クラウンローチって?

 ということでClown Loachについてです。オレンジ色の体色に黒い縞が美しい熱帯魚。この姿と、横に寝たり、縦?!に寝たりする特異な習性と、胸鰭をばたばたと動かしてホバリングするかわいらしい泳ぎ方に魅せられてしまいました。

 まずは良く知られているデータを少し。

【通称】 Clown Loach(クラウンローチ)
【学名】 Chromobotia macracanthus
(旧学名:Botia macracantha)
【分布】 インドネシア、ボルネオ
【体長】 20cm(野生種で30cm)
【水温】 23〜28度
【水質】 中性から弱酸性
■クラウンローチについて
 クラウンローチの名前の由来ですが、クラウンとは道化師という意味です。このオレンジ色に黒の縞という派手派手な体色がそういう名前の元になったのでしょう。それに、写真が悪くてよく見えないのですが、尾鰭がうっすらとしたオレンジ色、胸鰭がかなり濃い、赤に近いオレンジ色で、それをぱたぱたと動かして必死に泳ぐ姿は一見すると派手な衣装を着ておどけているピエロにも見えます。絶妙な名前の付け方だなと思うところですね。ローチというのはドジョウの仲間であるという意味です。日本人であればドジョウといえば、ウナギのように細長くてニョロニョロしたモノを想像するところでしょうが、れっきとしたそれの仲間です。その証拠に口にはヒゲが何本も生えています。クラウンローチの顔を前から見るとやはりドジョウであることがよくわかると思います。目や口の付き方、顔の形などがよく見るドジョウとうり二つです。その目がなんかキョトンとしててかわいいんですけどね。
 学名のChromobotia(クロモボティア)というのはクラウンローチの仲間(クロモボティア属)を示しています。が、調べてみたところ、現在、クロモボティア属にはクラウンローチしかいません…(^^;)。もしかしたら居るのかも知れませんが、もしもご存じの方は教えてください。で、このクロモボティアというのは、新しく付けられた学名で、以前は、ボティア属というのに属しておりまして、今でもその名残でボティアの仲間と言われることが多いです。ちょっと横道にそれますが、このボティアの仲間というのは、少し前の学名の整理で細かく分類し直された仲間です。なぜ分類が変わったのかは、私にはわかりませんが、今でも、流通段階においては、ボティア〜、もしくは〜ボティアと言う名前で売られている魚が多いです。この種類はかなり気性の荒い魚が多いようで、混泳水槽には向いていない魚もけっこう居ます。そんな中でもクラウンローチは穏和な方で滅多に他の魚を攻撃したりはしません。どちらかといえば臆病といっても良いくらいで、人影が水槽の前にやってきただけでも後ろの方に逃げてしまうこともしばしばです。(旧)ボティアの仲間やローチと名の付く熱帯魚についてはあとでまとめて紹介します。
 クラウンローチがもともと住んでいるのはインドネシアやボルネオ近辺とのこと。実際行ったことはないのですが、いつかワイルドモノのクラウンローチを見に行ってみたいですね。なんでも30センチを越える個体が居るとか。水槽飼いではそこまで大きく育てることは不可能だと言われています。せいぜい頑張っても20センチくらいが限界だとか。180センチ水槽でも無理なのでしょうか。やっぱり自然の力は偉大だって事ですね。
(白地図 提供元:世界の地図・世界の国旗
 適性水温もpHも一般的な熱帯魚と同じですので、この辺りから見ても混泳水槽のお供に最適だと言えると思います。よく、スカベンジャー(餌の残り物を掃除する魚)とか、生物兵器(水槽内のスネールを退治する)とか言われて導入されることが多いのがちょっと残念なところです。確かにそういった性質もあるのですが、やっぱり、残り物といつもいるとは限らないスネールだけが餌ではちょっとかわいそうです。クラウンローチは肉食に近い雑食性の嗜好ですが、人工餌にも良くなれます。ですから、是非ともきちんと餌をあげて大切に育ててください。コリドラス用のタブレットフードなどはよく食べますので、最適だと思います。もちろん、アカムシやイトメなどの生き餌なんかあげると非常に喜びますけどね。


