる写真ですので、親バカというよりは、図鑑向きのちょっとスマートな写真だと思います。
 こんな感じで、同じ魚でも、撮る位置や方向を変えるだけで、色々な雰囲気を演出することができるわけです。

 また、上で説明しましたが、F値を変えることで、ピントが合っている部分をどのくらいにするのか?を調節することができます。背後がボケて、魚だけがくっきり写っている写真を撮れば、その魚が主役だということが良くわかります。また、後ろの水草なんかも一緒に奇麗に写っている写真ですと、水槽全体の雰囲気だとか、奥行きだとかがわかる写真になります。
 ですので、ピントがどこにあっているのか?というのを利用して、写真で何を見せたいのか?を表現するのも手です。光量がギリギリですと、F値をそんなに自由にできるわけではないですが、その辺りを調整しながら写真を撮ってみるのもおもしろいです。上では、シャッタースピードとの絡みでF値を説明しましたが、もともと、F値(絞り)というのは、本来はこっちの意味合いの方が強いのではないかなと思います(^^;)。
 魚をうまく写真に捉えられるようになってきたら、それをどう見せるか?という部分にもこだわってみると、さらに面白い写真が撮れるのではないかと思います。

■写真の加工のお話
 さて、カメラから少し離れたお話をしたいと思います。カメラで撮った写真を加工するお話です。

 上で、水槽撮影のために買うならデジカメにしましょう!と言った、理由のもう一つが、写真を後から加工するのに都合がよいからです。ということで、写真の加工のお話を少し書きたいと思います。
 ですが、写真の加工(フォトレタッチ)とか、画像処理というのは、かなり奥が深く、説明しはじめるとキリがないんです。今はその技術もかなり進歩していまして、ほとんどなんでもできちゃうくらいの勢いです。
 例えば、皆さんがよく見ている、雑誌の表紙だとかグラビアなんかに載っている芸能人やモデルさんの写真。皆さん、顔がすごくきれいです。でも、その写真の多くは、画像処理されたものです(爆) 顔のシミだとか、ほくろだとか、目じりのシワだとか、ちょっとした影とか、その程度でしたら、画像処理で簡単に消せちゃいます。髪形を変えるとか、ヒゲを剃るとか、そのくらいも普通にできますし、別人になるまで顔を変形させることもできちゃいますので、雑誌のモデルさんって、本当は結構普通の顔なんじゃないかなぁ?なんて、個人的には思ったり思わなかったりするわけです(^^;
 と、こんな感じの話もありますから、写真の加工について、ディープに説明しはじめますと、話が尽きませんのでやめます。今回は、水槽写真をそれなりにうまく見えるようにする技術(ボツ写真をなんとか救う方法(笑)について、少しだけですが、説明しようと思います。

●欲しい部分だけ、欲しいとき(トリミング)
 水槽を撮っていますと、いろいろなものが写るわけですね。例えば、キリッとしたアピストの格好いい写真を撮っていたのに、その横に、デローンと寝ているローチが写ってしまったり、優雅に泳ぐ奇麗なグッピーの写真がバッチリ撮れた!と思ったのに、その後ろの方から、ローチがぼんやり顔で覗き込んでいたりと、せっかくの雰囲気が台無しになることも良くあるものです(私は、そういう写真、もちろん好きですけどね)。
 水槽の様子を伝える、ということですと、別にそれでもいいと思うのですが、魚のそれぞれの写真として残したいとなると、ローチがそこから居なくなるまで待たないといけないわけですし、せっかく、アピストとかグッピーがうまく写っているのに、その写真をボツにするのはなんとも切ないわけですね。ただでさえ、魚の写真って写すのが大変ですので、狙った被写体がうまく撮れて、なおかつそれ以外の魚が写真に入らないようにするというのは、難易度が高くなってしまうわけです。ですので、写したいもの以外が写ってしまった写真でも、なんとかして使いたいわけです。
 そういうときに役に立つのがトリミングです。トリミングというのは、1枚の写真の中から必要な部分だけを取り出す(不要な部分を削る)という写真の加工です。以下の写真を見てください。
 上の写真が、カメラで写したそのままの画像です。水槽の風景としては良いと思いますが、ゾディアックローチの写真として見せたいときには、このままですと、ちょっと厳しいわけです。ですので、赤で線をひいた部分だけを取り出してくることにします。そのようにしてできたのが、下の画像です。これなら、ゾディアックローチの紹介をするために使っても全く問題ないわけです。


(トリミング前:元の写真)


(トリミング後:必要な部分だけ切り出したもの)

