ラスボラ・ヘテロモルファ

 ラスボラヘテロモルファです。腹から尾にかけての模様を指してバチなどと呼ばれていることもありますね。アクアリストの間ではかなり有名ですが、一般にはあまり知られていないようです。水草水槽に良く合うとのことで好んで水槽に入れられますので目にする機会も多く、珍しい魚ではありません。値段も安く、10匹単位で売られていることもしばしばです。ラスボラといえばヘテロモルファと言われるほどにラスボラ属の中では有名な魚ですが、売られている場合にはラスボラ・エスペイと混同されていたりする場合も多いようです。私の家にいるヘテロモルファも店ではエスペイという値札が付いていました。
 飼い込むと綺麗に赤く発色する美しい魚です。どこにでも売っていますし、丈夫で水質の変化にもある程度追従するので私はパイロットフィッシュにしています。今までやってきた中でパイロットフィッシュとしては一番死亡率が低い(10匹入れて、水槽立ち上げ1ヶ月で1匹も死なないこともよくありました)ので、とにかく魚を殺したくない私としては重宝しています。餌は人工餌から生き餌まで幅広く嗜好しますし、性格もおとなしいので他魚と混泳させても何ら問題はありません。
【通称】 Harlequin Rasbora、
Rasbora heteromorpha
(ラスボラ・ヘテロモルファ)
【学名】 Trigonostigma heteromorpha
(Rasbora heteromorpha:1999年まで)
【分布】 マレー半島、スマトラ
【体長】 3cm
【水温】 22〜28度
【水質】 中性から弱酸性(酸性の軟水を好む)


■ラスボラ・ヘテロモルファについて
 名前の由来ですが、学名の通りです。その学名がどうして付いたのかはわかりませんでした。その学名が最近変更になった(属が変わった)のでこれから通称が変化していくのか、それともラスボラのままで通すのか、気になるところですね。でも、現状ではラスボラのままで支障はないようです。
 別名でバチなんて呼ばれていますが、これは腹から尾にかけての紺色の模様が三味線のばちの形に似ていることから付けられた名前のようです。ということは、この名前は日本でしか通用しないということになりますね。海外ではなんて呼ばれているのでしょうか。
 学名のTrigonostigma (トリゴノスティグマ)というのはヘテロモルファの仲間(トリゴノスティグマ属)を示しています。同じ属には、ヘテロモルファと一緒に移ってきた、エスペイ、ヘングリなどがいます。どれも性格は穏和で、飼いやすい種類ですね。熱帯魚屋さんではこれらを混同して売っていることもあるようです。
 東南アジアに広く分布しているという話もありますが、メインはマレー半島やスマトラのようです。この魚はあまり養殖個体が輸入されるということはなく、売られているのは現地採取のワイルドものが多いようです。
 水温、水質共に多数の淡水熱帯魚の飼育環境と一致しますので、混泳に問題はないでしょう。ただし、ラスボラ・ヘテロモルファのみを飼い込んで綺麗に赤く発色するように育てようと思ったら、pHを下げてかなりの軟水にするのが望ましいようです。混泳して楽しむも良し、じっくりと飼い込んで本来の発色を目指すも良し。初心者から玄人まで幅広く楽しめる魚ではないでしょうか。
 性格は穏和で、個体差もあまり大きくはないようですので、混泳向きの魚だと思います。
 餌は生き餌から人工餌まで問題なく餌付くと思いますので、飼いやすいでしょう。


■ラスボラ・ヘテロモルファについて、もう少し詳しく

 ラスボラ・ヘテロモルファはコイ目、コイ科、ラスボラ(ダニオ)亜科、ラスボラ属の魚です。コイ目はコイの仲間(そのままですね)です。コイ科なので、クラウンローチのドジョウ科に比べればもっとコイっぽくなります。ラスボラ(ダニオ)亜科にはゼブラダニオなどが居ます。その中のラスボラ属に位置する魚です。ラスボラ属の魚はたくさん居ます。だいたい、ラスボラ〜、〜ラスボラという名前が付いていますのでわかりやすいでしょう。ですが、このラスボラ・ヘテロモルファは、最近ラスボラ属から脱退?したらしいです。分類が変わったと言うことですね。ということで、これだけ説明しておいてなんですが、ラスボラ・ヘテロモルファはラスボラ属の魚ではありません。ちなみに新しい属はトリゴノスティグマ属です。といってもラスボラ亜科の魚なので何が違うのかは良くわかりません。でも、とりあえず現在は正式な学名もトリゴノスティグマ・ヘテロモルファになっています。とはいえ、誰もこんな長い名前は呼びません。しばらくはラスボラ・ヘテロモルファで良いのでしょうね。


