プラティ

 プラティです。別名をムーンフィッシュといいます。熱帯魚を飼っている方なら知らない方は居ないほど有名な魚ですが、私は熱帯魚を飼うまでは知りませんでした。それでもかなり知名度が高く、様々な場所で飼われています。そのため流通量も多く、値段は安いです。プラティと一口に言ってもいろいろな種類が居ますし、ソードテールの仲間も含めるとかなりのバリエーションになります。それに関しては後述しますが、プラティのおもしろさはこの多様性にあるのかもしれません。どこでも売っていますし、カラフルですし、水質にもあまりうるさくないですし、餌も選り好みしません。
 入手しやすさ、飼いやすさ、見た目の美しさから、入門魚として紹介されることも多く、水槽立ち上げ初期にはこの魚を飼ったことのある方も少なくないのではないでしょうか?

【通称】 Platy(プラティ)
【学名】 Xiphophorus maculatus
【分布】 改良品種(原種はメキシコ南部やグアテマラ)
【体長】 5cm
【水温】 22〜28度
【水質】 弱アルカリ性から弱酸性


■プラティについて
 プラティの名前の由来ですが、わかりませんでした(そのうち調べます)。別名のムーンフィッシュについて少々。この別名は古い名前のようです。昔のプラティは尾鰭の付け根に半月型の模様があり、それを指してムーンフィッシュと呼ばれていたそうです。ですが、その後の品種改良で、その半月型の模様を無くしてしまった品種(レッドプラティ、ワグプラティなど)や、ミッキーマウスプラティのように他の形にしてしまった品種が台頭してきて、ムーンフィッシュという名前にふさわしいプラティが売られることが少なくなっているようです。ムーンフィッシュという名から、プラティという名に変わってきたのもそういういきさつと関係ありそうな気がしますが、詳細はわかりません。
 学名のXiphophorus (クシフォフォルス)というのはプラティの仲間(クシフォフォルス属)を示しています。同じ属には、ソードテールやバリアトゥスがいます。どれも穏和で飼いやすい種類ですね。しかもこれらの魚は異種間交配ができるので、プラティとバリアトゥスのハーフなんかも可能です。
 プラティは改良品種ですので、どこに分布しているとは言えないのですが、原種は中南米にいるようです。ただし、原種の方は売られているプラティほどの鮮やかな色合いはなく、地味な魚のようですね。売られているプラティの多くは東南アジアで養殖されて輸入されてくるものがほとんどです。
 水温、水質共に多数の淡水熱帯魚の飼育環境と一致しますので、混泳に問題はないでしょう。ですが、多少アルカリ性の方が調子はよいようですので、プラティをメインで飼育するつもりであればその様な水槽環境にするのが望ましいようです。もちろん、中性や弱酸性でも飼えるので混泳水槽にはもってこいの魚だといえるのではないでしょうか。
 性格は穏和で、個体差もあまり大きくはないようですので、混泳向きの魚だと思います。ですが好奇心が強く何でも口に入れる傾向があるようですので、稚魚や卵を同じ水槽で飼育するのは止めた方がよいようです。口に入るサイズの場合は食べてしまうことがあります。
 雑食性で自然界ではボウフラや糸ミミズ、植物性プランクトンなどいろいろなものを食べています。餌は人工餌で問題なく、その点からも飼いやすいと言えると思います。