 本当は、撮りたい魚をど真ん中にして、下の画像のような感じで、バッチリ撮れたら格好いいわけですが、なかなかそうは行きません。だからといって、上の写真をボツにするのももったいないわけです。
 私は、HP掲載用に、このトリミングをよく使います。魚が真ん中にきている画像がHP内にたくさんありますが、それは私の撮影の腕がいいわけではなくて、あとから、こうやって作っているというわけなのです(^^;

●写真が暗くてなんか寂しいとき(レベル調整、明るさ補正など)
 上でも話してきましたが、水槽は基本的にかなり暗いものだと考えて良いと思います。ですので、写真も暗くなりがちなんですね。大型魚とか、迫力のある魚って、暗いバックの方が映えるような気もしますが、水草水槽で泳いでいるような小型魚とかは、やっぱり明るい水槽を気持ち良さそうに泳いでいる感じで写真に残したいものです。でも現実に写真をみますと、今ひとつ明るさに欠けることが多いです。自分で見ている水槽はこんなはずじゃないのに、写真にすると薄暗くてあまり奇麗に見えないということも多いかと思います。そういうときに、写真を明るく(場合によっては暗く)することができます。それが、レベル調整とか、明るさの補正などといわれる手法です。
 以下の画像を見てください。上が写真として撮ったもの、そのままの画像です。これですと、かろうじて、ストリアータが見えますが、暗くてあまり良い写真とはいえません。ですが、それに明るくする処理をかけることで、下の画像のようにすることができます(場合により、ノイズが増えてしまったりして、うまくできないこともあります)。こうなると、ストリアータの写真として、立派に通用すると思います。


(明るさの補正前:元の写真)


(明るさの補正後:画像全体を明るくしたもの)

 これを使いますと、ちょっと暗い写真を明るくすることができますので、光が足りないなぁと思われる写真に有効です。水槽撮影という、光の少ない条件下では、結構便利でして、私も、暗すぎて本当はボツ写真にしてしまうものを復活させて、HPで使っている部分があります(^^;。こういう加工も使えるとかなり便利です。

●色合い、雰囲気がしっくりこないとき(色相、彩度、コントラスト、カラーバランスなど)
 上で、撮影の時に、ホワイトバランスの調整をするという話を書きましたが、それと同じような事を写真を撮った後でやることもできます。それが、色相彩度コントラストカラーバランスなどの調整です。写真を撮って、パソコンの画面で見てみますと、どうしても水槽を直接見たときとは、違った色合いや、雰囲気に見えることがあります。やっぱりしっくり来ないことがあるんですね。カメラのホワイトバランスや、照明の当て方などでなんとか調整しても、出来上がった写真をみると、やっぱり違うなって思うことって結構あります。そういうときに、これらの調整をすることで、自分が見ている感覚により近い写真にすることができます(これも場合によりけりですが…)。
 以下の写真は、カラーバランスを補正した例です。上の写真が、元のままで、何も補正をしていない状態です。私の水槽で白熱電球の下で普通に撮った場合の写真です。タイガープレコが、なんだかオレンジ色です(^^; でも、これは普段見ている色とはかなり違いますので、それを補正したのが、その下の写真です。ちょっと不自然なオレンジ色から、本来のタイガープレコの色合いに近い状態になっているのがわかっていただけると思います。


(カラーバランスの補正前:元の写真)


(カラーバランスの補正後:オレンジ色っぽかったのを修正した画像)

 これは、私は主に、カメラのホワイトバランスの設定をし忘れたりしたときに使っています。ホワイトバランスがきちんと設定できていれば、大抵は思ったとおりの色合いで写真ができます。私は、これを使うことはそれほど多くありませんが、魚やその周囲の色などによっても、微妙に自分の思っている色合いと違うことがありますので、そういうときには便利な機能だと思います。

●ブツブツやピンぼけ、ブレを目立たなくしたいとき(縮小処理)
 写真を撮ると、細かいブツブツが写ったりします。カメラの設定によるノイズだったり、水槽の中のチリのようなものだったり、ガラス面に付いているのホコリだったりしますが、せっかく魚はうまく撮れたのにそういうブツブツが出ていて、なんだか写真がイマイチに見えることがあります。そういう時、写真を縮小しますと、そういうブツブツが潰れてしまって、なんだか奇麗な写真に見えるようになったりします。また、ピンぼけとか、ブレなんかも、ほんの少しでしたら、写真を縮小することで、見た目として目立たなくすることができます。ただ単に写真を小さくするだけなのですが、なかなか使える技術です。
 下の写真を見てください。掲載の都合上、2枚とも同じ大きさになっていますが、左側の写真はクリックすると、別ウインドウで元の大きなサイズの写真を見ることができます。その写真を見ますと、ディフューザーの泡がかなり白いブツブツとなって見えていますし、ローチ自体もちょっとピンぼけ気味であることがわかります。その写真を、ただ単に、この大きさまで縮小したのが、右の写真です。大きな写真に比べて、白いブツブツがかなり減っているのがわかると思いますし、ローチのピンぼけもあまり目立たなくなっています。