■クラウンローチについてもっと詳しく
 クラウンローチのことについてもう少し詳細に説明しようと思います。クラウンローチはドジョウ科アユモドキ亜科のクロモボティア属の魚です。ドジョウ科は硬骨魚網コイ目の淡水魚、つまり硬い骨を持った淡水魚でコイにもけっこう似ているということになるのでしょうか。ヒゲとか顔つきとかどことなく似てますけどね。このドジョウ科というのは、いろいろな特徴でシマドジョウ亜科、アユモドキ亜科、フグドジョウ亜科の3つに分類されています。で、シマドジョウ亜科は日本にいるおなじみのドジョウ(ドジョウ属)が属しているところで、有名なクーリーローチの種類はシマドジョウ亜科パンギオ属に分類されています。フグドジョウ亜科にはホトケドジョウの種類が属しております。と書いていますが、私にはその辺りの詳しいことはさっぱりわかりません。この解説は本からの要約です。で、クラウンローチの属しているアユモドキ亜科にはクロモボティア属、アユモドキ属、ボティア属、シナボティア属、レプトボティア属などというのがあるらしく、この辺りに来ると何が違うのか全くわかりません。とにかく、その中のクロモボティア属にいるのがクラウンローチです。
 性格は穏和(個体差がかなりあることは熱帯魚を飼った人なら良く知ってますよね。でも、一応穏和と表記しておきます)、普段は物陰に隠れて居ることが多く、底砂を掘り返して餌を探します。胸鰭を動かしてホバリングするように泳ぐこともあり、その姿がかわいらしいです。


■クラウンローチの体
 まずは、クラウンローチの体についてイラストを書いてみたのでみてください。


●吻(ふん):眼よりも前の部分を指します。
●ヒゲ:左右4対で、上顎に2対、下顎に2対ずつ、合計8本のヒゲが生えています。
●眼下棘(がんかきょく):眼の下のスジの部分から出てくる棘
●上顎(うわあご):口の上側
●下顎(したあご):口の下側
●鼻孔(びこう):左右に一つずつついている鼻です。
●眼(め):左右に一つずつついています。
●鰓蓋(えらぶた):鰓の上に被さった部分。その中に鰓があります。
●胸鰭(むなびれ):胸にある鰭。左右に一つずつついています。
●腹鰭(はらびれ):腹にある鰭。左右に一つずつついています。
●尻鰭(しりびれ):尻にある鰭。胴体の真ん中に1つついています。
●尾柄(びへい):尾鰭の付け根部分です。
●尾鰭(おびれ):胴体の真ん中、一番後ろに1つついています。

●補足事項
 飼育されるドジョウの種類の中では最もカラフルかつポピュラーな種類で、体高が高く、その割に体幅は狭くなっています。体の大きさに対して頭の割合は大きく、口は下方に向いてついています。 一般的な体色は、明るいオレンジで、体側面に、 3 本の黒いバンドがはしっています。頭側から数えて一番最初のバンドは、頭蓋骨の一番上から目を横断して、口の方へとつながっています。二番目のバンドは、背びれの前からはじまり、腹まで伸びているか、体側面の途中で丸く切れています。三番目のバンドは、背鰭からはじまり、尾鰭の付け根部分部分を覆って、尻鰭の方に流れる形になっています。鱗はなく、皮膚が体を覆っています。
 クラウンローチの大きさは水族館などで飼っていても25センチを越えるくらいが限界と言われています。野生では30センチを越えるモノも多く見られるそうです。
 クラウンローチの特異な特性として、水槽の底に横になって寝ることがあげられます。クラウンローチが警戒心を持たずにいるときにそういった動作を示すことが多いようです。また、クラウンローチは底砂を掘り返す習性があります。それは、本来砂の中にいる餌をとるための行動ですが、水草も掘り返すので注意が必要です。
 クラウンローチの餌はブラインシュリンプ、 糸ミミズ 、アカムシ、スネールなどの生き餌、及び、乾燥した食物 (乾燥エビ、乾燥糸ミミズなど)、人工飼料でも問題ありません。 なるべく蛋白質とビタミンを取れるような食物が望ましいと言われています。