■ラスボラ・ヘテロモルファの魅力
 まずは見た目の美しさです。あまり環境が良くない状態でもうっすらとピンク色に体が染まり、それと対照的に腹から尾までに紺色の模様が付きます。さらに、尾鰭と尻鰭、背鰭にオレンジのすかしが入り、白目の部分もオレンジ色に染まります。これがさらに飼い込まれた個体になると全身が赤みを帯びて美しく輝きます。私の好みなのですが、腹鰭と背鰭をピンと立てた状態になると、ファントムテトラのように格好がよく、ビシッとした綺麗な体型は魅了されます。また、この色合いから水草水槽によく映えます。そして、10匹以上で群泳させると非常に美しく、水槽を彩ってくれること間違い無しです。しかも値段が安いので、たくさん購入するにも負担が少なくてすみます。いろいろな面でかなり優秀なお魚ですね。


■ラスボラ・ヘテロモルファの体の特徴
 体長は最大で4センチ程度、2センチぐらいの大きさから店頭に並んでいるようです。比較的体高が高いですが、鰭や体の端々がシャープなのであまり太っているという印象は受けません。体幅はそれほど大きくありません。典型的なお魚体型です。状態によって発色の度合いが変わりますが、腹から尾にかけて紺色の模様があり、それ以外は基本的に鱗色、赤い発色は背中の方が強く、発色度合いが進むに連れてお腹の方も赤くなる傾向にあるようです。鰭は背中側に背鰭、腹側に胸鰭1対、腹鰭1対、尻鰭がつき、尾鰭が付いています。背鰭と腹鰭、尾鰭にオレンジ色のすかしがあり、尾鰭の付け根にオレンジ色のスポットが入ります。体が赤みを増してくると、白目の部分もオレンジ色になります。顔をよく見るとやっぱりコイっぽい感じがします。
 この魚はワイルドものの採取個体が売られていることが多いのですが、その採取された場所によって多少の違いがあります。マレー半島の北の方では体高が低く、色も青みがかっている傾向があるようです。それが南に行くほど体高が高くなり、色も赤が強くなるとのことです。

■ラスボラ・ヘテロモルファの性別
 ラスボラ・ヘテロモルファの性別を見分けるのはなかなか難しいようです。成熟した個体同士を比較した場合、メスの方が体高が高くなるというくらいが外見上の性別判断の方法ではないでしょうか。

■ラスボラ・ヘテロモルファの繁殖
 ラスボラ・ヘテロモルファは卵生の魚です。オスが赤く発色するようになり、メスを追いかけ回します。そして、受精したメスは粘着性の卵を水草の裏などに産み付けます。このような課程で繁殖するのですが、水槽内ではなかなか難しいようです。環境としては、水温27度程度、弱酸性(pH5程度)の軟水を用意し、広い空間に6匹程度を飼育して、水草を多めに入れると繁殖させることができるようですが、あまり事例を聞きません。卵の時代は短く、2日程度で孵化するようです。

■ラスボラ・ヘテロモルファの寿命
 コイ科の仲間は長生きなのが多いのですが、ラスボラ・ヘテロモルファも小型魚にしては長く生きるようで、3年は大丈夫みたいです。5年もののラスボラ・ヘテロモルファというのも珍しくないようですので、環境によってはかなり長生きするみたいですね。

■ラスボラ・ヘテロモルファの飼い方
 ラスボラ・ヘテロモルファを飼育するのに特別な配慮は必要ありません。中性から弱酸性(弱酸性が良いようです)の水質で他の熱帯魚を飼育する場合と同じようにすれば問題ありません。また、体が小さいので20センチサイズの水槽から飼育することができると思います。性格が穏和で他魚を攻撃することはまずありませんから、多くの熱帯魚との混泳が可能だと思います。ただ、何せ体が小さいので肉食の中・大型魚との混泳は避けた方が無難です。動きが機敏なので、容易に捕まることはないとは思いますが、念のため。