(縮小前)
写真をクリックすると、
大きなサイズで見れます。
(縮小後)


 高価な画像処理ソフトを使いますと、ブツブツを除去するための機能とか、ピンぼけやブレをある程度修正することもできますが、そういう機能が無い場合には、写真を縮小するのは、結構お勧めです。
 この方法を使って誤魔化す(笑)ことを考えますと、上で書きました、カメラの画像サイズの設定は、できるだけ大きくしておいた方が良いということになります。大きな画像を小さくすると、見た目としての画質は上がることが多いです。逆に小さな画像を大きくすると画質は確実に下がりますので、カメラの段階で大きく撮っておくことは、後々便利なんです。


以上の4つの写真の加工は、私は主にHP掲載の際に、写真の状態や、その掲載の目的に応じて使いわけているものです。他にもありますが、ちょっと難しいものも多いですし、説明が長くなりますので、今回は、主要な4つだけにしておきます。でもこの4つを使うだけでも、かなりのボツ写真を救うことができて、撮影が下手な私としては、とても助かっています。
 他の画像処理にも興味のある方は、フォトレタッチとか、画像の補正や加工について解説しているサイトや書籍がたくさんありますので、そういうものを調べてみてくださいね。

 上記の加工、私はAdobeのPhotoShopというソフトを使うことが多いです。でも、これは有料でちょっと値の張るソフトなので、おいそれと買うわけには行かないです(私も仕事で使うので持っているんですが、個人的に買うとすれば、かなり悩む値段です(^^;)。ただ、高価なだけに、ものすごく高機能でして、お金に余裕のある方とか、写真だけに限らず、色々と画像加工をしてみたい方などには、かなりお勧めのソフトかと思います。
 無料で、上記の4つのことができるものとしては、ViXという、フリーソフトもあります。掲示板やメールで伺ったところ、使われている方も多いようです。私も使ってみましたが、画像の加工のほかにも、写真の整理なども同時にできるソフトなので、とても便利でした。また、パソコンにソフトをインストールするのが嫌でしたら、PXN8というサイトもあります。このサイトに行けば、そこで写真の加工ができてしまうという優れものです(海外のサイトなので、英語ですけれども(^^;)ので、良ければ使ってみてください。

■一眼レフデジカメって?
 コンパクトデジカメを買って、写真を撮るのが面白くなってくると、次にちょっと欲しくなるのが、一眼レフデジカメです。でも、値段が高いですし、なんだか難しそうなイメージもありますよね。私はまだ、一眼レフを持っていませんので、あまり偉そうなことは書けないのですが、参考までに、皆さんに伺った話をまとめてみます。
 長所としては、まず、シャッターボタンを押してから、写真を撮り終わるまでの速度が、コンパクトデジカメよりもかなり速いので、狙った瞬間を逃さないで撮影できるそうです。私がコンパクトデジカメを使っていて不満に思うことの一つに、撮ったはずのシーンが撮れていない(ピンぼけしてるとか、ブレているとかそういう意味ではなく、時間としてずれてしまっている)ことがありまして、面白い仕草が撮れた!と喜んで写真を見てみたらガッカリ…ということがたまにあります。一眼レフでは、そういうことが少なくなるようですので、それだけでも、結構魅力的ですね。また、レンズを取り替えられるので、余裕があれば、水槽撮影に適したレンズを使うなんてこともできそうですし、コンパクトデジカメに比べると、ノイズが少なく、くっきり写るようです。また、深い色合いが出るので一眼レフのほうが好きというご意見も頂きました。操作に関してもコンパクトデジカメとそれほど変わりはないようですので、なんだかちょっと敷居の高い感じがする一眼レフですが、写真のマニアにしか扱えないものだということはないとのことです。ある程度の大きさと重さがあるので、安定していてブレにくいとか、自分で細かい設定ができたり、カメラとして高機能であることなども良いところです。
 ですが、短所も無いわけではなく、まず、なんと言っても値段が高いですね。最近は、安くなってきて、高めのコンパクトデジカメと近い値段になってきましたが、うちの近くの量販店に売っているものでは、最低でも、6万5千円くらいしていました。好みのカメラに、好みのレンズなんかを買い足しますと、軽く10万円を超えていきますので、買うとなると悩みます。写真自体を趣味にするのでしたら、10万円なら大人の趣味としては、普通の値段かもしれませんが、水槽撮影だけ、HPに乗せるだけで、その値段ということになると、ちょっときついかもしれません。そんなにお金があったら、水槽が欲しいなぁ、なんて考えてしまいますし…(^^;。
 また、大きさがあること、重さがあることがデメリットになる場合もあります。ずっと支えて撮り続けるとなると、腕の力がないと、辛くなってきますので、コンパクトデジカメに比べると、気軽に扱うというわけには行かないようです。