■プラティについて、もう少し詳しく
 プラティはメダカ目、メダカ亜目、カダヤシ科、クシフォフォルス属の魚です。メダカ目は日本のメダカなども含めたメダカの仲間。カダヤシ科にはグッピー、ソードテール、モーリーの仲間、日本に住んでいるカダヤシなどが居ます。カダヤシを見ていただけるとわかるのですが、尾鰭が丸く、メダカよりも体高があり、プラティに近い体型をしています。カダヤシ科の中のクシフォフォルス属にプラティは属しています。プラティは改良品種と言うだけあって、アメリカではかなり完成された種類が多く見られるようですが、日本で店頭に並んでいる種類はあまり多くありません。その理由は定かではないですが、いろいろなプラティを見てみたいものです。ということで日本で入手できるプラティを紹介します。売り方によって名称が様々です。いろいろなプラティを一つの水槽に入れてミックスプラティなんて書いて売っていることもあります。ですので、紹介する名前は値札に書かれていることが多い名称にしてあります。脊椎異常を固定化し、体長を短くしたバルーンタイプなどもあります。また、バリアトゥスとの交配で体高が低いものが売られている場合もあります。
レッドプラティ  全身が赤からオレンジで、鰭は透明。なるべく黒い模様などが無く、赤が際だっていて、体高のあるものが良質とされています。ファイアレッドプラティというのもいます。
ブループラティ 全身が青色(薄青の鱗色)で、鰭は透明、プラティの中では地味な部類。スカイブループラティなんて種類も居ます。
ホワイトプラティ 全身が真っ白で、鰭は透明。その存在感はかなりのものがあります。
サンセットプラティ 体色が頭の方から黄色→白→赤(茶色?)とグラデーションのようになっています。
タキシードプラティ 地の体色によって名称が変わりますが、体の真ん中に黒(あるいは濃い青)の帯が大きく入り、タキシードを着ているように見えるプラティです。地の色により、タキシードスカーレット、イエロータキシードなどがあります。
ペッパードプラティ
(パンダプラティ)
これも地の色で名称が変わりますが、体中にコショウをふったような黒い粒々の模様があります。地の色により、ペッパードゴールデン、ペッパードブルーなどがあります。
ミッキーマウスプラティ 尾の付け根に黒から青のミッキーマウスの模様が付いたものです。これも地の色によって名称が変わります。ミッキーマウスオレンジ、ミッキーマウスレッド、ミッキーマウスブルーなどがあります。
タイガープラティ 体に虎柄の縞(背から腹方向)が入ったプラティ。これも地の色によってホワイトタイガーなどがあります。
ムーンプラティ 尾鰭の付け根に三日月状の柄のあるプラティ。ムーンフィッシュという名前の元になった種ですが、あまり店頭で見かけることは無いように思います。
昭和プラティ 私が見たのは、ヒレの先と鼻先が黒、頭と尾の付け根が赤く、体の中心が白いプラティです。何となく和風な色合いです。ですが、あまり見かけないように思います。
ハイフィンプラティ 背鰭が大きく伸張したプラティ。色はいろいろあります。


■プラティの魅力
 まずは色のバリエーションです。ネオンテトラのようにメタリックな感じは薄いですが、カラフルな原色系の色合いは魅力的です。交配が比較的簡単なので、いろいろな柄が生まれるためにコレクション性も高く、集め始めると奥が深いです。メダカの仲間とはいえ、日本のメダカとはかなり違う、おっとりした体型もかわいらしく、胸鰭をゆったり動かしてホバリングする姿や、ミッキーマウスの柄など、子供が喜ぶ要素が満載です。次に繁殖のしやすさが挙げられると思います。熱帯魚を飼っていれば、一度くらい自家繁殖をしてみたくなるものです。プラティは卵胎生という特徴から、繁殖が容易で稚魚の生存率も高く、繁殖の醍醐味を味わうにはかなり手頃な種類といえるでしょう。なによりも私はあのつぶらな瞳が大好きです(笑)。

