ネオンテトラ

 ネオンテトラです。熱帯魚界を代表する有名な魚です。熱帯魚を飼ったことも無い方でも名前ぐらいは知っている。そのくらい知名度が高く、様々な場所で飼われています。そのため流通量も多く、とにかく値段が安く(1匹10円というのを見たことがあります)、どこでも売ってて、綺麗でと、かなり優秀なお魚です。ちょっと水質変化には弱い面もあるようですが、気になるほどではないです。丈夫さで言うなら、コイの仲間に一歩譲ると思いますが、それでも飼うのに特別な配慮は必要ありません。人工餌にも慣れますし、穏和で、他の魚に危害を加えることはまずありません。値段が安いのでかなりの数をそろえることが容易で、群泳させるとさらに美しく水槽を飾ってくれます。
 入手しやすさ、飼いやすさ、見た目の美しさから、入門魚として紹介されることも多く、この魚を熱帯魚飼育の出発点としているアクアリストも少なくないと思います。そういう手軽さからか、存在を軽視されがちなのが残念なところでもあります。

【通称】 Neon Tetra(ネオンテトラ)
【学名】 Paracheirodon innesi
【分布】 アマゾン川
【体長】 4cm
【水温】 20〜28度
【水質】 中性から弱酸性

■ネオンテトラについて
 ネオンテトラの名前の由来ですが、ネオンとは元素の名前ですが、ネオン灯などの明かりを意味していると思われます。つまり、ネオンテトラの体色をネオンサインの見事な発色に例えているのでしょう。次にテトラですが、カラシン目のカラシン亜目のカラシン科の魚につけられることが多い名前のようです(調べが足りずに申し訳ないです)。テトラというと、ギリシャ語で4という意味がありますが、それとの関係はいまいちよくわかりません。とりあえず、ネオンサインのように美しく輝くカラシンという意味でしょう。

 ※2010年10月7日追記
 ”テトラ”の名前の由来について、上で、私はわからないと書いてありますが、それに関して、アスカさんから情報を頂いたので、追記します。
「19世紀にアマゾンに入った生物学者(魚関係だったはず)が、油鰭を持った小型魚類(カラシン)の特徴として、”四角い尻鰭(テトラゴノプテルス)属」と総称した事の名残です。今では「カラシン目ハイフェソブリコン科〜〜〜”とかいう学名が付いているのですが、そのカラシン目自体が確立されていなかった時に使われていた総称が、テトラゴノプテルスという名前だったはずです」とのことです。
テトラという名前の由来は、四角い尻鰭のことだったんですね。とても勉強になりました。わかって、私もホッとしております(^^) アスカさん、ありがとうございます。

 学名のParacheirodon(パラケイロドン?)というのはネオンテトラの仲間(パラケイロドン属)を示しています。同じ属には、カージナルテトラとグリーンネオンテトラがいます。どれも穏和で飼いやすく、有名な種類ですね。
 ネオンテトラが生息しているのはアマゾン川、上流の方にいるようです。昔はワイルドものを採取してきた個体ばかりだったので、ものすごい高値で取り引きされていたようですが、現在は東南アジア、香港などで養殖されたものが輸入されるので、非常に安価になっています。ですから、店頭で見られるネオンテトラのほとんどが、ふるさとのアマゾン川など知らずに育った魚たちということですね。
 水温、水質共に多数の淡水熱帯魚の飼育環境と一致しますので、混泳に問題はないでしょう。熱帯魚飼育の初心者が一番最初に導入する魚として有名ですが、後々軽視されがちなのが非常に残念なところです。また、安価なことからパイロットフィッシュとして使い捨てのように扱われている状況も心が痛みます。個人的にはもう少し高く評価されても良いような美しい魚だと思います。
 性格は穏和で、個体差もあまり大きくはないようです。よほど小さなもの(稚魚や卵)でない限り、食べてしまうようなこともないようですので、これほど混泳向きの魚も居ないように思います。

■ネオンテトラについてもう少し詳しく
 ネオンテトラはカラシン目、カラシン亜目、カラシン科、テトラゴノプテルス亜科、パラケイロドン属の魚です。カラシンの特徴は円形の鱗、背鰭の後ろに脂鰭を持つことなどが挙げられます。分布域はユーラシア大陸以外の大陸、特にアフリカと南米に多いようです。カラシン目にはカラシン亜目とエリスリヌス亜目があり、カラシン亜目にはいくつかの科があり、カラシン科には170の属があります。ですので、全部を列挙するのは到底無理です。というか、説明しつつ自分でもわからなくなってきました。とにかく、その中のパラケイロドン属にネオンテトラは属しているわけです。

■ネオンテトラの魅力
 何はともあれ、あの色ですね。背中に走るメタリックブルーに尻側の赤、そして腹側の白。その3色が織りなす絶妙な美しさは数ある熱帯魚の中でも際だっていると思います。しかも光の当たり方によって微妙に色合いが変化します。単純に綺麗です。それと、容易に群れてくれることでしょうか。ネオンテトラを水槽にたくさん入れると、群を作って泳いでくれます。作ってくれないときは少し大きめの魚を混泳させると、危機意識からか群れてくれることが多いです。とにかく、一匹だけでも美しいところを、群れて一度に方向転換したときの美しさといったら、たまらないものがありますね。良くテレビの自然番組なんかでやっている海洋魚が一斉に向きを変えて逃げるシーンなんかが水槽の中で展開されます。それを見ているとため息が出ますね。