●眼下棘(がんかきょく)について
 眼下棘は日本のどじょうにも付いている眼の下のスリットの部分から出てくる棘です。それは、敵と戦うときに使うとのことですがどうやって戦うのかは不明です。ですが、どうやら気が立っているときや、危険を感じたときには棘を出して警戒するようです。
 以下に棘についての目撃例と写真を載せます。しゅうさん、ぴっちさん、情報ありがとうございました。
しゅうさんの目撃例(コンテンツ用に少し修正して転載しています)
「棘ですが、知らずに水槽移動の時、素手で鷲掴みにしようとしてさされました(><)素手はダメです。あと網も要注意(引っかかりまくりですよね)だからプラケースか何かで掬ってあげると傷もつかず安心。多分棘の位置は目の斜め下辺りに有ると思います。普段は皮膚に同化してるか格納されているのか、はっきり見えません。硬さは堅くて色は白っぽいです・・毒は無いと思いますが。基本は身を守るために付いているのでしょう。コリやプレコも同様に敵に喰われそうになったり口にくわえられたりした時に胸鰭を広げたりするのと同じ理屈だと思います。後、流木なんか入れて隙間に入ったら人の手ではなかなか出せないのは、棘を広げてつっかえ棒にしているからでしょうね」
とのご意見をいただきました。後日、棘の出る場所についての写真とコメントをいただきました。
「これが刺の隠し場所(多分)!?「新入りくんの顔に傷?」っと、少々焦りましたが、よく見ると・・この位置はもしやということで写真を撮りました。」
とのことです。写真を見ると、確かに白いスジが横に入ってます。これが、棘の出る穴のようです。

ぴっちさんの目撃例(コンテンツ用に少し修正して転載しています)
「これが、“謎”にあった目の下の棘?最初目撃した時は、両目の下から白い物がニョキッと出てました。一瞬でもとの顔に。今のは何だったんでしょう?穴のあく程見ても、そんな物の形跡は見当たりません。30分後くらいに、さっきニョキッとさせてたコが今度は片側だけ…。な、な、何これーっ!!しかも出しっ放しだし。かなり不安になりましたが、目撃しているのは私一人。ともかく写真、写真!macに写真落としている5分くらいの間に、また元の顔に戻りました」
とのことです。それにしてもすごいのが出てます。


■クラウンローチの性別
 ネットの情報ですので確実かどうかは疑問ですが、複数の海外のサイトで紹介されていた性別の区別の仕方を紹介します。オスは尾鰭が長く、深いV字型をしておりそれを誇示することでメスの気をひくようです。つまり、尾鰭の長さ、スリットの深さそれぞれが大きいのがオス、尾鰭が短く、スリットも浅いのがメスということになります。また、メスの方が細長く、体格も華奢な場合が多いようです。

■野生のクラウンローチ
 野生の状態において、クラウンローチは、主に水の沸きだし口や、流れの速い川で発見されることが多いようです。また、薄暗い隠れ家に身を潜める習性があるので、倒木が川に沈んでいたり、水中に根を張る植物のある様な場所で見つけることができます。ですが、飼育するにあたっては、特にブラックウォーターなどの指定はなく、透き通った綺麗な水で良いです。流れもあればよいようですが、止水でも何ら問題はなく、他の熱帯魚と同様の環境で飼育することができます。クラウンローチは、大きい石、木の下、落ち葉の間などの隙間に隠れて多くの時間を過ごしますのでその様な場所を作ってやることも飼育するには必要です。

■クラウンローチの地域差
 クラウンローチは産地によって微妙な違いがあるらしいのでそのことを少し。
 ボルネオ産のクラウンローチは腹鰭が暗く、時折赤かオレンジに光る程度ですが、スマトラ産のクラウンローチは腹鰭が全て赤かオレンジの明るい色をしているようです。また、ボルネオ産のクラウンローチの尾鰭の赤色は尾鰭の付け根までで止まりますが、スマトラ産のクラウンローチは尻鰭の方まで赤が延びています。ヒレの色で産地がわかるんですね。 