■プラティの体の特徴
 体長は最大で6センチ程度、2センチぐらいの大きさから店頭に並んでいるようです。元々のプラティは体高が高く、背と腹が膨らんだような形をしています。バリアトゥスとの交配によって体高の低いスマートなプラティもよく見られます。体幅はそれほど大きくありませんが、腹が膨らむバルーンタイプのものもいます。基本的に体の部分と鰭の部分で色分けされています。それぞれの色の違いによって上記のように名前が付けられています。腹の部分の色が白っぽいことが多いです。鰭は背中側に背鰭、腹側に胸鰭1対、腹鰭1対、尻鰭がつき、尾鰭が付いています。鰭にはいくつかありまして、背鰭が延びたハイフィン、背鰭がひらひらしているセルフィン、尾鰭の真ん中が延びるピンテール、尾鰭の縁が延びるソードテールなどが知られています。目は丸くはっきりとしていて、稚魚の時などは大きな目がとてもかわいいです。

■プラティの性別
 プラティの性別を見分けるのは簡単です。成熟したオスは尻鰭が棒状に変形し、ゴノポディウムと呼ばれる生殖器官になります。尻の部分に鰭ではなく、後方に突きだした棒のようなものが見えたらそれがオスです。他にはメスの方が一回りほど大きくなり、出産が近づくと腹が膨らむことからも雌雄の判別はできます。

■プラティの繁殖
 プラティは卵胎生メダカの仲間です。卵胎生の魚とは、卵生の魚の母親体内で卵がかえり、稚魚の形で生み出されることを指します。つまり、本当は卵を体外に産むはずが、卵を腹の中に産んで、それが孵化してから体外に出すという出産形態をとることです。グッピーやモーリーなども同じです。水槽飼育での繁殖を考える場合、この卵胎生という繁殖形態は非常に有利です。卵の時代に母親の体内にいるわけですから、食害される危険が少なく、ある程度の大きさで生まれてくるので稚魚の状態でも他の魚より生存率が上がります。ですから、繁殖を楽しみたい方にはプラティはおすすめの熱帯魚ではないでしょうか。プラティは一度に3〜15匹の稚魚を産みます。
 繁殖の方法ですが、理想的にはプラティのみ、雄雌5,6匹を広めの水槽に入れ弱アルカリ性に水質を保っていれば増えやすいでしょう。ですが、混泳状態でも成熟した雄雌が揃っていれば比較的容易に増えてくれます。
 プラティの遺伝による色の変化についてですが、様々な色のプラティを混泳させた場合、世代を重ねるに従って、私の経験上、赤、黒の色が次第に強くなっていくように思えます。たとえば、上記の写真のワグプラティ(体色は赤、鰭の色は黒)と、ミッキーマウスサンセットプラティ(このページのトップの写真、ミッキー柄は青)から産まれた子供はほとんどが体色が赤からオレンジ、鰭も黒くなりました(このページの2枚目の写真)。ミッキーマウスの柄が出るものもいますが、その柄の色も黒くなることが多いです。他のパターンでもいくつかやってみましたが、やはり、赤系統と黒系統が多く出るように思います。ですので、特定の柄を残してゆきたければ、そのペアを作って隔離する必要がありそうです。

■プラティの寿命
 自然界では1年魚と言われていますが、水槽飼育ではその限りではありません。飼育環境にもよりますが、1年から2年程度。3年も生きればかなり長生きではないでしょうか。

■プラティの飼い方
 プラティを飼育するのに特別な配慮は必要ありません。弱アルカリ性から弱酸性(弱アルカリに近い方が良いようです)の水質で他の熱帯魚を飼育する場合と同じようにすれば問題ありません。また、水槽も30センチサイズの水槽から飼育することができると思いますので手軽です。プラティは全長こそ6センチほどにしかなりませんが、体高があり、ネオンテトラなどに比べると大柄なので大型魚でなければ、大部分の熱帯魚との混泳が可能だと思います。ただ、プラティの口に入る大きさの稚魚などは、自分の産んだ子供ですらも食べてしまいますので混泳は避けた方がよいと思います。
 プラティを飼うとやはり繁殖というのが楽しみになると思います。稚魚が生まれるまでは比較的簡単に行くのですが、稚魚を大きく育てるには多少の配慮をした方が生存率が上がります。一番確実な方法は、稚魚を見つけたら捕獲して親とは別の容器や産卵箱に隔離することです。そうすれば、稚魚用の餌を別に与えることもできますし、最も増やしやすい方法ではないでしょうか。あとは水槽内に隠れ家となる水草や藻などを多めに入れて、稚魚の待避場所を作ってやるのも良い方法だと思います。私は水草を多めに入れているのですが、それだけでプラティは放っておいても勝手に増える感じです。

