体型を測ろう!

■はじめに

 魚の体型って、どうも見た目の雰囲気で決まることが多いような気がします。特に掲示板でお話していると、例えば、”太っている”と言ったところで、それがどの程度のものなのか?というのは、判断するのが難しいところです。
 もしも、人間なら、身長、体重を基本に、座高だとか、スリーサイズだとか、他にもいろいろな指標で体型を表すことができます。そして、それらを伝えれば、大抵の人は、その人を見なくても大体の体型を予測することができると思います。ペットでも、犬猫なんかは、体重とか、体長なんかを基準にして、太っている、痩せている、ということは、ある程度わかるのだと思います。
 飼育している魚が、太っているか?痩せているか?というのは、とても大切な健康情報になりますので、自分のお腹のお肉よりも気になるところです(笑)。でも、魚の体型って、どんな風になれば痩せているのか?太っているのか?実際に比べるのって、難しいですよね。
 何故難しいのか?というのが問題なのですが、それは魚は体重を測るのが難しいからです。魚含め、生き物は普通、身体の長さが長くなれば、なるほど、重さが増えますので、身長と体重がわかれば、大まかに太っているのか、痩せているのかは割り出せるはずです。なのですが、その体重が測りずらいのが、魚なんですね。水中にいるということもありますが、私たちが飼育している魚って、軽すぎるので、家にある体重計で量ることはまず無理です。その上、体重を正確に測る飼い主が極端に少ないので、統計データも無く…。測ったところで、それが痩せているのか太っているのか、判断する材料にもならないというのが、かなり痛いところです。
 こんな事情なので、魚の体型というのは、具体的に議論されずにきておりまして、掲示板などでのご質問で、「魚がやせているのですが…」なんてことを尋ねられましても、それが本当に問題のある痩せ方なのか?ただ単に痩せているように見えるだけなのか?ということを判断するのは、なかなか難しいところだったりします。また、写真を見せていただいても、見ているほうもそこから受けるイメージという範囲でしか、お話ができないですので、やっぱりもう少し情報が欲しいものだなと思います。
 ということで、そういう問題を少し緩和できればなぁということと、もう一つは、体型を調べたりすることで、飼い主同士の楽しい会話の糸口にでもなってくれればという意味もこめまして(こちらがメインではありますが(^^;)、クラウンローチの体型の基準を私なりに考えてみました。

 なんて、いつもながらの長い前振りにお付き合いくださってありがとうございます。ということで、以下がその方法です。ちなみに、水槽を撮影できるカメラと、写真に線を書き込むことのできるパソコンのソフト、もしくは写真を現像して直描きでもいいですが、写真に線を書けるようにしてくださいね。
 ちなみに、この記事は、ブログで少し前に書きましたが、それをちょっと修正しつつ、データを加えつつ、まとめたものです。

■まずは、写真撮影
 ローチの真横から写真を撮ります。真横じゃなく、少し傾いている場合、”太っている”という判定が出やすくなりますので、とにかく水槽の前で粘りまして、頑張って、なるべく真横に近い写真を用意してくださいね。とはいえ、これが一番難しい気がするのですが(^^; とにかく頑張ってみてください。
 今回は、よんべぇにモデルになっていただきました。真横から撮った写真は、こんな感じになります。

■次に、線を書き込みます
 線は6本で、3本ずつを使って二つの三角形を作るように描きます。一つは頭の形を調べるための三角形です。もう一つは、身体の形を調べるための三角形です。順番は以下の通りでなくても良いですが、線の始点と終点は間違えないでくださいね。

●顔の形を調べる三角形の描き方
 (1)目の中心→鼻先
 (2)鼻先→胸ビレの付け根
 (3)胸ビレの付け根→目の中心

●体の形を調べる三角形の描き方
 (4)胸ビレの付け根→背ビレの付け根の一番前
 (5)背ビレの付け根の一番前→尻ビレの付け根の一番後ろ
 (6)尻ビレの付け根の一番後ろ→胸ビレの付け根