■群れた場合のクラウンローチ
 私の飼育経験からの話ですが、クラウンローチは単独で混泳水槽に入れるとほとんどの場合、流木や水草の陰に隠れてあまり出てこなくなります、3匹くらいで飼うと、だんだんと前に出てくるようになり、5匹以上になると堂々と水槽の中を泳ぎ回るようになるようです。特に、体長が7センチ未満くらいの小さなうちはこのような傾向が強いようです。大きくなると、単独でも正面に出てきて他の魚を押しのけるようにして餌を食べることも多くなります。また、5匹以上でグループを作った場合、そのグループには序列が出来上がるようです。ボスが1匹、副ボスが2匹程度、その他という感じになるように思います。体の成長も、ボス、副ボス、その他の順で大きくなり、同じ大きさだったはずが、ボスが12センチを越えるくらいになると一回りくらいずつ違ってくるようになっていました。私が勝手に大きさの順でボスだとか副ボスだとか決めているだけかもしれませんが、大きいということはそれだけたくさんの餌を食べることができたということですから、あながち間違ってもいないように思います。
 ただ、1匹で飼っていると見れなくなると言うわけではないですし、特に問題があるとも思いませんので、それはそれで良いと思います。

■クラウンローチの体色変化
 クラウンローチを飼育してみるとわかるのですが、黒い縞縞が薄くなっているのを見かけることがあります。はじめてクラウンローチを飼われる方はそれを見て病気じゃないかとか、驚かれるようなのでその事について少し。黒い縞縞は、クラウンローチの状態によって濃さが変化します。特に暗いところに隠れていてそこから出てきたときや、照明をつけたばかりの時など、光の当たり具合で縞縞が薄くなることがあります。それは、光の元で5分も経つと元の色に戻ります。また、何かの刺激でクラウンローチが興奮(しているように見える)したときにも縞縞が薄くなることがあります。群れているときにも希に薄くなることがあります。そのどの場合も興奮がおさまったり、群から離れたりすると、すぐに元に戻りますのであまり心配しなくても良いでしょう。成長すると縞縞が薄くなる場合もあります。また、他のクラウンローチに比べて初めから色が薄い個体もいるようです。人間も色白とか色黒とかあるように、魚にもあるみたいですね。この場合も特に気にする必要はありません。ただし、元々色が濃かった縞縞が薄くなった状態が長く続くようであれば、それは少し問題です。病気や、水質、環境の悪化が懸念されます。ですが、それは確実な指標ではないので、可能性を疑ってみるという程度に考えてください。また、逆に病気でも縞縞が薄くならない場合も多々ありますので、あくまでも縞縞の濃さは指標の一つでしかないことを覚えておいた方がよいと思います。

■海外でのクラウンローチの名前
とりあえず、インターネットに情報を載せていることですし、一応インターナショナルということで、ネットで調べてみました。HPを探しながらクラウンローチをさしているであろう単語を拾ってきたのですが…。実際にはその国の言葉が読めないので、もしかしたら全く違うものを紹介しているような気もしてちょっと危ういコンテンツですがお許しを。ちなみに、この記事を書くに当たっては、みどりさん、佐和子さん、チャーリー・ウォンさんにご協力をいただきました。ありがとうございます。
言語 呼び名 解説
英語 ClownLoach(クラウンローチ)
TigerBotia(タイガーボティア)
日本では、タイガーボティアは別の魚を指すのですが、、英語ではこのように呼ぶ場合もあるそうです。
ドイツ語 Prachtschmerle(プラハトシュマーレ)
Clown-Prachtschmerle
Prachtは、華美な、Schmerleがドジョウという意味です。Clown-Prachtschmerleと呼ぶのが正式なようですが、Prachtschmerleだけでも一般的にはクラウンローチを指すそうです。
中国語 三間鼠(実際は簡体字)
ちなみに「鼠魚」がコリドラスとなりますので、風貌の近似性がネーミングの根拠の模様です
スペイン語 Botia Payaso
Locha Payaso
イタリア語 Botia Pagliaccio
ポルトガル語 Botia Palhaco これはフォントがないので出ませんでした。前の”o”の上に”’”がつきます。”c”の下に”,”がつきます。
ロシア語 Боция клоун
オランダ語 Botia macracanthus
Clown modderkruiper
Clown botia
Clown doornoog
modderkruiperは泥を這うもの、といった意味ですが、Cobitidaeのこととあります。Cobitidaeはどじょうの事のようです。
フランス語 Botia macracanthus
Loche-clown(ロシェクロゥン)
Botia-clown




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