■ネオンテトラの体の特徴
 体長は最大で4センチ程度、2センチぐらいの大きさから店頭に並んでいるようです。体高、体幅共にそれほど大きくなく、普通の魚体型(いったいどんな体型でしょう?)をしています。鼻先から目の上、背中を通って尾鰭の付け根までメタリックブルーの線が入り、顎から腹を通って尻の手前ぐらいまでが白(鱗色)、その後ろから尾鰭の付け根までが赤に色分けされています。鰭は背中側が前から背鰭、その後ろに小さな脂鰭、尾鰭、腹側が左右に胸鰭、腹鰭、尻鰭がついています。尻鰭が比較的大きく、背鰭と共に広げるとなかなか格好良いです。鰭は全て透明です。暗いところなどにいると体色が抜けたような色になりますが、明るいところに出てきて数分で元の色に戻ります。また、老化などでも体色は褪せていきます。

■ネオンテトラの性別
 成熟すると、メスの方がオスよりも一回りほど大きくなるようです。幼魚の段階で区別するのは難しいです。繁殖期になると、メスは腹部にオレンジ色の卵を抱えるので、それで判別することも可能になります。

■ネオンテトラの産卵、孵化
 水草の茂みに産卵したり、水槽内に卵をばらまくように産み付けたりします。繁殖の簡単な卵胎生メダカの仲間ほどではないですが、水槽内での産卵も比較的容易に見ることができます。しかし、孵化した稚魚が非常に小さいため、他の魚に捕食されやすく、また餌を与えるのも難しいので稚魚を育てるのはなかなか困難なようです。きちんと卵の段階から隔離するなどの設備と配慮があれば、繁殖させることもできるようです。

■ネオンテトラの寿命
 飼育環境にも寄りますが、1年半から2年程度。3年以上生きればかなり長生きではないでしょうか。

■ネオンテトラの飼い方
 ネオンテトラだからといって特筆することはありません。中性から弱酸性の水質で他の熱帯魚を飼育する場合と同じようにすれば問題ありません。20センチクラスの小さな水槽から飼育が可能です。ただ一つ気をつけないといけないことは、混泳する相手についてです。ネオンテトラは体も小さいですし、性格もおとなしいですから、滅多に他の魚に危害を加えることはありません。せいぜい、成熟したネオンテトラが、卵や小さな稚魚を食べることがあるかどうかといったところでしょうか。ですが、問題なのはネオンテトラよりも大きな魚との混泳です。ネオンテトラが口にはいるくらいの魚との混泳はあまり好ましくありません。エンゼルフィッシュなどでも、大きくなるとネオンテトラを捕食するようになりますので、混泳の際はなるべくネオンテトラと同サイズの魚にする事をおすすめします。

■ネオンテトラの病気
 ネオンテトラは他の熱帯魚がかかる病気にはほとんどかかりますので、それらの病気については特に書きませんが、ネオンテトラを含めた小型魚にかかりやすいネオン病について少し書きたいと思います。
 ネオン病はネオンテトラやカージナルテトラがかかることが多いのでその名が付いたと言われている病気で、体のつやがなくなり、やがて赤やブルーの色が抜けて白っぽくなるという症状が出ます。さらに進行すると、背骨が曲がる症状が出ることもあるようです。この病気ですが、残念ながらかなり致死率が高いようです。ネット情報ではこの薬が効いたとかいろいろあるのですが、統一的な治療方法を見つけることができなかったので書きません。ざっと調べた感じでは、特効薬も無いようです。しかも、この病気のやっかいなところは、伝染性があり、病魚を水槽に入れたままにしておくと他のネオンテトラにも感染する可能性が高いことです。ですから、この病気のネオンテトラを見つけた場合、治療と言うよりは、それ以上の病気の拡大をくい止めることを考える方が利口かもしれません。この病気の原因は、菌が寄生することによって引き起こされるのですが、それは水槽の水質悪化、環境の急変などのストレスなどでネオンテトラの状態が良くないときにかかることが多いようです。予防のために、常に良い環境の水槽を心がけることが大事です。

■ネオンテトラの欠点
 一応欠点を探してみたのですが、ネオンテトラを飼って特にこれと言って困ることは見あたりませんでした。大きくなることもなく、他の魚と戦うこともなく、病気にかかりやすいわけでもなく、餌を選り好みすることもなく…。強いて欠点を挙げれば、小さいので迫力がない。特異な行動をとったりしないのでおもしろくない。寿命が短い。などですが、どれもネオンテトラを飼えないほどの決定的な欠点ではありません。ある意味、飼育するにあたっては理想的な魚なのかもしれませんね。

■ネオンテトラの仲間
 クラウンローチの時はボティアの仲間とローチの仲間を書いたのですが、ネオンテトラは仲間が多すぎて書き切れません。カラシン科には800種類以上の魚が属しています。最も近いパラケイロドン属には、カージナルテトラなどがいます。また、ネオンテトラの突然変異体を固定化した改造種も多数存在します。プラチナネオンテトラなどがその例です。


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