この6本の線を入れたのが、こちらの写真です。水色で、線を引いてみました。黄色で書いた数字は、(1)〜(6)のそれぞれの線に対応しています。


■もうちょっと、線を書き込みます(体型を大体知りたいだけの場合には省略していいです)
 あと2本、線を描き足します。
 (7)上で描いた顔の形を調べる三角形の一番上の頂点から、(2)の線に垂直な線
 (8)上で描いた体の形を調べる三角形の一番上の頂点から、(6)の線に垂直な線

この2本の線を入れたのが、こちらの写真です。赤線が、新しく書いた線で、黄色で書いた数字は、(7)、(8)のそれぞれに対応しています。

■これで何がわかるのか?といいますと…
 まずは、ボーっと水色の三角形の形を眺めてみましょう。普通にわかることだと思いますが、三角形が潰れているほど、ひょろっとしている、三角形が立っているほど、がっしりしているということになりますね。顔の形を調べる三角形なら、潰れていれば鼻先が長く、スッとした顔立ち(馬面?(^^;)、その逆なら、鼻ぺちゃということになります。身体の形を調べる三角形なら、三角形が立っているほど、体格がよいということになると思います。
 
 「話の種に、うちのローチの体型でも調べてみるか」という方はここまで良いですので、これ以上突っ込んだお話はしないほうが潔いのかなと思うのですが、私はあまり潔くないので、続けます(笑)
 もうちょっと具体的に考えてみることにしまして、赤の線を考えに入れて、次へいきます。

■ちょっと測ってみましょう
 (2)と(7)、(6)と(8)の線の長さをそれぞれ測ってみることにしましょう。そして、長さの比率を出してみます。
 (2)÷(7)で、顔の長さと高さの比率が出ます。(6)÷(8)で身体の長さと高さの比率が出ます。
具体的にやってみます。この写真を私のパソコンの画面上で測ってみますと、(2)は2.3センチ、(7)は0.6センチで、顔の比率は約3.8になります。また、(6)は3.9センチ、(8)は1.8センチなので、身体の比率は約2.1になりました。
 この比率の値が、大きいほど、三角形は潰れている、つまり、スマートな顔つきや、体つきになるということになります。

■それでどうしましょう?
 比率が出たところで、なんとなく嬉しくなったわけですが、これだけですと、実はあまり大きな意味はありません。というのも、写真のローチの体型を数値にしてみただけですので、この数値に意味を持たせないと、せっかくやってもあまり楽しくないんですよね。
 つまり、どういうことかと言いますと、人間でも、身長に対しての標準体重とかってありますよね? 学生のころ、学期ごとの成績表と一緒に、身体測定の結果を書いた紙をもらってきませんでしたか?そこに、「もうちょっと運動しましょう(太りすぎ)」とか、「もっといっぱいご飯を食べましょう(痩せすぎ)」とか、書いてあったと思います。つまり、あれは、人間のその年齢での標準の体型と比較して、太っているのか、痩せているのかを出しているわけですね。ですので、ローチの場合も、比べるための標準データが必要ということになります。
 ということで、ちょっと頑張ってみました(^^;
 実は、私の持っているローチの写真と、今までに投稿していただいたローチの写真で、横方向からの画像を全部出してきましてね。真横じゃないのは、多少補正しまして、データを取ったわけです。のべ126匹もいたので、さすがに疲れましたが…(^^; しばらく、ローチの真横写真は見たくないです(笑)
 それで、その結果が下の表です。
ローチの大きさ 3〜5センチくらい
幼魚サイズ
6〜9センチくらい
安定サイズ
10〜15センチくらい
大きめサイズ
 