■ラスボラ・ヘテロモルファの病気
 ラスボラ・ヘテロモルファは他の熱帯魚がかかる病気にはほとんどかかりますので、それらの具体的な病気については特に書きません。治療方法も特別に変わったことはないので、一般的な熱帯魚に施す治療を行えば良いと思います。比較的丈夫な種類ですので病気に対する耐性も高く、薬に弱いという話も特に聞きませんので病魚薬の使用も可能です。かなり丈夫な魚なので病気にかかる頻度も他の魚よりも低いように思います。私の場合、白点病が水槽内に蔓延してもこの魚だけはそれを免れていたという経験があります。とはいえ、病気にしないことが一番ですので日頃の水質管理、環境整備には気をつけてください。また、できる限り、ラスボラ・ヘテロモルファの好きな水質にしてあげてください。

■ラスボラ・ヘテロモルファの欠点
 欠点らしい欠点は見あたりません。餌、性格、環境、どれも非常に飼育向きで特別な配慮は一切必要ありません。飼育で特に困ることはないと思います。水槽内にラスボラ・ヘテロモルファの数が少なく、他に派手な魚が入っていると存在感が薄くなることはありますが、この魚を飼っていて弊害が発生することは皆無といっても良いでしょう。熱帯魚屋さんで売られているときに付いている名前が間違っている場合があるとか、長生きなので飽きるとか、そういった人間側のご都合しか見つけることができませんでした。

■ラスボラ・ヘテロモルファの仲間
 ラスボラには非常に多くの仲間がいますし、熱帯魚屋さんでもたくさんの種類が売られていますので全部を紹介することはできませんが、とりあえずラスボラ・ヘテロモルファと同じトリゴノスティグマ属の仲間と、有名なラスボラ、ダニオの仲間を挙げてみようと思います。
ラスボラ・エスペイ
Trigonostigma espei
ヘテロモルファよりも体高が低く、バチ模様も細い(すでにバチ模様では無いような気がする)。その代わり、ヘテロモルファよりもかなり赤みを帯びてくるので、ラスボラ種の中ではヘテロモルファと人気を分け合うような形になっている。性質はヘテロモルファとほとんどかわりがありません。
ラスボラ・ヘンゲリ
Trigonostigma hengeli
体の形はエスペイによく似ています。でも、エスペイよりも多少小さめで、バチ模様の上に赤いラインが入り、体の他の部分は鱗色になる魚です。ヘテロモルファ、エスペイに比べると入荷量は少なく、見る機会もあまりありません。これも性質はヘテロモルファとほとんどかわりません。
ラスボラ・ソムフォングシ
Trigonostigma somphongsi
トリゴノスティグマ属の仲間なのですが、手元に資料が無くて、どんな魚なのかいまいちよくわかりませんでした。調べが付いたら載せます。
金線ラスボラ
Rasbora borapetensis
その名の通り、金色の線が体を前から後ろに向けて走っています。その線のすぐ下に黒い線も入っています。それ以外の部分は灰色(鱗色)で、尾鰭の付け根が赤いです。一見するとアカヒレに感じが似ています。5センチ程度まで大きくなります。水質もあまりうるさくなく、穏和なので混泳向きの魚でしょう。
ミクロラスボラ・ブルーネオン
Microrasbora kubotai
学名を見るとわかりますが、久保田さんという方がこの魚を見つけたらしいです。体長は3センチほどで、美しいメタリックブルー(光の加減で黄色がかっているようにもみえる。蛍光ペンのような色合い)に輝く体色の魚。水質には多少うるさい面もありますが、一度安定してしまえばかなり丈夫に飼育できます。
ブルーアイ・ラスボラ
Rasbora dorsiocellata macrophthalma
体長は3センチほどで、アフリカンランプアイのように、目がメタリックブルーに光り輝くという特徴があります。その他の部分はメダカのような体色なので、一見すると地味に見える魚です。丈夫で穏和なので、混泳に問題はないようです。
ラスボラ・アクセルロディ
Rasbora axelrodi
主に背側の色の違いでブルー、レッド、グリーンなどのタイプがあり、それぞれに非常に美しいです。体長は3センチほどで性質はヘテロモルファと似ていますが、臆病で水質にうるさい面もあるので飼うときは注意が必要です。
ゼブラ・ダニオ
Brachydanio rerio
白と黒のストライプが名前の通りシマウマのように見える印象的な魚です。良く流通している一般種なので入手は容易だと思います。体長は3センチほどで、非常に穏和、丈夫、と飼いやすい魚です。


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