 とりあえず、文章で説明してみましたが、写真で違いを見ていただこうと思います。以下にコンパクトデジカメと、一眼レフデジカメの比較写真を紹介します。


(画像提供:TAOさん)
 この写真は、上がコンパクトデジカメ(IXY DIGITAL 800IS)、下が一眼レフデジカメ(KISS DIGITAL X)で撮影したものです。メーカーは同じで、ISO感度などの設定も、アングルもほぼ同じ状態で撮影しています。それでも結構違いがあります。 一見すると、水草の輪郭などが一眼レフの方がくっきり見えているように思えますが、HP上で見る限りでは、どちらがいいということではなく、どちらが好みか?という問題かもしれませんし、設定を変えたり、一眼レフの場合にはレンズを変更したりするとまた違った雰囲気になるとのことです。
 
 このような感じで、一眼レフカメラにも長所短所がありますし、コンパクトデジカメと比べてもいろいろな違いがありますが、楽しそうなカメラなので私もそのうち欲しいところです。

■プロの水槽カメラマンはどうやって魚を撮っているのか?
 アクア雑誌の編集の方とメールでお話する機会がありまして、そのときに伺ったり、実際に水槽の写真を撮ってもらった方に伺ったお話を紹介します。
 アクア雑誌や熱帯魚図鑑などの写真って、ものすごく奇麗に撮れていますがどうやって撮ったのか、かなり気になるところですよね。いつか、あんな写真を撮ってみたいと誰でも一度くらいは思うのではないでしょうか。
 私が伺った範囲でのお話ですが、まずは撮影前に上部濾過器も普通の蛍光灯も全部とってしまうそうです。その代わりに、強力なサーチライトみたいな明るいライトを設置したり、場合によっては、カメラと連動して作動するストロボを水槽の上に設置するそうです(上からなので、ガラス面に反射しないことと、魚の目に直接当たらないので、赤目になりにくいようです)。また、左右のガラス面などにもライトをつけることもあるとのことでした。つまり、素人には用意できないくらいのものすごい光量を用意するとのことです。さらに、水面に浮いている水草なども撤去し、可能な場合には水深も低くして、光を遮るものをできるだけ少なく、魚の移動できる場所を小さくするようです。
 その上で、一眼レフのカメラでとりまくるそうです(とりまくるのは、私たちと一緒ですね(^^)。ただ、フィルムカメラを使う場合も多いようで、フィルムをケチったりせずに、惜しげも無くガンガン使うあたりが、やっぱりお仕事なんですよね。ちょっと真似できません。
 カメラの設定はその都度、変えるそうですが、底砂やバックスクリーン、背景の水草の色、それから魚の種類などで、いろいろと考えるとのことでした。
 あとは、雰囲気作りも考えるそうです。
 わかりやすい例でいえば、アロワナとか、黒いバックに、ボーンと一匹が写っている写真がよく使われますが、大型魚など、存在感のある魚の場合には、そういう撮り方をすることが多いようです。逆に、テトラとかは、バックに水草の緑が少しでも入っているほうが良いとか、アフリカンシクリッドでしたら、珊瑚砂のような白っぽい底砂も一緒に撮るとか、そういう、魚のイメージが背景などからもわかりやすいように気を使うこともあるようです。
 やっぱり、プロの方、お仕事だけあって、こだわりもすごいですね。

■最後に
 説明の中に難しい言葉なども出てきましたので、少しわかりにくかったかも知れませんし、私自身がカメラに関しては初心者ですので、至らぬ点もあったかと思いますが、とりあえずHPやブログに乗せるとか、パソコンに保存して、後で見ながらニヤニヤと親バカ感に浸るには十分なレベルの写真が撮れることを目指して書いてみました。また、それよりも上のステップのためのカメラの理論的な話なども入れてみましたが、いかがでしたでしょうか?
 カメラに詳しい方にしてみると、おそらくちょっと首をひねるところもある説明だったと思います(もしも、間違いなどありましたが、ご指摘いただけると助かります)。また、私自身も勉強しつつ、難しいのであえて説明しなかったことや、勉強不足で説明できない部分もありましたが、今回は水槽撮影初心者向けで、とにかく、あまりブレず、あまりピンぼけにならず、なんとか好きな魚を写真に収めるための方法を説明することが、最低限の狙いでしたので、それがクリアできていれば幸いだなと思うところです。
 せっかく飼っているかわいい魚たちですので、親バカ飼い主としては、その姿をしっかりと残しておきたいものですよね(^^)。皆さんも水槽撮影、頑張ってくださいね。


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