比率 4.5〜3.0 2.5〜2.2 3.0〜2.5 2.3〜2.0 2.9〜2.4 2.2〜1.9
 たまに、ちょっと体型がすごいのがいましたが、そういう例外的なのは除いて、多かった範囲をのせてみました。成長してくると、体長よりも、体高が出て、体格が良くなっていることがわかります。体のほうはそれほどでもないのですが、頭はかなり変化していることがわかりますね。ということで、クラウンローチの場合、頭の形は、あまりあてにならないというか、かなり変わってしまうので、気にすると大変ですので、それよりも、体の形で比較するのが良いと思われること。そして、体の形を調べる三角形の比率が、2.5〜1.9くらいでしたら、まあ、標準的な体つきだと言えると思います。
 身体の形の比率が、2.5を超えますと、だんだんとニョロニョロ体型に見えてくると思いますし、1.9を下回りますと、ショートボティに近くなってくると思います。
 ちなみに、同じボティアで、うちのパキスタンローチの場合には2.5を軽く超えまして、3.5でした。やっぱり種が違うと、体型も違います。さらに、クーリーローチの場合は、7でしたが、こうなってくると、この比較方法だとあまり意味がないような気がします(^^;

■太っているかどうかは、どうすればわかる?
 この三角形、体長と体高は測っているんですが、太っているのかどうか?というのは、実はあまりよくわからないんですよね。ブログの時には、(6)の線よりも下にお腹が出っ張っていれば、太っていると書きました。確かにその通りではあるのです。また、体高とローチの太り具合はある程度の関係がありまして、体長に対して体高がある(つまり、上で計算した比率の値が小さい)と、太っているというか、少なくとも痩せ過ぎではない場合が多いので、上で描いた三角は、ある程度の指標にはなると思います。
 でも、この二つ、やっぱりなんだか、少し曖昧で、しっくりこないんですよね。太っているのか、痩せているのか、もっと直感的にわかりやすい方法は無いかなぁと思いまして、また別のことを考えてみました。今度も写真を撮ります。でも、簡単なので、写真が撮れなくてもローチを見てみるだけでも良いと思います。こんな感じで、ローチを上から見てみましょう。
 
 なかなか良い写真が無かったので、これになってしまいましたが、趣旨としては、ローチを真上から見てみるということです。そして、両方のエラブタの幅で、後ろに向かって平行な2本の線を引いてみてください。その線よりも、お腹の部分が横に出っ張っていたら、太っています。逆に引っ込んでいたら、痩せています。わかりやすいようにイラストにしてみましたが、緑の線が、エラブタの幅です。それに対して、ローチの身体の輪郭が、赤い線のような感じでしたら、太っていると言って良いと思います。黄色い線で大体標準くらい、青い線だと、かなり痩せています。簡単に言えば、ローチの身体から外向きにカーブを描いていれば、そのカーブがきついほど”太っている”といえると思いますし、逆に直線とか、内向きにカーブを描いていたら、そのカーブがきついほど”痩せている”と言えそうです。
 特に、入荷直後で売られているローチは青い線のような状態の子が結構います。この場合には、少し太らせてあげた方が、安定してくるような気がします。
 ローチを上から撮影した写真というのが、あまり見当たらないので、きちんとした数値としての計測や基準を決めることはできませんでしたが、今までローチを見てきて、私はこんな感じで太り具合を判断しているのかなと思いました。

■最後に
 ローチの体型測定、いかがでしたか?この方法は、他のボティアとか、胸ビレが身体の下のほうについている魚(底物が多いと思います)には、ある程度使えるんじゃないかなと思います。上で示しました比率の平均的な数値はクラウンローチのものですので他の魚には使えませんが、三角形の形を比べることはできると思います。写真に三角形を描いて、楽しんでみてはいかがでしょうか(^^)
 ただ、今回紹介したクラウンローチの平均的な数値ですが、これが絶対の値ではないですので、それだけは間違わないでくださいね。この数値とかなり違うので、びっくりして、いきなりエサを増やすとか、減らすとか、そういうことはしないでください。これはあくまでも、ローチを表す指標の一つに過ぎませんので、「まあ、そういうものもあるんだなぁ」という程度でお願いします。私としては、「うちのローチ、最近肥えてきちゃったんですよね」とか、「うちのは、馬面なんですよ(笑)」なんて、気軽な会話に使っていただけたら、とても嬉しく思います。


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