■プラティの病気
 プラティは他の熱帯魚がかかる病気にはほとんどかかりますので、それらの具体的な病気については特に書きません。治療方法も特別に変わったことはないので、一般的な熱帯魚に施す治療を行えば良いと思います。比較的丈夫な種類ですので病気に対する耐性も高く、薬に弱いという話も特に聞きませんので病魚薬の使用も可能です。白点病などは直る確率の方が高いでしょう。とはいえ、病気にしないことが一番ですので日頃の水質管理、環境整備には気をつけた方がよいと思います。

■プラティの欠点
 欠点を探してみたのですが、プラティを飼って特にこれと言って困ることは見あたりませんでした。大きくなることもなく、他の魚と戦うこともなく、病気にかかりやすいわけでもなく、餌を選り好みすることもない。欠点とは言えないかもしれませんが、環境が良ければ良く増えるので、水槽で飼いきれなくなることもしばしばあります。また、原色っぽい色合いに飽きが来やすいという事もありますが、その分、バラエティに富んだ種類がいますのでいろいろ飼うと水槽も華やかになると思います。

■プラティの仲間
 プラティと言われているだけで上記のように種類がありますが、ここではそれ以外の卵胎生の仲間を少し紹介したいと思います。
バリアトゥス
Xiphophorus variatus
黄色やオレンジの色彩が美しい卵胎生の魚です。体長は5センチ程度で、プラティよりは細身。プラティとの交配も可能で、子供がプラティとして、バリアトゥスとして売られています。穏和で飼いやすい。ハイトップやハイフィンと呼ばれる背鰭が伸張したタイプが特に珍重されているようで、ヨーロッパなどでは美しい背鰭を持ったバリアトゥスが飼育されています。
ソードテール
Xiphophorus helleri
尾鰭の腹側が長く後方に突きだしたようになっており、その部分が剣のように見えるところからこの名が付きました。体長は5センチ程度で、プラティよりは細身。プラティと同様に色は様々あります。性格は卵胎生魚の中では少しきつめですが、混泳などには支障が出ない程度です。プラティとの交配も可能。この魚のおもしろい特徴として、性転換することが挙げられます。
ブラックモーリー
Poecilia sphenops
ブラックモーリーと書きましたが、シルバーモーリーなども同じ学名の仲間です。体長は5センチ程度、プラティと非常に似た体型をしています。ライアーテールという尾鰭の上下が長く後方に延びたタイプもいます。性格は穏和で飼いやすい。水槽の油膜を食べる事から、掃除屋として導入されることも多い魚です。
セルフィンモーリー
(ベリフェラ)
Poecilia velifera
背鰭が大きく伸張したモーリーで、全長10センチ以上にもなり、メダカの仲間では大型の部類に入るでしょう。ゴールデン、シルバー、ブラックという色違いの種類がいます。性格はそれほど荒くはないですが、体が大きくなるので狭い水槽での飼育は困難です。
バルーンモーリー
Poecilia velifera
セルフィンモーリーと学名は同じです。もともと、セルフィンモーリーの脊椎骨異常の奇形固体であったものを固定化した魚です。しかし、大きさが5センチ程度にしかならず、体型もセルフィンモーリーとはかなり違うので、分けて紹介します。性格は穏和で、体長が短く腹がぷっくりと膨れたユーモラスな体型をしています。日本ではそこそこ人気があるようですが、奇形であることから欧米では敬遠されているようです。


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